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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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 「一位を譲ってやるんだ判っているかスカイ。このバカ者め。む、何だ、その美しい女性は」
 ジーウーがルシルスを見て言った。
「これはルシルスだ。人間じゃないかもしれないがな」
スカイは言った。
「ジーウー。この女は第五パーティ「悪人同盟」のサシシ・ラーキのはずだ。新聞を読まないオマエは知らないかもしれないが、この女は殺人宗教の邪神官で犯罪者だ。関わらない方が良い」
黒鷹が腕を組んだまま言った。
「それにしても黒鷹。近くで見ると、物凄い美人だな。新聞の似顔絵と全然顔が違うじゃないか。フラー。森人族の、お前から見ても美人か」
 戦士が、にこやかな笑顔で言った。
「美しく見えますね」
森人族の男が頷いた。
ゴーンと音がした。
 戦士の鎧の腹にキュピンのモーニングスターが命中した。
「何、アンタ達!この女に騙されているのよ!秘文字教はコモンじゃマイナーでマニアックなインチキ宗教よ!しかも「殺しの秘文字教」はコモンの国じゃ何処ででも禁止されている危険なカルト宗教なのよ!」
キュピンが叫んだ。
「ところで、スカイ・ザ・ワイドハート。
そこにいる、サシシ・ラーキは第五パーティ「悪人同盟」のメンバーだ。お前達第七パーティに順位を譲る約束はしているが、第五パーティに順位を譲る約束はしていない」
 黒鷹が言った。
そういや、メルプルは父親のダンジョニアン男爵に会うって言っていたな。
 ルシルスは、たった一人とはいえ、第五パーティ「悪人同盟」の一員だ。このままではルシルスが「悪人同盟」として入賞してしまう。そうするとメルプルが父親のダンジョニアン男爵に会えなくなってしまう。
どうするか…よし!
「おい、ルシルス。これから女だけのパーティが来るから、それが通過するまで、ここで待っていろ」
 スカイは言った。
「え、何でですか?」
ルシルスが首を傾げていった。
「なに命令して居るんだよスカイ。この人はオマエより年上だろう。年長者には礼儀正しくするんだよ」
 ジーウーが言った。
 「そうだ、小僧」
第八パーティの中年の戦士も頷いていた。
 「いや十四らしい。俺と同い年だよ」
 スカイは言った。
 「は?俺より一つ下なだけか?それにしても凄い美人だな」
ジーウーは言った。
 ジーウーのボディにキュピン・パーキスの拳が突き刺さった。
「ジーウー君、大概にしなさい」
 キュピンが言った。
「まあ、キュピン、そう怒るな。こんな美人は滅多に見られるモノじゃないぞ。ジーウーの社会見学と言うことだ。大人になるためには色々と経験を積まなくては、ならないからな」
 戦士が笑顔で言った。
「ふん、何の経験だか」
 キュピンが腹を立てた声で言った。
「私は、無事に、お家に帰れれば良いですから。構いません」
そう言うとルシルスはゴール前の床の端に白い神官着の裾を纏めて横座りをして座った。
「まあ、それじゃ俺達が一位のテープを切ってやる。感謝するよ黒鷹。オレ達には多額の借金が在るんだ。お前達の、お陰で全額返せる。だがジーウー、お前には口が裂けても感謝はしねぇ。マグギャラン、コロン付いて来いよ」
 スカイは、のしのしと歩いていってゴールのテープを切った。
「うっしゃ!ぶっちぎりじゃ無いが一位とったぞ!」
スカイは右腕を挙げた。マグギャランとコロンも腕を挙げた。
少々引っかかりがあるが一位は一位だ。
借金は全額返せて多少の金も手元に残る。
 文句無しの結果だ。 
 ゴールのテープを持っている赤い水着のバニーガールとは別のバニーガールが、くす玉を割って紙吹雪が舞った。
 ゴールのゲートは開けた城の中庭に通じていた。横にいる吹奏楽団が交響曲「ビクトリー・ウイナー」を演奏し始めた。
 この賭けレースで一位になることが出来た。
優勝賞金と自分達に賭けた賭け券を合わせれば借金は十分にまかなえる。
だが、メルプルがダンジョニアン男爵の娘だったとは意外だったな。
メルプルは俺の事を騙していたのか?
少し引っかかりがあるが、
 まあ、いいや大金が手に入ったし。
スカイは夕方の夕焼けを見ながら思った。



「ゴール前での接戦の末。第7パーティ、「ザ・ワイドハート」が一位でゴールしました!続いて、第八パーティ「黒鷹」が姿を見せました!7、8で来ました!大穴です!穴が来ました!大穴です!」
シキールの絶叫が鳴り響いた。
 スタジアムでは怒号と悲鳴と絶叫と共に紙吹雪が宙を舞った。
 シー老師は何かと思って紙吹雪を取ってみてみたら。外れて破かれた賭け券であった。
 となりでギャンブラーYも券を破って空へと投げていた。
「ああん!もう!くそぅ!いやっ!」
 ギャンブラーYは、暴れて、地団駄を踏んでいた。
 「ツバメ、当たったッスか」
 「ツバメは外れました」
「スズメも外れたッス」
「ふ、三枚、当たった。適当に買ったら大穴単願狙いが来た」
「ああっ!シグレ様ずるいッス!一人で大穴は無いッス!ここは三枚在るならスズメとツバメにも一枚ずつ、くださいッス!結婚の時の持参金にしますから!ああっ!くださいったら!ください!」
 スズメという娘はシグレと呼んだ娘の腕を持って揺すっていた。
 「ふ、嫌だね。全部わたしのモノだ」
 シー老師の隣のフラクター人シグレが笑っていた。
 世も末だ。
シー老師は頭を抱えていた。
だが、この三人の娘達が、ただの一般人でないことも判っていた。
足音を立てずに動くのだ。
 そして気配を消す癖が身に付いている。
 


「どうやら、第二人気の「黒鷹」は一位から転落しました。彼等は約束を守ったようです。これで人気最下位の「ザ・ワイドハート」が一位で、二番人気の黒鷹が二位です。この7、8の組み合わせは賭け率が低い為大穴の中の大穴となりました。安全圏狙いは「黒鷹」に賭けても「ザ・ワイドハート」には賭けませんし、穴狙いは「ザ・ワイドハート」に賭けても「黒鷹」には賭けません。これで我々は、また一財産を儲けたことになります。胴元様々の結末とでもいいましょか。あの御方も預金の残高が増えれば喜んで下さるでしょう」
 ラビリーナが笑いながら言った。
 「あの御方の事は口に出さないでくれ。いま名前を聞いてブルって足が震えて居るんだよ。あの御方は恐ろしいよ。実に恐ろしい怪物だ…このコモンの真の支配者だと言えるだろう。いや、コモンの闇を仕切る魔物だ」
ダンジョニアン男爵は身を震わせながら言った。