「夕美」 最終回
話し終えて、大森家に戻った夕美は隆一郎と由美子のいる前で、自分の思いを語った。それは、雅子に後押しをしてもらえたことで思い切れた決心でもあった。
「隆一郎さん、私はまだ高校生の身分ですから、今すぐに何ができるのか解りません。卒業して社会へ出ることが許されるのなら、社会勉強もしてみたいです。
大学を卒業されて、就職なされたら、その時にはどこへでもついてゆきます。それまでは兄弟たちのことも考えさせてほしいです」
「夕美、決めてくれたんだね。おれは許されるのならこの家で暮らしてゆきたい。母さんのこと一人には出来ないんだ。それだけのわがままを許してくれないか」
「はい、とても大切なお気持ちだと思います。私も母と思ってずっとこれからもいろいろと教えて頂きたいです」
「母さん、これで決まりだ。父さんのような一流銀行に勤めることは出来ないけど、大学を出たらそれなりの就職口を見つけて頑張るよ。
夕美も好きだったら仕事を辞めなくてもいいよ。母さんが家に居るから、子供が出来ても世話してくれるだろうし」
「子供ですか?まだ考えもつかないです。自分が子供ですから・・・」
「夕美が子供なわけないだろう。けど、おれの前では甘えてほしい。頼りないと思うだろうけど、そうしてくれよ」
「はい。隆一郎さん。よろしくお願いします」
「よろしくだなんて言うなよ。もうみんな家族なんだ。普通に話せばいいよ。それより、お義母さん、なんて言ってたんだ?賛成してくれたのか?」
「はい、義父も喜んでくれました。お義母さんには大森家の為に頑張るようにと励まされました。とてもうれしいことです」
「夕美はあんな目に遭わせられたのに、そのように思えるんだ。すごいよ。おれなんか父親を嫌ったりして、器が小さいよ」
聞いていた由美子が口を挟んだ。