はじまりの旅
ニタが言うと、ティアは嬉しそうにはにかみ、「うん」と頷いた。
クグレックは姉の様な存在のティアと離れるのは寂しいと思っていたが、このティアの表情を見たら、彼女の夢を邪魔することは出来ないなと思った。今生の別れではないのだ。アルトフールに辿り着いた後にでもまた、ティアに会いに行こう。きっとそれでも遅くないはずだ。
「ティア、またね。」
と、クグレックが言うと、ティアは一瞬意外そうな表情を見せたが、すぐに明るく微笑んで
「えぇ、クク、また会いましょう。」
と言って、クグレックの頭を撫で、そっと頭にキスをした。
そして、一行は静かに御山の集落を離れた。
ティアは大きな声を出せない分、朝靄でクグレックたちの姿が見えなくなるまで、力強く大きく手を振り続けた。――彼女たちが無事目的を果たせるように、と。