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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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「パパ!」
メルプルは叫んだ。
「よく来たねメルプル会いたかったよ」
ダンジョニアン男爵は言った。
 「ウソよパパは私の事をメルプルなんて呼ばない!あなたはニセモノね!」
メルプルは叫んだ。
「おや、そうだったかね。フフフフフフフ。それじゃ、君の、お父さんの声でも聞いてみるかね」
 ダンジョニアン男爵は言った。
「何を言っているの!パパを返して!そのダンジョニアン男爵もニセモノでしょ!」
メルプルは叫んだ。
 「違うよ。違うよ。これは君の父親ブルーリーフ男爵の身体なんだよ。少しばかり特殊な魔術で身体を奪って居るんだ」
 ダンジョニアン男爵は言った。
「ウソよ!また騙そうとしたって、もう騙されない!」
 「うーん、それじゃ、ブルーリーフ男爵の声を聞いてみるかね」
ダンジョニアン男爵は笑いながら言った。
 途端にダンジョニアン男爵は椅子の肘掛けに、もたれかかるように倒れた。
そして目が開いた。
 狼狽した顔をしている。
 「メル。メルか。ここから逃げなさい!ダンジョニアン男爵達は本物の悪魔だ!人間じゃない!殺人ゲームをしながら笑ってアイスを食べている!お前だけでも逃げなさい!」
 メルプルは青ざめた。その喋り方は間違いなくメルプルの父親のブルーリーフ男爵の喋り方だった。
 「パパ!」
 「逃げなさいメル!早く!お前まで怪物にさせられてしまう!そうしたら多くの善良な人達を苦しめる悪魔になってしまう!奴等は、そういった相談をしていた!」
「でも、パパを置いて行けないよ」
「早く、逃げなさい!私が私で居られる間に!うわああああ!」
 「パパ!」
 メルプルは叫んだ。
ブルーリーフ男爵の首がガクンと前に落ちた。
 「フフフフフフ。うーんどうだったメルプル君。しばしの親子の対面は?これでも私をニセモノだと言えるかな」
ダンジョニアン男爵は垂れていた頭を持ち上げた。そして笑いながら立ち上がった。
「酷い!悪魔!」
 メルプルは叫んだ。
 「残念、少し違うよ。仲間内ではスラッシャーと言うんだ。一番クールでスマートかつセクシーな格好いい魔術師の姿なんだよ。君は心の弱い人間だね?こんな事すると、どうだい」
 いきなりダンジョニアン男爵は左腕を椅子の手すりに打ち付けた。
「痛たたたたた」
 ダンジョニアン男爵はニヤリと笑った。
 「何て事するの!パパの身体なのよ!やめて!」
メルプルは叫んだ。
「何とも言えないね。楽しいね。子供の前で親の肉体を傷つける事は」
ダンジョニアン男爵は笑った。
「そんな事をして何が面白いの!」
 メルプルは叫んだ。
 「楽しいからさ。ただ単純に面白いんだよ。他人の心を傷つけた分だけ自分の心が満たされて幸せになれる。スラッシャーの間では幸福量保存の法則と言うんだ。世の中には一定の有限な幸福の量があって、それを巡って、みんなが幸福を奪い合うという公理が存在するんだ。少し難しい話になったかな?僕たちのような勉強屋の話題だからね」
ダンジョニアン男爵は言った。
「人でなし!悪魔!」
 メルプルは叫んだ。
「無力な人間から浴びる罵声は快楽なんだよ。実に気持ちがいい。自分が特別な存在である事を裏付けてくれる。そうやって自信と言う物が出来上がっていくのさ。そして、その自信を元に社会の上に立つことが出来る。これが世の上に立つ勝ち組と呼ばれる者達が有り体に実行している帝王学と言う物さ。安っぽいけれど学問の探究上参与観察をして真似をするとなかなか快感だね。僕も好きだよ勝ち組になるのは。勝ち組最高。だから辞められないんだね支配者は支配者を」
ダンジョニアン男爵は笑いながら腕を更に椅子の手すりに何度もぶつけた。
「そんな事しないで!もう耐えられない!」
 メルプルは耳を押さえてしゃがみ込んだ。
 ダンジョニアン男爵が笑いながら自分の腕を振り上げて何度も椅子の手すりに打ち当てる音がメルプルの押さえた耳に聞こえた。
お願い止めて!
 「おや、ギブ・アップかね?君も支配者なのだろう?生まれつき女男爵になることが定められているのだから。でも君は支配者の世界から負け組となったブルーリーフ男爵の娘だ。君は父親と同じように駄目な支配者のようだね。支配者は親子で互いに殺し合うことも珍しくないんだよ。それは学問的には正しい事なんだ。負け組である一般人が傷を舐め合う方便の家族愛とやらは支配者には要らないんだ。権力を拝受し抜け目無く次の世代へと受け継がせる器で在りさえすれば良いんだ。きっと森人の血を引く君の母親が男爵という肩書きと権力を持った君の父親と結婚して勝ち組になるために愛という幻想で、たぶらかしたんだろうね。嫌な女だね君の母親は。君は、どうやら両親の悪いところだけを受け継いだ支配者の失敗作だったようだ。ルックスは支配者として申し分無いようだけどね。でも君をしっかりした支配者にして上げるよ。ハイローゲーム学派は高いモノを低くして低いモノを高くするんだからね。腕の振るいがいがあるよ。これからラビリーナ君が君の身体を欲しがっているから彼に君の身体も記憶もあげよう。彼は、他人の記憶を奪うことに喜びを覚えるんだ。そして彼が君の脳の中に寄生して女ダンジョニアン男爵となるのさ……おや、この身体は脆いね。もう壊れちゃったよ。前腕の二つの骨が折れたようだね。どうやら皮膚から骨が出ているようだ。ツンツンやると面白いね。君も見てみるかい」
メルプルは、見ることが出来なかった。ポシェットを開いた。そして森人の錬金術で作った植物が入った試験管を取りだした。だが、それ以上何も出来なかった。
 「それは、森人族の魔術だけではないね。
僕たちスラッシャーは、あらゆる学派の魔術師達の魔術を奪って集めて居るんだよ。森人の錬金術で作った魔術植物だけでは僕たちスラッシャーには勝てないな」
ダンジョニアン男爵は言った。
メルプルは、試験管を握ったまま。動けなかった。試験管の中に入っている攻撃型の植物を使うことは出来なかった。
どうすればいいの?
 メルプルは迷っていた。
 「おりゃ!」
メルプルの背後で大きな音がした。
 扉を蹴飛ばして人が入ってきた。
 「何だ?メルプル?先に居たのか?」
 スカイの声がした。
「スカイ!」
 メルプルは叫んだ。



「ほう、誰が来たかと思えば、スカイ君が来たのか。君達、第7パーティは、アンラッキー・セブンで殺す予定だったのに結局優勝させてしまったからね。だから、ここで、君をアンラッキー7らしく、惨たらしく殺さなければ、このダンジョンゲームの神の矜持が満たされないんだよ」
 ダンジョニアン男爵は笑いながらスカイの方を見た。
「うるせぇぞ、この野郎!大丈夫かメルプル!」
 スカイは床に、へたり込んでいるメルプルの側まで駆けていった。
「スカイどうやってダンジョニアン城まで来たの」
 メルプルは言った。
 「説明は後だ。ダンジョニアンを先に、ぶっ潰す」
 スカイはメルプルに言った。
ダンジョニアン男爵は満面に笑みを浮かべた。そして話し始めた。