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D.o.A. ep.58~

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夜明け前の町並みを、ティルバルトはひとり歩く。
スタインは眠ることを知らず、多くの人々とすれ違い、そしてそのどれもが求める人ではない。
けれど感じるのだ。確かに、ずっと捜し続けた人が、近くにいるのだと。
それは共鳴なのか、血の繋がりの深さからくる勘なのか定かでないが、確かなものだ。

「…すまない、な」

一度だけ振り返って、つぶやいた。
別れは告げなかった。
二人が寝静まる頃、まるで逃げるように宿を出た。
告げられるものか、と思うと、逃げたという表現は遠からず当たっている。
もう会うことはないかもしれない。
どうせさほど信頼されていやしないだろうが、ティルバルトとてあの少年が嫌いなわけではなかったから、少なからず罪悪感があった。
この行為は彼から見れば、きっと裏切りにひとしい。
もとより、味方のような顔をしてその実、仇に尽くす男を、裏切り者と唾棄せぬ道理がどこにあろう。

生涯を捧げると誓った在りし日からずっと、覚悟を惜しめば、目の前に立つ資格すらないと胸に刻み続けてきた。
たとえ、レンネルバルトが、どこに身をおき、何者になっていようとも。
たとえ、レンネルバルトが、ティルバルトという男をこの上なく恨み、憎んでいるとしても。
その末路が、この身の破滅でも―――かまわない。

手が、無意識に肩口から二の腕に伸びる。
縋るように。
―――拠り所のように。


作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har