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D.o.A. ep.58~

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Ep.62 会いたい




また、夢を見た。

目が覚めて、それがまぼろしだったと認めると、安堵すると共にこちらも夢であればいいのに、という気分になる。
石壁で閉ざされ、鉄の網で蓋をされた、檻のような場所だった。
陰気で狭苦しくて、灯りは頼りないランプがみっつ、清潔とは程遠く、区別は男と女だけ。
そして、檻の内は常にうすい霧のようなもので満たされていた。
太陽の光も全く入ってこないから、今が夜か昼かさえわからない。
まわりにいるのはぐったりと草臥れた女たちで、一日二度の粗末な食事を待つためだけに生きているようだ。
彼女らはうつろな瞳で、ただもう悪い未来だけを思い描いて、けれど死にたくもないから生きているだけに見えた。
きっとそれは、男たちの檻の中も同じなのだろう。

「…今は止めているとはいえ、まだこちらは空気が悪うございますよ、わざわざお越し頂かずとも…」

この中に放りこまれてから、幾度か見た貧相な顔つきの男の声が、檻の外からする。
憶えている限りの態度とは全く異なり、やけに腰が低く、いっそ卑屈なまでに機嫌を窺うような。
なるほど、今日はもう一人、はじめて見る顔と一緒だ。身なりのごてごてしい大男だった。

「ふん、お前が下らぬ仏心など出して、私の命に背いておらんか気掛かりでな」
「ご、御多忙の中…大変申し訳ございません。し、しかし万事旦那様のおっしゃった通りにしてございますよ。もとより、薄汚い寄生虫どもにかける恩情など…」
「ふむ、まあ、そのようだな」

整えられた口髭をしきりにさわりながら、こちらを見下ろしている。
心底こちらを蔑み切った、無遠慮な視線。
この枷と隔てるものさえなければ、飛んでいって殴ってやるのに。
薄笑いを浮かべて檻の中身を舐めるように見る男に、この上なく鋭い目を向ける。
無論萎縮するどころか、それが愉快であるかのように大男は肩をゆすって、そのつど貴金属が音を立てた。

「んん?あの娘…アレを使っておるというのに、いやに活きがいいな。この私を気丈に威嚇している」
「ええ、ええ。それはもう。今は大人しくしておりますが、はじめは暴れるわうるさいわで…」
「……しかも、よく見れば緑髪だ」

緑髪だったらなんだというのか。
双眸が、らんとかがやく。まるで、ゴミの中から金貨でも見つけたように。
そのかがやきに、言い知れぬ恐ろしさを覚え、背筋が冷たさを帯びる。

「その娘は連れてこい」
「……? あの、どうなさるおつもりで?」
「知る必要はない。無駄口を叩くな、おまえはただ従えばよい……私はあまり気が長いほうではないぞ」
「は…、で、ではすぐに準備をしてまいります」

よほど仕打ちが恐ろしいのか、目に見えて色をなくし、男は早足で目の前から去っていった。
どうやら、自分だけはここから出してもらえるらしかった。
ただそれを事態の好転であるかと問われたら、否だ。
むしろ、もっと悪いほうに転がりつつある、そんな予感しかしない。

「…ライ」

ひとりごちたつぶやきが、思いの外弱々しかった。




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作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har