小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ダンジョニアン男爵の迷宮競技

INDEX|47ページ/69ページ|

次のページ前のページ
 

 ボトルシェイカーの顔を見た。
 そこには紛れもなく二つの目が見えた。
 「本当か?ジーウー」
 黒鷹が言った。
「こんな馬鹿な機械の弱点はですね…」
 ジーウーはボトルシェイカーの鉤爪攻撃を避けながら、鉤爪の付いた腕を蹴って三角跳びでジャンプした。
「ここが弱点だ!」
そして二起脚でボトルシェイカーの顔を蹴っ飛ばした。ジーウーの足に手応えが在った。
「ぎゃっ!」
 叫びと共にボトルシェイカーの鋼鉄の顔が床に落ちた。そしてメマシー博士の顔が出てきた。
 鼻血を垂らしている。
 見る見るうちに左目の上に大きなコブが出来た。
「ううっ、何故だ、何故ここが弱点だと判った。最強の戦闘ロボット、ボトルシェイカーは製作予算の都合上、視界を確保するためには前のめりになって、顔を外に出して操縦しなくてはならん。その弱点を補うためにはパイロットは鉄の仮面を付けねばならない。この弱点が、どうして判ったのだ」
 メマシー博士が言った。
 「決まっているだろう。機械なのに人間のような目が金属製の仮面から見えた、ならば、そこが弱点だと思うの当然だろ」
ジーウーが言った。
 「バカめ、ロボットは人間のような目が付いている場合もあるのだ。無知に、やられたか…だが、ボトルシェイカーには必殺兵器のライトニング・ボルト・フィールド発生装置が付いている。貴様等を黒こげにしてやる!これが天才だ!これが天才の実力!死ね!死ね!死ね!」
メマシー博士が叫んだ。
 ボトルシェイカー背中から先端に球が付いた棒が二本出てきた。棒の先端には電光が走っている。電光が広がった。
電光が黒鷹達第八パーティを襲おうと近づいてきた。
 「あれ?」
 メマシー博士の額に弓矢が刺さった。
 ジーウーは振り返った。スカウトのクア・フルトが背中から外した、二連クロスボウを構えている。どうやら一発を撃ち込んだ、らしい。極めてドライな対処だった。
ロボットのハッチが開いてメマシー博士の身体がツルンと力が抜けて軟体生物のように落ちてきた。 
 メマシー博士は額にクロスボウの矢が刺さったまま白目を剥いて。ピクピクとしている。
 「馬鹿な奴だが一応人間だ。だが、こんなロボットを作って人を殺し回っていたんだ。素直に成仏して、今度生まれ変わったら真っ当に生きろよ」
黒鷹が言った。



スカイ達は、マゼンタ色の扉を潜った。
 そこには、鉄の巨大な塊が転がっていた。
 そして、その横では頭に矢が刺さった白衣に眼鏡に髭を生やした中年の男を抱えた若い白衣の男が号泣していた。
 「何をやっているのだ」
 マグギャランが言った。
 「さあな。とりあえず、あの鉄の塊は動かないみたいだし、俺達は、早いところ、通り抜けるぞ」
 スカイは言った。
 


