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ゴキブリ勇者・結婚編

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アイツと話せなくなってから、二週間が過ぎた。
アイツの職場に行くことも考えたが、俺が突然顔を出したら、アイツの立場が悪くなるかもしれない。
そう思うと、なにも出来なかった。

たまにアイツのウチの前に立っては、呼びかけることしか出来なかった。


「なぁ、聞いてくれ。俺はお前のことを負担に思ったりはしないよ」


やはり今日も返事がない。
仕方がないので帰ろうと思ったが、ドアが少し開いていることに気がついてしまった。

中に入ってもいいのだろうか。
しばらく迷って、俺はドアノブに手をかけた。


「おい、入るぞ……」


奥にそろそろと進んでいく。
もしこのタイミングで外からアイツが帰ってきたら最悪だな、とかちょっとした修羅場を想像した。

しかし、事態はもっと深刻だった。


「おい……!おい!」


部屋の床に空き瓶が転がっている。
金属の丸いフタも散らばって、その先に白い指がのびていた。
床に転がったその体はピクリともしない。


「嘘だろ……!おい!死ぬなよ!病院に連れてってやるから!」


返事はなく、体は力なく横たわったままだった。
俺は無我夢中で背中に背負って、病院へ走った。
なんでこんなことになっているのか、少しも分からなかった。
作品名:ゴキブリ勇者・結婚編 作家名:オータ