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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 最終回

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隆一郎に喜びの返事をした夕美はその足で実家に行き母と父に報告をした。
父親は抱き付いて喜びを表現してくれた。恥ずかしく感じたけど力強い男性の抱擁を夕美は嫌だとは感じなかった。
夜になって帰り間際に雅子は話がしたいと二人だけになれるように自分の部屋に呼んだ。

「夕美、あなたは偉いね。自分のことだけじゃなく兄弟みんなや大森家の幸せまで叶えられるだなんて。私にもあなたのような強い意志があったら悲しい思いなどせずに済んだのにね。今はあなたのおかげで幸せを感じられるけど、本当にすまないことをしたと思ってるのよ。結婚したら大森家の人になるから、私と縁を切れるわね。
誠一郎さんはあなたのことが好きだから、忘れないで時々顔を見せてあげてね」

「お母さん、そんな言い方なさらないでください。私はお母さんのおかげでこうして大森家にお世話して戴けたんです。そのことは感謝をしています」

「夕美、私のおかげじゃないよ。実家の父の・・・世話なのよ」

「はい、そうでした。でも、お母さんがいなければ世話などしてもらえなかったわけですから・・・」

「夕美、もうそういう風に思い合うのはやめましょう。過去は置き去りにして、希望ある未来だけを見つめてゆこう。とにかくあなたは大森家の人間になるんだから、実家のことは考えてくれなくていいのよ。そのほうが幸せになれる。私と夫は十分幸せだから・・・変なこと言うけど、隆一郎さんのことはしっかりと捉まえておくのよ。
子育てや家事で忙しくても、忘れないで仲良くするのよ。男の人は寂しがり屋だから、それを忘れないでやってゆくのよ」

「はい、ありがとうございます。私にはよくわかりませんが、隆一郎さんを大切にします」

「そうね、夕美もこれからよ。もっといい女になって隆一郎さんが浮気しないようにしてやればいいのよ」

「浮気ですか?・・・それは悲しいです」

「冗談よ、冗談・・・」

雅子には笑えない冗談であった。
作品名:「夕美」 最終回 作家名:てっしゅう