ゴキブリ勇者・結婚編
外は雨のままだ。灰色で重く苦しい。
だけど、俺は鞄から小さな箱を取り出した。
「左手を出してくれ」
アイツはそっと左手を出した。
俺はその薬指に指輪をはめた。
「お前のこと、愛してる。
俺と結婚してくれ」
すると、アイツは小さく笑った。
「君はこんなに優しい言葉をかけてくれるのに、私はなにをしていたんだろうな。
私がバカだったよ」
「ホントだな。なにがあったって、俺はお前のこと嫌いになったりしないのに」
「ふふ、バカだなぁ君は。私なんか好きになっても、いいこと無いぞ」
「そんなことねぇよ。お前といると毎日幸せすぎて、日常がキラキラするんだ。
今までこんな気持ちになったことねーもん」
「そうか……ありがとな」
「俺も、ありがとな」
「ははっ……君は優しすぎるんだよ……」
アイツはまた泣き出してしまった。
そんなアイツの肩をつかむ。
「なぁ……もう一回、キスさせてくれ。このまま終わるのはイヤだ」
「ふふ……好きにしろ」
俺たちはそっと唇を重ねた。
お互いの涙で濡れていたが、少しも気にならなかった。
作品名:ゴキブリ勇者・結婚編 作家名:オータ