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D.o.A. ep.58~

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Ep.61 レリシャ




ライルを引きずるようにして酒場を脱し、グラーティスはため息をついた。
童顔には、ばつの悪げな色と、不機嫌そうな色とが混ざり合ってのっている。
グラーティスは彼をひとまず手頃に置かれたベンチに座らせると、自分もその隣にどっかりと腰をおろした。
アルルーナといえど、日が落ちてしまえば昼間よりはだいぶすごしやすい。
熱くなった頭も、これで少しは冷えるだろう。

「あーいう手合いがムカつく、って気持ちはわかんねえでもねえがな。
だからって突っかかれば面倒事しか起きないの。関わんないのが一番なんだよ。身を以って知ったと思うけどよ」
「……だって」
言い訳に口ごもる。彼の言うことはもっともで、ライルとて給仕が絡まれている段階では不快ではあれど、それだけだった。
けれど、あの女性に手を出すことだけは許しがたかったのだ。
お前のような奴が気安く触れるな、そう頭がカッとなって、気付けば止めに入っていた。―――しかも相当に喧嘩腰で。
その理由がうまく言葉にできず、踵で石畳を軽く蹴りつづけた。

「迷惑かけて悪かった。 …今日の酒代に、迷惑料加えてつけといて」
「だーからー、いらねっつってんじゃねーか。ガキがそんなこと気にすんなよ」
「借りたものはきちんと返せって、教わってる」
「へえ、立派な親御さんだ。じゃあここで、オレからもひとつ。”年長者の厚意には甘えるのが礼儀”、オーケイ?」

奢るのが目上のプライドを慰撫する、というあれか。
ライルはあまり納得できなかったが、今後金銭を得た時また反論しようと考え、わかった、と首肯しておく。
夜はまだまだ長く、人通りもそれなりだ。
行き交う人々の中に、つい緑色を探してしまう。

「あー。しかし、酔いが醒めちまったぜ。飲みなおすかァ」
「…俺、もう帰っていいかな」
さっきの騒ぎの後でまだ飲もうという気になるとは恐れ入る。
呆れたように目を瞠っていると、がっと肩を抱かれた。まさか巻き込む気か。

「なにいってんだよぉ。こっからが本番だろが!今夜はとことん付き合え!!」
「またあんなことになるのはイヤだ。酒場なんてもう当分行きたくないよ!」
「心配すんなって。これから行くのはさっきよりもーっと、イイ場所だから」

―――イイ場所。
そう口にした時の顔が、出かける前にワケのわからぬ質問をされた時と同じだと、気付けていたら。
後になってそう後悔することを、彼はまだ知らないのだった。







作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har