黄色い扉の向こうは、らっきょう頭が居たのと同じ広い空間だった。だが、明かりは、ぼんやりとしていて部屋全体は暗かった。
「あっ、クマの人形だ。テディ・ベアだよ」
ルルは言った。
だが、ただのテディ・ベアではなかった。
二足歩行で部屋の奧の方から歩いて出てきた。
 「バカ、ムニィ。十五にもなってクマの人形如きに騙されるなんてダメだルルは」
 ニャコが言った。
 「この恥知らずな君達」
 テディ・ベアは言った。
 怨念と憎しみが籠もっているような若い女の声だ。
クマのヌイグルミが近づいてきて立ち止まった。
 「君達は女の子のくせに、拾い食いして下痢をするし、幼なじみに嘘ついているし、投げキャラにアッサリやられるし、人殺しだし、直ぐに男に声を掛けるし、全然駄目だ!」
テディ・ベアが若い女の声で言った。
「うんと、きっと下痢が私で…」
 ルルは顎の下に人差し指を当てて考えながら言った。
 「ルル腹痛よ」
 楚宇那が怖い顔で言った。
 「馬鹿者!下痢と口にするか、お前!」
テディ・ベアが両腕を振り回しながら言った。
「えへ」
 ルルは舌出して自分の頭の後ろのリボンを叩いた。
「嘘つきは私」
 メルプルは言った。
 そう、嘘つきなんだ私は。
そして森人の自分より境遇が惨めで不幸な楚宇那と友達になったんだ。
 ふふふふ……。
でも、テディ・ベアに見抜かれるとは思わなかった……。
 ああっ悲しいな。
「投げキャラに負けたのはニャコ、ムニィ。でもヤツは毒を使う、格闘家に、あるまじき外道ムニィ」
 ニャコが言った。
 「人殺しは私。そう私は、この手で…」
楚宇那が自分の手を見ながら言った。
 「男に声を掛けるのは私、一生に一度のチャンスのいい男だったからよ。フッ」
ウロンは腕を組んだまま眼鏡を直しながら笑みを浮かべて言った。
 スカイは単純な男なのに。
 どこが良いのかな。
顔は目つきが悪いし、背はあんまり高くないし。私より低いのよね。昔は冒険者と呼ばれた冒険屋というゴロツキに近い仕事をやっているし。たしか7、8歳頃からやっているのよね……。
「ド阿呆者共の君達!結局、君達は駄目な女の子達だから不合格だね!」
 テディ・ベアが叫んだ。
「なぜ、私が入っていない、そこのクマ人形」
 サファお姉さんが言った。
 「君は、人殺しだろう、しっしっ。何人、タビヲン王国で殺してきたんだい」
テディ・ベアが腕を振りながら言った。
 「このクマ人形は切られたいみたいね」
サファお姉さんが言った。
 「ふん、戦争犯罪人はシカトするんだ。なぜここに来たか教えるよ。これから君達をボコって顔の形を変えててやるのだ。君達を、ずっと観察していたが駄目で不合格であるが故にボコってやる。青タンを作って前歯を全部へし折って髪の毛を引っこ抜いてダンジョンの床に転がしてやるんだ」
テディ・ベアが腕を振りながら言った。
「ふん、クマ人形如きに負けないムニィ。毒さえ無ければニャコは強いムニィ」
ニャコが構えながら言った。
「あっ!思いだした!このテディ・ベアはきっとステディ・ベアだ!女の子を幸せにしたり不幸にするんだよ!」
 ルルは指を差して大声を出した。
メルプルも思いだした。それは恐い話に出てくる妖怪だ。コモンでは有名な都市伝説なのだ。ステディ・ベアとは最初は拾った女の子の所に幸運を呼ぶ幸せのテディ・ベアなのだが、機嫌を損ねると不幸を呼ぶテディ・ベアとなるのだ。
コモンの女の子の間では有名な話らしいが、メルプルはコモンのハーベス王国出身のルルに聞くまで知らなかった。
 クォーターの森人はコモンでは仲間はずれなのだ。だから勇気を出してモンスターや亜人類、少数民族達が集まるフラクターの学校に入ったのだ。目論み以上に良い友達が沢山出来たのは嬉しかったがパパがダンジョニアン男爵化するなら行かなければ良かった。私がブルーリーフ町にいれば、こんな殺人ゲームを始める事はなかったに違いない。でもルル達に会うことも出来なかったはずだ。どっちも選べなかった。
 「愚か者ぉ!心の綺麗な女の子のみを幸せにして,心の汚い女の子を不幸にするのだよ。世間のデマになんぞ騙されては駄目だよ!もの事の本質を見透かすんだ!」