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D.o.A. ep.58~

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Ep.60 酒盛りの夜




「ボウズ、昼間あたりから調子悪そうじゃねえの」
「…そんなことない」
「意地張んなって。もう仲間だべー?体調に申し分ありゃちゃんと知らせてくんねーと」

グラーティスは双槍の溝につまった砂粒を丁寧にほじくり出している。
結局、金銭問題から彼は旅の道連れとなった。
こうして今、野宿せずにすんでいるのも、彼の財布のおかげだった。
かなり余裕があるらしく、当座の二人分の面倒も見てやると請け負われては、観念するしかなかった。
「いつか必ず使わせた分に利子つけて返す」と返済を約束しようとすると「ナニいっちゃってんの、ナマイキだぞ」と返された。

「カーッ、これだからこの国はいけねえな。食い物も酒も旨いしネエちゃんも可愛いのに、これだけはいただけねえ」
槍の手入れに苦戦しているのか、愚痴を叫んで彼は作業を投げ出した。
窓際で月を眺めるライルのもとまで近寄ってきた。振り返ると下卑た笑みで覗きこんできている。
「ときに…おめぇさん、いくつだっけ」
「年齢? …17だけど」
なんだか嫌な予感がして、少々身構える。
「ふーん。ほーう。若いねー。 ――――で、アッチのほうはどうなの?」
「あっちってどっちだ」
「はは、そんな気はしてたが」
意味がわからないけれど、馬鹿にされた気がしなくもない。
不機嫌に眉を寄せるとよし、と肩を叩かれた。
「宵の口だな。ボウズ、夜の街へくり出すぜ。旨い酒の味教えてやんよ」
「だめ、俺まだ未成年だし」
「だーいじょぶだって。この国じゃ、酒はガキでも飲んでいいことになってるから」
「ティルは」
心配げに背後の寝台を見やる。
彼は決して虚弱ではないが、船酔いの船旅は相当堪えたらしく、宿に着くや寝込んでいた。
放って外出するのは、気が咎めた。
「酒場って、情報収集の基本よ?探し人がいんだろ。なにかわかるかもしんねえぜ」
「そ、そうなの?酒場が?」
「うん。そうそう。全然変なところじゃないデスヨ。こういう場もね、経験しないと。それにアルルーナの酒は旨いぞお。
おススメは”砂漠の泪”かな。まあボウズにはちっとキツいだろうが」
「ハイズさん、アルルーナに来たことあったんだ」

旅の傭兵というだけあって他にも多くの国を訪れた経験を持つのだろう。
そんな彼が自信満々に言うのだから、酒場で有益な情報を得ることができるような気がしてきた。
ティルには書き置きでもしていけばいいだろう。
リノンの髪は珍しい色をしているし、うまくすれば覚えている人がいるかもしれない。

――――などと、淡い期待を懐いていた。







作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har