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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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 「スカイ君、メルプル君聞きたまえ。このダンジョンゲームは莫大な金が動く、一大イベントなのだ。貴重な全人類的な文化遺産を私達ダンジョン競技運営委員会は興しているのだよ。賭博とは人間に備わっている本能の一つだ。殺戮衝動であり自己死でもあるのだよ。カネという物は、人生に、おいて仕事と呼ばれる行動によって獲得される物なのだ。それはつまり、人生の生きていられる時間と交換して得られる物であり、つまり時間によって分割された命そのものなのだよ。同じ時間働いて得られるカネの量が不公平で格差という物が在るにしてもね。そのカネを賭けると言う行為は人生を掛けることでもあるのだ。つまり自分の命を賭ける行為だ。そして他人の命であるカネを奪う行為でもある。賭博とは、まさに食うか食われるかの殺し合いの生存競争の修羅場なのだ。自分の命であるカネを奪われる危険があるにしてもだよ。それこそ全ては悪魔のイタズラが宿るダイスが知っているということさ。つまりカネを媒介にした生存競争の縮図がこのダンジョン競技にはある!これこその人間の本質だ!我々はダンジョン競技で善を為している!」
ダンジョニアン男爵は笑った。
「ごたくを並べて居るんじゃねぇ!ダンジョン競技ではカネを儲けたが!オマエは、ぶっ潰す!」
 「やれやれ、賭場で儲けて置いて、その後で同じ賭場の胴元を殺そうとは支離滅裂な行動だよスカイ君。君に必要なのは私に対する感謝と尊敬の念だ。つまりリスペクトが必要なわけだ。カネを沢山儲けさせてくれてアリガトウとでも素直に言えないのかね」
ダンジョニアン男爵は腕を開いた。
 「うるせぇぞ!俺は、お前を、ぶっ潰す!」
スカイは叫んだ。
「止めてスカイ!あれはパパの身体なのよ!」
 メルプルが叫んだ。
「何?ラビリーナと同じなのか?操られているのか?」
 スカイは言った。
「違うの!ダンジョニアン男爵が、パパの身体を乗っ取って居るのよ!」
 メルプルは叫んだ。
 ダンジョニアン男爵は笑いを浮かべた。
「うーん、そう言うことだ。それでは、そうだな、これから面白いゲームを始めよう。君達を戦わせてみようかな。簡単に殺してしまうのは楽しく無いからね。この獄門惨厳塔を君達は一応クリアーしたんだ。ではラビリーナ君」
ダンジョニアン男爵は指をパチンと鳴らした。
メルプルが歩いていって。部屋の壁に飾られている短剣を取りだした。そして鞘から抜きはなった。
「おい、どうしたんだメルプル」
 スカイは言った。
 だが、メルプルはスカイに向かって突進していった。
 「死ね!スカイ・ザ・ワイドハート!」
そしてメルプルは男性の口調で短剣をスカイに向かって振るった。
スカイは手に持った剣でメルプルの短剣を受けた。
「私じゃない!身体が勝手に動くの!」
メルプルは短剣を連続して振るいながら言った。
スカイは後ろにジャンプして避けていった。
「私じゃない!身体が勝手に動くのだよ!」
繰り返したメルプルの声が途中から変な声に変わった。
「何だ、どうしたんだメルプル!」
スカイは叫んだ。
 「ふふふ、今は、わたくしラビリーナが、お相手しますよ。私は以前には剣士に寄生したことも在りますので剣術も出来るのですよ。わたくしは寄生した人間達の能力や記憶だけでなく人生を全て奪える能力を持っているのですから。ちょっとインストールに時間が掛かりますけれどね」
メルプルが短剣を構えながら言った。
「メルプルがラビリーナ?どういうことだ!わかんねぇ!」
 スカイは剣を斜めに構えた。
「特別に教えてあげようスカイ・ザ・ワイドハート。わたくしは一度に何人もの人間を操ることが出来る。寄生肉芽を使ってね」
 メルプルは言った。
「寄生肉芽?コロン姉ちゃんが言っていたあのタンコブの様な物か!」
スカイは叫んだ。
「その通りですが、何故、寄生肉芽を知っているのですか?表の魔術師達は知らないはずですよ」
ラビリーナ・メルプル?は剣の突きをスカイの胴目がけて打ち込んできたがスカイは剣と体裁きで受けた。
「うーん、このメルプル・ブルーリーフの身体は身体が固くて重い。運動神経が、かなり鈍いようですね。私が習得している剣捌きが思うようにいきませんね」
 メルプルは短剣を、ぎこちなくスカイに向かって振りながら言った。
 スカイはメルプルの短剣の横殴りの攻撃を持っている剣で受けた。
そして反対の手でメルプルの短剣を持った右腕を掴んで後に回った。
 「何をするつもりですか」
 ラビリーナ・メルプル?は言った。
 「寄生肉芽は痛みを与えると外れるんだ」
スカイは言った。
 「成る程、寄生肉芽の外し方まで知られては、この身体を操るのは止めましょう。寄生肉芽を外します」
 ラビリーナ・メルプル?は言った。メルプルが力無く倒れた。スカイの目の前のメルプルの背中まであるプラチナ色の髪が動いて中から、親指の先端ほどの寄生肉芽が落ちてきた。ラビリーナの首筋に在った物と同じだった。スカイは踏んづけて寄生肉芽を潰した。
「おい、メルプル大丈夫か?」
 スカイはメルプルを抱き起こして頬を、かるく叩いて言った。
「う、うん。大丈夫」
 メルプルは目の焦点が合っていない様な表情で言った。
「ほう、寄生肉芽を外すとは、なかなかやる。ラビリーナ君を退けるとはね」
ダンジョニアン男爵は言った。
メルプルはスカイに支えられて立ち上がった。
 「ダンジョニアン男爵!パパを返して!そして凶陣拷羅五条殺を止めて!」
メルプルは叫んだ。
「フフフフ、そう簡単に行くと思うのかね?だが、ダンジョニアン男爵は寛大でフェアだ君達にチャンスを与えよう。この三つのアイテムの中に、私の弱点がある。トランプ、知恵の輪、六面体のサイコロ。この中から私の弱点となるアイテムを選んで破壊すれば、私は、ブルーリーフ男爵の身体から出て行かざるを得ない。さあ選びたまえ」
ダンジョニアン男爵の服の左袖からトランプと知恵の輪と六面体のサイコロが出てきて空中に浮いた。
「お前の弱点はこれだ!」
スカイはガラスで出来た二十面体のサイコロをポケットから取りだした。
 ラビリーナがスカイに教えたダンジョニアン男爵の弱点だ。
「この手の遊びでは弱点はトランプに決まって居るんだよ。考え直した方が良くないかね。それは、ただの何処にでもある二十面体のサイコロじゃないのかな」
ダンジョニアン男爵が笑いながら言った。
「おりゃ!このヤロウ!」
スカイは赤いガラス製の二十面体のサイコロを床に叩き付けた。サイコロは砕け散った。
 「ギャァアアアアアアアアアアア!」
ダンジョニアン男爵の身体から何かが離れていった。
「これがパパを操っているバケモノなの」
メルプルが言った。
 ダンジョニアン男爵の身体から奇怪なボールのような頭が付いた赤い二十面体のサイコロの胴体を持った怪物が現れた。
 「ボクを見たな!」
怪物がボールに付いた顔を歪めて蛇腹で出来た腕を振り回して叫んだ。
「この剣でトドメを刺す!バケモノめ!」