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D.o.A. ep.58~

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馬車がゆっくりと停止する。
先に降りた男に鎖を引かれ、さっさと降りろ、とせっつかれた。
道は辛うじて舗装されているが街灯はなく、ひと気もまばらだった。
外から見ても古くガタがきていそうな家々の窓からは所々に仄暗い灯りが漏れていて、それ以外は廃屋だろう。
裏通りでも、一際寂れた通りに連れて来られたらしい。
ナファディは幌から巨体を屈めるようにして出し、通りをしばし眺め回している。
やがて目印でも見つけたのか、地に足をつけて緩慢な動作で馬車から降りると、男からリノンの鎖を奪う。
「ついてこい」
まだだ。チャンスを待つのだ。リノンは頭で唱えて、ナファディの後に続く。
扉にいくつもの深い傷がある廃屋の前に立ち、彼は3回の不規則なノックをする。
返事はなかったが、中で仄かな明かりがポッと灯り、それが合図であったのかノブに手をかけた。

「やあ。来たね。こんな遅くに御苦労様」

傷だらけの台に一つだけ置かれたランプに照らされた相手は、場違いなほど涼やかな声色で、こちらを迎え入れる。
―――リノンはその男を、知っていた。



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作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har