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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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「避けたぐらいで、いい気になるなよ!轢き殺してやる!」
 ロボットが足の後ろと真ん中に在る車輪で突進してきた。
ウロンは横に跳んで避けた。
 「早く行きなさい!」
ウロンはレーザー・ブラスターを構えながら言った。
 だが、階段近くまで来たメルプル達にロボットが迫ってきていた。
 「ライトニング・ボルト・フィールド展開!」
ロボットの背中から先端に球の付いた棒が何本も出てきた。そして雷光が棒の先端から発生していた。
 だが、ウロンのレーザー・ブラスターがロボットの背中に生えた棒を焼き切った。ロボットの背中で爆発が起きた。
「早く先に行って!」
 ウロンが言った。



階段を昇ると三の殺と書かれた扉が開いた。
「何で床一面が氷で覆われているの」
メルプルは口走った。
床は一面が氷で覆われていた。
 そして、ただっぴろい部屋は真っ暗だった。
入り口付近の「非常口」と書かれた緑色の蛍光灯が灯っているだけであった。
突然、スポットライトが点灯し部屋の奥にいる赤いミニスカートの女性を照らした。
「それは私が居るからよ。氷上舞闘流スベラバの使い手、ダンジョン競技の一輪の薔薇。私の名前はマアン!」
赤いミニスカートの衣装を着た女性が氷の上でスピンしながら言った。
電気が一面に付いて部屋の中が明らかになった。
高い天井付近には通路があって、そこではスポットライトを灯している黒い覆面を被った赤い水着のバニーガールが居た。
ニャコが前に出た。
「ムニィ。格闘家ムニィ。ニャコに戦えと格闘家の本能が命令しているムニィ」
ニャコが前方へ宙返りしながら言った。
氷の上でバランスを取っていたが。
しっかりと立って構えた。
 「猫耳人は平衡感覚が人間より優れているムニィ。ここはニャコに任せるムニィ。みんなは先に行くムニィ」
「でも、ニャコちゃん。ゴフ・ハベの毒の影響は大丈夫なの」
 ルルが氷の上で、すっ転んで倒れたまま言った。
「眼鏡の、お姉ちゃんが、くれた薬でピンピンしているムニィ。心配無いムニィ」
「それじゃ、ニャコ、任せたわよ」
 楚宇那が言った。
 「トリプル・スピン・キック!」
前に出てきたニャコに、マアンと名乗ったスベラバの使い手の蹴りが飛んできた。
低い姿勢から上に上がるように回転蹴りを三回打った。
「ムニィ!」
ニャコは三発の蹴りを全部十字受けで受け止めた。
マアンと名乗った女性はステップして後退して、両腕を鳥のように広げて羽ばたくようにしなやかに動かした。
「その受け技は、あなたも格闘家のようね。流派は何?」
マアンは言った。
 「ムニィ、ニャコの流派は猫耳人の民族格闘技、猫拳ムニィ」
「猫拳なんて名前も知られていないようなマイナー流派はスベラバの敵ではないわ」
マアンが言った。
 「みんな三途の川を渡る前に、そう言うムニィ」
ニャコは言った。
「私が三途の川を渡るか試してみる?」
 マアンは言った。
 「望むところムニィ。即死コンボを決めてあの世に送ってやるムニィ」
ニャコは言った。
 「ミューヅック、スタート!」
 マアンの声と共に、交響曲「ツルッペリン行進曲」が流れ始めた。
メルプル達は反対側の階段を昇った。



「拙者の名はムササビ。我が主、屍さまの命によってダンジョン・ストーカーズの派遣アルバイトをしている。ここを通すわけにはいかぬ。即刻立ち去れい。立ち去るなら女で子供、故に命までは奪わん」
 天井に逆さまに、ぶら下がっている全身に鎧を着た男が言った。
 「ねえ、どうやって、ぶら下がっているの」
 ルルが大声出して聞いた。
 だが、楚宇那が前に出た。
「忍者風情が無礼であろう。我が名は楚宇那。控えよ」
楚宇那がいった。
凛とした声だ。
 メルプルは思わず背筋を伸ばして控えてしまった。
 「すごーい。楚宇那ちゃん。何時もと全然違うよ」
ルルがキョロキョロと楚宇那と忍者を見ながら言った。
「我は屍様と共にフラクターを捨てた身。その名には、もはや我を縛る力など無い。ヌシ等、早く立ち去らねば骸となるぞ」
忍者が言った。
 「屍だと、御前試合で兄上を殺した男か」
楚宇那が怖い声で言った。
たまに楚宇那は怖いけれど。今は格段に怖かった。
「抜き足!」
 ルルが横に一歩足を出した。
カキン!
 と音がしてルルの膝まである細身の白いロング・ブーツの横に刃物が突き刺さっていた。石の床に刃物が突き刺さっている。何という威力なのだろうか。どう考えても、この床は固い石の筈だ。本当に手で投げたのだろうか?
「うわ…」
 ルルが刃物を見て言った。
「これは警告だ。次は心臓に突き刺さると知れい。む、何だ、その不埒な服は白金髪の娘!」
忍者がメルプルに言った。
メルプル以外に白金髪は居ないし自分のことだとメルプルは思った。
 メルプルは自分の服を見た。確かにジャケットのボタンが飛んで、おヘソが出ているが。不埒って言われる程ひどくはないはずだ。内側には夏で暑いから丈の短い黒いタートルネックの袖無しの木綿製のニットを着ているけれど…。あとはママから貰った森人族のアクセサリーのネックレスも付けているけれど…。
 「何という破廉恥極まる格好だ!拙者は硬派故に、そのような格好は断固認められん!」
 忍者が、うろたえて手で目を隠しながら言った。
 「屍はフラクター選帝国ヤマト領が生んだ最低の男よ。御前試合で病弱な兄上に勝ちを譲るはずだったのに木刀で撲殺して、その場で自分の師匠を殺して、追いかけてくる百人以上の侍を皆殺しにして逃げ出してフラクターを出奔したのみならず、フラクター選帝国とタビヲン王国との「混沌の大地戦争」の際にはタビヲン王国側に傭兵団を率いて付いて平然とヤマト領の軍勢を切り伏せて回った。その部下なら、私が成敗する」
楚宇那は言った。
 「笑止!貴様等は、ここで骸となる!」
 忍者が言った。
楚宇那はウロンのマントを肩から外した。
「む、娘!その、そこら中が切れている服は何だ!不埒な!」
 忍者が、うろたえた声で言った。
「この忍者は私が相手をするわ。ルルと一緒に次の殺へ向かって」
 楚宇那は言った。



「ド、ドラゴン」
 ルルは言った。
 最後の殺。そこには巨大なドラゴンが居た。
山のように巨大なドラゴンだ。
死ぬ!
 殺されて死ぬ!
口を開けた!
足がすくんだ。動けなくなったのだ。
 火を吐くに違いない!
 「格好いい!ヘロー!」
 ルルは手を挙げてドラゴンに話し掛け始めた。
え?何やっているのよ!
 ドラゴンは開けていた口を閉じた。
「何やっているのよルル。火を吐いて焼き殺されるわよ。あの尻尾が当たっても死ぬし、踏み潰されても死ぬし、噛みつかれても死ぬし、何をやっても死ぬのよ」
 メルプルは慌てて言った。
 「ウチのハーベス王国は「飛竜騎士団」が飛竜を飼っているの。ドラゴンって頭が良いから人間の言葉が判るんだよ。餌付けやったこと在るもん」