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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   章末話   『サクラ咲く キミの待つ場所』

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「なりませんッ!!断じて、このじいや。姫様がそのような姿を国民の前に見せることなど許すわけにはいきませんッ!!」


「何故ですかっ!!」


「姫様がそのような姿を見せてしまったら、余計に民の不安を煽るだけです」


「ですがっ!!それは……でも……!!」


言い返そうとしたセシルは、ふいに言葉をとぎらせた。


「確かに姫様のご心中は察しております。だからこそ、敢えて言わせていただく」


「しかしっ!!」


それに抗おうと、懸命に首を振り、じいやを睨みつけた。
だが、じいやの表情に言葉を呑む。


「民は恐れておる。いつまた起こるかわからぬ戦争、見えない存在による我が国を凌ぐ圧倒的に勝るであろう武力紛争。緊張は高まる一方じゃ。わしらがうろたえていては何にもならない。民の不安と安全、いや、平和を守るために最善の事を尽くさねばならぬのじゃ。今はまだ、姫様がお出になられる時じゃない。わしらは強く在らねばならぬ。そう、強く在らねばッ!!!お解りかッ!!!姫様ッ!!!」


その言葉に、セシルの心臓が大きくドキりと跳ね上がった。


「わかっていますっ!!しかし、この事態を収められなかったのは私……!!」


その時、じいやは私を一喝した。


「そんなモノ正義でも誠意でも何でもないッ!!!姫様の自己満足が民は望むとお思いかッ!!!!」


セシルはハッとじいやの言葉に息を呑んだ。
そんな、私はただ…ちゃんと謝りたくて。誠意を見せたくて…。

いや、これが自己満足なのか。
謝ることで私は満たされる。私が求めているのは、そういうことなのか?

何ていうことかしら。
解かっていると言って、私が一番解っていなかたっただなんて。
じいやはそんな私の肩に両手を置いて言った。


「姫様はこのフォーリア王国の姫君なのです。今は行方知れぬフィーア様が守ろうと平和を築き上げてきたお国なのです。あなたはそのフィーア様の後継者なのです。だからとは言わぬが、少なくともわしは信じておる。姫様…いや、セシル様が強い方だと、フィーア様と同じくこの国を心から愛してるとこのじいや幼き頃からずっとセシル様と共におって知っておる」


じいやは、私に柔らかく微笑む。


「じいや……」


「だからこそ、セシル様、今は堪えてくだされ。その時まで。今は民のためにも
お国のためにも毅然とした態度で、強く在らねばならないのですッ!!」


じいやの言葉が、まっすぐ胸に入ってくる。


「戦うばかりが戦いではない」


セシルはじいやの顔を見上げる。
じいやは、どこか深い瞳で私を見返す。


「どちらも睨み合って、ぶつかり合っていては何も終わらぬ」


そう言って、じいやはそのまま身を返して行こうとした。
セシルはそれに倣い、じいやの後に続いたのだった。




(………)




――フン、どいつもこいつも馬鹿みたいに騒ぎやがって。

ざわめく周囲の人波を影から見ながら、ティエル・ゲインはうざったそうにイライラしながらそう思っていた。


ピピピピ――


ティエルの持つ携帯型の通信機の機械音が鳴り、面倒くさそうにそれに応答する。


<――こちらJ本部。ミッションまであと10分だが…>


「あぁ??わーってるよ、暇だったから軽く暴れてやったよ、ククク」


<――あまりやりすぎるなよ。このミッションが失敗に終われば…>


「へいへーい。言われなくてもわかってるつーの」


<――それならよいのだが。それでは、準備にとりかかれ…>


ブツっと交信が途絶え、再び静寂が流れる。
ちょこっと暴れてやりゃコレだ。いい加減うざいっての。
どいつもこいつも姫様、姫様。うっとおしいくれぇの善意、善意。

姫の心情を案じる心配のオンパレード。
まるで、そうすることで己の役目を果たしているかのように、己の不安と恐怖を他人に押し付けるかのようにも見えないか?

彼はそう考えていたが、途端にどうでもよくなってきた。


「おい、そこの馬鹿、何ボソっとしてやがるんだ??」


背後から忌々しい声が聞こえ、振り向くとロメル・エスティールの姿が映る。


「…右に同じ。…あなたが何かに耽る姿は珍しい」


さらに、その隣にオッドアイで無機質かつ無表情で立つラディ・ノワールの姿があった。こいつらの俺を見る目はまるで、ガキが動物園で珍しい動物を見るかのような、いい見世物だった。


「煩ぇんだよッ!!テメェらもくだらねぇ事する暇があったら任務につけよ。そろそろ時間だ。時間は待ってくれねぇ、遅れましたじゃ済まねぇからな??」


「言われなくたって、わかってるよ。ムカつくな」


「…右に同じ。…コレ、今のうちに渡しておく」


そう言ってラディはカードのようなモノを2人に渡す。
どうやらこれから忍び込む場所のIDカードのようだった。

勿論、正規のモノではなく偽造。
ラディがあらかじめ用意したものだ。

ヤツはこういうのが得意で、データをハッキングしたり、入手した情報からこんなものまで作ることができる。ほんの少しのデータがあればヤツは不可能を可能にしてしまう。

まぁ、簡単に言うと変態だ。


「…今、失礼なこと考えなかった??」


鋭い。まさにその通りだ。


「さぁな??気のせいじゃないか??」


メンドウなのでそう答えておく。


「…そう」


短くそう答えるラディ。
感情が変化しないのでよくわからない。

「まぁ、そんなことはどうだっていい。そろそろ、行くぞ」


コレを持って、指定された場所に向かわなければならないのだ。


「へへ、精々迷子にならないようにな??」


ニヤニヤしながら挑発的にからかうかのようにそう言うロメル。


「あぁ??迷子になるのはテメェじゃねぇのか??いや、迷犬か??捜してくれとか貼紙されても知らねぇからな??ククク」


「何だとっ!!やるのか、貴様ぁっ!!!」


ぴょこんと頭についた大きな犬のような耳を立て、激昂する。
やれやれ、本当こいつはいつまで経ってもガキだな。

一々相手にしてたらそれこそ任務に支障が出ちまう。
ここは相手にするだけ無駄だな。


「いい加減、黙らねぇとテメェから先にやるぞ??」

「ハッ、上等だ!!やれるもんならやってみろってんだよっ!!貴様に俺をやれるだけの力があればなっ!!」


頭に血が昇ったロメルは禍々しい殺意のこもった魔力を解放する。
瞳が紅く変化し、獣のように鋭く冷たく研ぎ澄まされていた。


-ブチッ!!


効果音と言わんばかりに、リアルにその音が鳴った。
見ると、ティエルの血走った目に、額に浮き出た血管から血が吹き出ていた。


「…んっだとおらぁああああッ!!!」


次の瞬間、ティエルの立っている地面のコンクリートがひび割れ、砕け散った。
瞳が紫に、髪が逆立ち白銀に変化していく。

ティエルが放つ魔力はこの空間にいるだけで死の恐怖を感じ、とてもじゃないが常人がこんな空間に迷い込んでしまったら、躊躇なく死を選びたくなるであろう。


「フハハハハハハハッ!!!さぁ、殺してやろうッ!!!!血肉をぶちまけ綺麗な花火を見せろやぁああああああッ!!!」