小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

第1章   章末話   『サクラ咲く キミの待つ場所』

INDEX|5ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 



「ははは~。アリに決まってるさ。俺たち生徒会に『ない』という文字は存在しないのさ」


「ってお前また人の心読みやがってッ!!」


「それじゃ、ハルくん行くよ」


「え?あ、どこにですか?!」


なんていう連携プレイなんだ、この二人。
でも、何だかいやな予感が凄くしてきた。こう背筋からぞぞっとな。


「決まってるじゃない♪♪例の企画の準備に…だよ♪♪ハルくんも生徒会の正式役員だからね~断るわけはないよね~??」


じっと俺の顔ににじり寄ってくる姉さん。…怖い、怖いです、姉さん。
って待てよ。正式役員はミナの他にももう一人新しく入ったはずだよな。

俺はそのことを思い出し、そのもう一人の役員ことヒカリを引き込むべくヒカリに目をやろうと辺りを見渡す。

…が、あれ??いない。まさか、逃げやがったな、ヒカリのヤツ。
この俺を置いて。


「ほら~何やってるの~ハルくん。行くよ~♪♪それに、今日は記念すべきハルくんの生徒会活動への第一歩なんだよ♪♪みんな、祝新しい部員の初活動のために大いにはりきっていっちゃおう~!!」


「おう~!!」


姉さんと凍弥は高々と握りこぶしを上げていた。
…マテマテ。


「ってまだ俺は何も…ってうわぁッ!!」


「~♪♪♪」


姉さん自作の歌を口ずさみながら凄い力でずるずると引っ張られる俺。
…もう、無理だ。こうなった姉さんは俺にもどうしようもない。それにこんな状態じゃ逃げることも出来ない。諦めるしかない…。でも。


「理不尽だぁぁぁあああッ!!」


俺の断末魔が空しくこの公園全体に響き渡るのだった。
この後、行われた謎の企画とやらで俺を初め、(ミナとミミル以外)みんながそれにより多大な疲労が溜まり、姉さんを初めとする生徒会連中が大いに盛り上がっていたことは言うまでもないだろう。

ここ数週間の中で幼いときに離れ離れになったミナとの再会を果たした俺。
そして、そのミナがフォーリアという国の魔法使いであることを知らされ、そのミナと敵対するシェルリアからやってきたヒカリという魔法使いとの出会い。

その出会いによって、俺の運命が大きく日常生活をもがらりと変えてしまうことになってしまったのだ。『鍵』…。フォーリアとシェルリアの二つの力を持ち、今敵対関係にある両国の争いを唯一止めることの出来る存在。それが俺。何の突拍子もなくそう告げられるのだった。

ミナはフォーリア、争いを止めたいと願う優しい少女。反対に、ヒカリはシェルリア、力を思い知らせてやると息巻く自称悪の魔法使いの少女。このすれ違う思いが錯綜する二人。まだ、どうすることもできない俺。これからもきっとまたいろいろと厄介かつ危険な事態がやってくるだろう。もしかするとこの二人が衝突するかもしれない。でも、これだけは何としてでも避けたいと俺は思う。

だって敵対してるっていったって本当は仲のいい二人だから。二人のこと知るにはまだまだ浅いがこれだけは自信を持って言える。ミナもヒカリも二人で会話するときは自分を隠さないで本心でいつもぶつかっているのだから。

だから俺は、守りたい。
まだまだ力はなく何もできない俺。

でも、守りたいモノが目の前にありそれを壊そうとするヤツがいるのならどんな代償を伴ってもかまわん。俺は迷わずそれに身を投じるだろう。だって、それが『守る』ってことだとこの時の俺はそう思っていたのだから…。

来週からは、ミナ先生による魔法の特訓が始まる。きっと最初は全然上手くいかず落ち込むだろう。でも、ヒカリが言うように自分から動かなくては何も出来るはずはない。動かなければ出来るものも出来なくなってしまうのだから。

そう。だから俺は何が何でも動く。動いてみせるさ。どんなに大きな重い壁がのしかかってきても諦めず動いてやるさ。

だって、それが今出来る俺のやるべきことの全てなのだから…。


(………)


(???)


『まず初めに、昨日行われた我国フェリオス代表とシェルリア国ヴェルフェ代表
との会談ですが……』


ここはフォーリア王国のフェリオス城下町だ。
フォーリアという国の中心で、大きな街であるため城下町は多くの人でにぎわっていた。『フェリオス』というのはこの国を統括する王女の名前からきている。

そして、街の中心にある大型のスクリーンでは、アナウンサーが深刻そうな顔で
しゃべっていた。行き交う人々は足を止め、その様子を固唾を呑んで見守る。


『新たにこちらに情報によりますと、ヴェルフェ代表はフェリオス代表の要求に対し、これを拒否、再三、停戦要請をしているが難航してるようであり……』


それを聞き、人々はざわつき始めた。


「まぁ、なんてこと…。姫様の心中お察ししますわ」


身を案じ、表情を曇らせる者もいれば、


「ヤツらはまた繰り返すのか、あの悲劇を」


「また戦争になるのかしら……あんな……いやよ、そんなのっ!!」


まるで今、まさに目の前で悲劇が起こったかのように取り乱す者もいた。
人々は動揺を隠せなかった。
いつまたあんな悲劇が起ころうとしている中、どうにもできないのだから。

さらに、スクリーンでは、ニュースの続きが映し出されていた。
先日起きたシェルリアとの激戦。
といっても、シェルリア国の総意ではなく一部の過激派による武力介入もので、ヴェルフェ代表もこれらの一件にシェルリアは無関係であると断言した。だが、フォーリアの国民は当然、これを許す事などできなかった。

そこに映りだされるのは、その戦闘被害にあった街の様子だった。

立ち昇る黒煙に破壊された街々。
時に爆音をあげ、被害にあった人々や現地へ赴いたフォーリア、アセリアの魔術機動部隊の兵が映し出された。これというのも今年の初めに、突如現れた謎の敵勢力によるフォーリアへの襲撃が始まりだった。

謎というのは実際、その敵勢力と相対した部隊の兵からの証言で、闇のように黒い装束に身を包み、その圧倒的な魔力であったそうだ。そこから、まぁ推測の域でしかないがシェルリアの力以外考えられるものではないと誰もが疑わなかったのだ。

『大魔法戦争』終結からそれ以来、『戦争』なんて自分たちには実感が湧かなかった。

そう、ずっと続いていた平和に彼らは疑わなかったのだ。

これからもずっと続くであろう平和。
戦争終結後から友好条約を結んだあの時から。

スクリーンの画面に注目する人々から離れた場所で、それをじっと見つめる視線があった。お忍びで城から城下町へとやってきたセシル・F・フェリオスであった。

何を隠そう彼女がこのフォーリア王国の王女だ。

その喧騒の中、彼女はずっと険しい表情で、内情国民を不安を与えてしまったことに深く心を痛めており、申し訳ない気持ちでいっぱいであった。


「私が不甲斐ないばかりにこのような事態を招いてしまいましたのね」


今まさに国民の前に出ようとしたとき、セシルの背後から落ち着いた声がかかった。


「いけませんぞ、姫様」


眼鏡をかけた壮年の男はそう言って、セシルを止めようと目の前に立ち、これを制した。


「お願いです、じいや。そこを退いてください。私は…」