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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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 そして三十センチ近くの火柱が出るオイルライターで火を付けた。
 そうすると首が伸びた。
顔が、みるみるうちに変化した。
 眉が極太になり、ピンク色の髪が全部引っ込んで禿頭となった。そして、のっぺりとした顔にニヤリと笑みを浮かべた。
 「やはりお前か!ムカデ紳士!忘れるものか!」
 マグギャランは言った。
「ボクは記憶力が良くて子供の頃からテストでは何時も百点満点だったから、君のようなウザったい、ザコの事も、ちゃんと覚えているんだよ。でも、君の方は僕がスタート前に、君の、そばでインタビューをしていたのに気が付いてくれなかったじゃないか。なかなか間抜けだね。ボクは可笑しくてハラワタがよじ切れそうなぐらいバカウケだったんだよ。笑いを堪えるのに一苦労さ。そう言えば感想を聞いてなかったね。それじゃ今からインタビューでも開始しよう。どうだった、あの時は?君は悪魔のジェスター・オブ・ヘルに騙されたんだよね、そして、その時、自分の手で…」
シキールはニヤニヤと笑いながら言った。
そして口から葉巻の煙を吐くとドクロの形になった。
「何が可笑しい!」
 マグギャランは言った。
 「あの時の君のリアクションが、おいしかったからさ。ボクはねスラッシャーとしての学問の探究に際して視覚効果とリアクションに拘るんだよ。だから、見ると嫌悪感を抱かせるようなバカな格好をして居るんだ。こーんな風に首が長くてムカデの胴体なんてなかなか気味が悪いだろう?いきなりやると女なんて悲鳴キャーキャーのリアクションをしてくれるのさ。そのリアクションが快感でね。癖になるんだよ。血しぶきと肉片を撒き散らして、みんなでキャーキャー、ワーワーと騒いでボク一人盛り上がるのさ。血しぶきの、お祭りみたいなモノが大好きなんだな。でも君の今のリアクションはイマイチだね。怒りを貯めているより、もっと発散して驚く顔を期待していたんだよ。君のようなザコには間抜け面が一番似合うからね。君が自分の手で許嫁を殺した、あの時のようにね」
ムカデの首を曲げて口に銜えた葉巻を外して煙をマグギャランの顔に向かって吐きかけた。煙は十メートルぐらいの離れた距離を通ってマグギャランの顔にかかった。
「言うな!俺は、この日のために生きてきた!お前は俺の仇だ!悪魔め!殺す!」
マグギャランは剣を抜いた。
「ノン・ノン・ノンだよ。悪魔じゃなくてス・ラ・ッ・シ・ャ・ァ。世界の秘密を知る本物の魔術師ソーサラーの最近の呼び名さ。人間の汚さ、ばっちさ、うざったさ。いっそのこと絶滅させたくなるような人間の本当の醜い姿を知っている賢者の中の賢者なのさ。だから……」
 シキールは、だから、と言うと間を置いた。
 「だから、なんだ」
 マグギャランは聞いた。
 「うーん、聞いてくれるのかな。ア・リ・ガ・ト・ウ。まあ、そうカリカリ怒らないでよ。理由を説明してあげるから。それはね、だからボクは人間というオモチャで遊ぶ事にしたんだよ。貴族、平民、奴隷、何でも使って遊ぶのさ。社会の、ばっちい仕組みも汚いイカサマも、遊びに使うことにすると、途端に、なかなか面白いプリミティブなマテリアルとなるんだね。そのリレーションは幾つも取れるからね。実に楽しい物だね。人間というオモチャで遊ぶのは。僕は学者であると同時にセンシティブなスプラッター芸術の芸術家でもあるんだ。本質的な所では学者と言うよりアーティストなんだよねボク」
 シキールはニヤニヤしながら口からドクロの形をした煙を出しながら喋っていた。
「お前とは、話すことなど無い。ただ、この剣で、お前を殺せればいい」
マグギャランは言った。
「フフフフフ、腕力に訴えるんだね?でも簡単に復讐ができると思うのかい。ボクは実は東西南北全部無敵流の格闘技の使い手なんだ。ドラゴンだろうと神だろうと凌駕する脅威の力を3・14秒間の猛特訓で、今さっき歩きながら、ここに来る途中で会得したんだ。一度身に付いた神秘の力は食っちゃ寝ばかりして怠けていても増えることは在っても、一生衰えないんだ。何故なら僕は主役だからさ。主役。さあ掛かってきなさい。ザコのオマエは敵じゃない。お前より三百一兆倍強いぞ!バア!」
 シキールは手をクネクネ動かして、おかしな構えをして三十センチぐらい在る長い舌と股間のカエルの顔から舌を出した。
マグギャランは無言のまま近づいていって剣をシキールの胸に突き刺した。
「ウギャァアアアアアアアア!しゅ、主役なのに、あ、有り得無ぁぁぁぁぁぁい!」
 シキールは全身を強ばらせて動かしながら言った。
そしてシキールは顔に笑いを浮かべたまま倒れた。
マグギャランはシキールを倒した。
「こんな物か。こんなにもアッサリとカタがつくのか。そして、この空しさはなんだ。こんな最低の奴等を殺す為に生きると言うことは何て空しいんだ。父さん、姉さん、俺を騎士として導いてくれ」
マグギャランは剣を収めた。
 そして、マグギャランは優勝賞金の入った宝箱を蹴飛ばした。そして暫く宝箱を見ていたが、溜息を付いて宝箱を持ち上げて去っていった。
するとシキールの白目を剥いた目に焦点が戻った。
 「うーん。死んだフリは楽しいモノだね、何時気が付かれるかとドキドキだったね。最高だね。このスリル感がヤバイんだよね。復讐に燃えている人間の隣で仇のボクが死んだフリだなんて最高にドキドキするシチュエーションだね。あー何てヤバイんだこれは。癖になるね。気持ちいいね。でも、やっぱり人間の身体は弱いね。心臓一突きで動かなくなるんだからね。やっぱり心臓が止まってしまうという不安が大きいから五つぐらい並列で繋げて、おかないと安心は出来ないよね。今度はどんな身体を着てみようかな?身体を選ぶというのは服を選ぶようにワクワクするね。いや、普通の人間には味わえない、もっと贅沢な楽しみかな。首を、もいで身体を盗むんで使うんだからね。ちょっと真似は出来ないかな。僕だけの贅沢な、お楽しみだフフフフフ」
 シキールの首が更に伸びてムカデの身体が出てきた。
 そして人間の顔がムカデの身体に付いた怪物はダンジョニアン城の闇の中に消えていった。



 スカイとコロンはダンジョニアン城の中を歩き回っていた。次の階へ進むための階段のような物が見つからなかった。そして、ダンジョニアン城の部屋の中には、得体の知れない怪物を作っている様な場所が、あちらこちらにあった。
 「放送室?何だ?」
 スカイは、適当に当たりを付けて蹴飛ばして扉を開けてみた。
 フラクター製の機械に囲まれた部屋の中にはクマ人形を抱えた、耳が尖った褐色の肌にプラチナ色の髪の女の子が居た。
「どういう事だい。君達。どうやって、ここまで来たんだい」
 クマ人形は若い女の声で言った。
「ダンジョニアンを、やつける為にやって来た」
 スカイは言った。
 「せっかく、凶陣拷羅五条殺を、やっているのにズルをしては意味が無いじゃないか。この後のシナリオが上手く進まなくなるんだよ。困った人達だな」
 クマ人形は言った。
「お前達のシナリオなんか、ぶっ潰してやる」
 スカイは言った。