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D.o.A. ep.58~

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Ep.63 酒盛りの夜、再び




目覚めたとき、ティルバルトはすでに、どこにもいなかった。
カーテンの裏にも、寝床の下にも、ベランダにもいない。
一通り探し終え、ライルは途方に暮れる。

「……なんで」
「弓兵くんなら手紙と宿代置いて出てったぜ」

優雅に朝風呂など終えて湯上りの体で、グラーティスが姿を現す。
「ど、どういうことだよ」
「こういうコト」
スラックスのポケットから、無造作に取り出され皺のついたそれ。
普段のティルバルトそのものの、味気ない別れの言葉と、宿泊代を置いていく旨が記されている。
ライルは愕然とする。
こんな紙切れ一枚で、縁が切れてしまうのかと。
その紙切れとて、部屋に備え付けられていたものだ。
彼の横たわっていた寝床に、無論忘れ物などない。
まるではじめから誰もいなかったかのように、ベッドは整えられている。
紙を手の中で握りつぶし、ライルは奥歯を噛みしめる。

「でもよぅ、おめぇさんがた、別に仲良しこよしってワケでもなかったんでね?ぜんぜん喋ったりしねえしよ。
出会ってから数えるなら、オレの方が弓兵くんと喋った回数多い気がするぜ」
「それは……」

戦場から逃げて、エメラルダのもとへたどり着き、無人島に飛ばされて。
よくよく考えれば、行動を共にせざるを得ない状況だった。
自由な選択ができるなら、一緒にいなくてはならない理由などないのである。
これからどこへ行ってなにをしようと、彼の勝手で、それを咎めることは誰にもできないのだ。
そんなこと、もっと早くに気付いてもよかったのに。
しかし、だからって、着いたその翌日早々に消えなくてもいいじゃないか。
ただでさえ、リノンがいなくなっているのに、さらに喪失感を与えるような真似をしなくても。
心が散り散りに乱れて、なにも考えられず、頭の中がまとまらない。
やつ当たりのように、ティルバルトの残した紙片のかたまりを床に投げ打って、グラーティスの横を足音荒くすり抜ける。
浴室に踏み入るや、頭から水をかぶった。

(…あいつ、俺と同じじゃなかったのかよ)
すなわち文無し組。
ひいてはそれが、彼がどこかへ行ってしまうとは夢にも思わなかった、大きな要因かもしれない。
「せめてちゃんと口で言ってけよ…ばか」
なにを隠そう、それが一番のショックだった。
確かに、関係は不仲とまではいかずとも、ぎこちなかった。
それでも、ティルバルトにとって自分は、面と向かって別れを告げる価値もなかったのかと―――

(…いいよ。もう知るか。知るもんか。あの薄情者め)
思いつく限りの悪態をついて、それも尽きる頃には、気持ちの整理はともかくやるべきことへ心が定まった。
顔面に水をぶつけるようにして洗い、気合を入れるように両頬を数度はたく。
タオルで頭をかき回して、勢いよく浴室の扉を開け放った。







作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har