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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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カダミーが顔を押さえてマグギャランを離した。マグギャランは、腹這いになったまま氷の上を滑っていってマアンの横を通過した。そして匍匐前進で逃げていた。
 「ああっ!どうしたのカダミー!」
 マアンが蹴りを止めて顔を押さえて氷の上で蹲っているカダミーに近づいた。
 「おおっ、君の筋肉質の足の蹴りをオレの美しい鼻っ面が食らってしまったのさ」
 カダミーが顔を押さえた手の間から鼻血を垂らして言った。
「ああっ!何て事なのカダミー!私の筋肉質の足の蹴りがあなたの美しい鼻っ面に当たってしまったのね!」
マアンがカダミーの横で言った。
 マグギャランは氷の上を匍匐前進で這って逃げていた。
「先にあの魔術師を始末しないカダミー」
マアンが入り口付近で転がっているコロンを見ながら言った。
 「それは、名案だよマアン。君のスピン・キック一発で死にそうな、ひ弱な小娘だ」
カダミーが言った。
「いくよマアン」
 「任せてカダミー」
鼻血を垂らしたカダミーとマアンは再び手を繋いで氷の上を滑り始めた。
 コロンは、まだ氷の上を背中で滑っていた。
不味い、コロンでは奴等の蹴りを一発でも食らったら即死は間違いはない。
だが、コロンにも話は聞こえていたようだ。亀のように氷上でバタバタと手足を動かし始めた。
 そして、腹這いになったコロンは杖の先端に幾つもの小さいライターの魔術で作った火を集めて火の玉の小さい奴を作った。それを氷の表面に近づけて氷を溶かし始めた。火の玉が杖から離れて飛んでいった。いや、飛んでいったのではない。氷を溶かしながらコロンの回りに円を描いた。
「ああっ、何、この火の玉は?」
マアンが火の玉の前で止まりながら言った。
「何か変だよマアン。魔術師の火の玉にしては動きが変だ。こんな動きをするはずはない」
 コロンは背中で氷の床を滑ったまま自分の回りに火の玉を持ってきた。
そして魔術の杖で氷の床をひっぱたいた。
 すると、火の玉が二つに分かれた。
そしてカダミーとマアンを追いかけ始めた。
「ちょっと、この火の玉は何なの?私を追ってくるわよ」
 マアンが逃げながら言った。
 「いや、ボクの方も追ってきている」
 カダミーが火の玉から逃げながら言った。
「あれをやるわよカダミー」
マアンが言った。
 「そうさ、あれをやるよマアン」
 カダミーが言った。
カダミーとマアンは近づいていって手を握りあった。
「ワン・ツー」
カダミーとマアンはステップを踏んでコロンの火の玉から逃れていった。だが、コロンの火の玉はカダミーとマアンの回りをグルグルと回っていた。
スカイはマグギャランに合図をした。
 マグギャランは何となく判ったようだ。カダミーとマアンの前の方から近づいていった。
 スカイはタイミングを見計らっていた。
 カダミーとマアンの後ろから左の膝を付いてゆっくりと滑って行っていた。
カダミーとマアンは手を繋いでステップを踏んでコロンの火の玉を避けていた。
スカイはカダミーとマアンの背後から忍び寄っていった。
 よし、まだ気付かれていねぇ。
 マグギャランは剣を抜いてカダミーとマアンの正面から近づいていった。
「なんだい、彼は、この、氷の上で剣を振るえるとでも思っているのかいマアン」
 カダミーは足を振り上げながら言った。
 「甘いわよ、私達のステップ蹴りで蹴り殺して上げましょう。剣など、この氷上の上では何の役にも立たないことを教えて差し上げてよ」
マアンが、コロンの火の玉をステップで避けながら言った。
マグギャランは剣を斜めに構えた。
 そして…スカイは。
 「おりゃ!この野郎!」
 スカイはカダミーとマアンの足首を掴んで引っ張った。
コロンも判っていたようだ。火の玉がスカイを避けて動いた。
 空中に飛び跳ねながらステップを踏んでいたカダミーとマアンが氷の上に、すっころんだ。
「痛っ!」
カダミーとマアンが同時に声を上げた。
 コロンの火の玉はカダミーとマアンから離れた。
 「何?いつの間に背後から忍び寄った」
カダミーが俯せに倒れたままスカイを見ながら言った。
「こちとら七歳の頃から冒険屋を、やっているんだ。簡単に気配を読まれるかよ」
スカイは言った。
「やったぞスカイ。一気に形勢逆転だなアイシー・ダンサーズ。動くと切る」
マグギャランが剣を突きつけながら言った。
「ふっふっふっ。それで勝ったつもりかい」
カダミーが言った。
「そうよ、私達はダンジョン・ストーカーズというプロスポーツの殺人アスリートよ」
マアンが言った。
 「ふむ、剣を突きつけられたんだ、素直に降伏して、オレ達を通すんだな」
 マグギャランが言った。
「甘いわよ!エビ蹴り!」
 マアンが叫びながらエビ反りになってスケート靴の刃でマグギャランの剣を跳ね飛ばした。スカイの掴んでいる足とは反対の左足で蹴飛ばしたのだ。すごい柔軟性だった。
 「そうさ、甘いのだよ!トオ!」
 カダミーが足を回転させてスカイを弾き飛ばした。
 カダミーは床運動の様に手を氷の上に付いて回転を開始した。
マアンもスカイの左手首をスケート靴で叩いて振り解き、低い姿勢から床運動の回転を開始した。
 そして2人とも立ち上がった。
「それじゃ、行くよマアン」
 「任せてカダミー」
カダミーがマアンを空中に放り上げようとした。
 「おい、ちょっと待て、何で女が攻撃するんだ」
スカイがカダミーとマアンに言った。
 二人の動きが止まった。
「それは決まっているじゃないかマアン」
 カダミーが言った。
「この氷上舞闘流スベラバではリンクの花である女性が常に敵を攻撃をするのよ」
マアンが言った。
 「それって何か間違ってねぇか」
 スカイは腕を組んで言った。
 「どこが間違っているというの」
 マアンが氷の上に膝を付いているスカイに向かって両手を腰に当てて、腰を折りながら言った。
 「そうだよ、スベラバにオレたちは青春を賭けて打ち込んでいるんだ侮辱することは許さないよ」
カダミーが胸を張っていった。
「よく考えて見ろよ。普通は男が危険な事をやるんじゃねぇの。敵を攻撃したりするのは男の仕事じゃねぇのか?」
スカイは言った。
 「確かに、そうだ。普通は男が危険な仕事をして、女は家で家事と育児に励む物だよ。マアン、何で君は、そうしないのかね」
 カダミーが言った。
 「なんて、古くさい男尊女卑主義者なのカダミー!最低よ!」
マアンが金切り声のような叫び声を上げた。
そしてマアンがカダミーの右頬を張った。
カダミーが驚愕した顔をした。
「オレを、ぶったね!」
 カダミーが頬を押さえながら右手でマアンを突き飛ばした。
「何さ!ずっとペアを組んできたけれど、あなたが男尊女卑主義者だったなんて騙して居たのね!」
「騙して、なんかいないさ!君は最初から、スベラバのパートナーでしかないのさ。筋肉ムキムキの殺人アスリートの君が女という性別に見えるとでも思うのかね」