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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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「俺の剣術はボルコ流十本剣だ。名前の通り十本の剣と十流派の剣術を使う。十本の剣の一本、一本が一つの流派の皆伝技に対応している。数が増えるに従って強さが上がっていく。だが、お前の腕では、最後の十本剣まで見ることは出来ないだろう。大体、二の剣どまりの腕と見た」
ラメゲは肩を揺すりながら言った。
 「所詮は冥府魔境に墜ちた邪剣ではないか。完成された気品と威圧する風格を有する。我が剣術ユニコーン流の敵ではない」
 マグギャランは剣を振りかぶったまま言った。
「一の剣を抜こう。トンカチ頭蓋殴殺四肢切断流剣術と、この流派で使われるハンマーソードだ」
 ラメゲは背中から剣を一本抜いた。見た目は普通のロングソードだ。だが剣の先端には確かにハンマーソードと言うだけあって小振りの金槌が申し訳程度に付いている。
「馬鹿な。剣という武器は完成された武器だ。おかしな細工をして金槌を剣の先端に付けたからと言って強くなるわけではない」
 マグギャランはハンマーソードを見ながら言った。
「かったるいが説明しよう。トンカチ頭蓋殴殺四肢切断流は、夫を娶っては家庭内暴力でトンカチを使って殴り殺し包丁でバラバラに切断して料理にして客に振る舞って食わせていた、ママ・ザ・トンカチが伝説では三十人目の夫を殴り殺しながら開眼した流派だ。トンカチと包丁を一つの武器として合わせることにより、トンカチの殴打力と包丁の切断力の二つを兼ね備えた剣術へと昇華された。このハンマーソードを発明したママ・ザ・トンカチは、開眼して以降ますます夫を娶ってはハンマーソードで殴って殺して料理にしていたらしい。現在ママ・ザ・トンカチが伝書と共に残した人肉料理のレシピは失伝している。この流派は肩の使い方に極意があり。「抜け落ちの肩」を使うことを持って相手を無力化する体術をも兼ね備える」
ラメゲが、かったるそうに腰を曲げたまま剣を上段に振りかぶった。
「ふん、笑止千万。上段とは勝負を捨てたなラメゲ・ボルコ」
 マグギャランは構えたままジリジリと間合いを詰めていった。
 「何だよ。虚仮威しのハッタリ勝負かよ。オマエ等喋ってないで、さっさと戦えよ」
 スカイは腕を組んで見ながら言った。
 「名乗り合いは暗黒王国タビヲンの一騎打ちの習いだ、かったるいが仕方無いだろう」
 ラメゲがスカイの方を見て言った。
 「これは剣に己の人生をかける男達の気高くも熱い真剣勝負の世界なのだスカイ。お前は介添人として、しっかり成り行きを見ていろ」
マグギャランは移動しながら斜めに構えた剣から、斬撃をラメゲの胴体目がけて打ち下ろした。
 だが、ラメゲは腰を落として身体を開いて上段から剣の先端のトンカチでマグギャランの剣を撃ち落とした。
 動揺した顔で飛び退くマグギャラン。
 「余りにも無造作に胴を狙いすぎたか。だが我がユニコーン流の分は突きにあり。スピンドル・スラスト(紡錘回転突き)の極意こそが我がユニコーン流の真骨頂」
 マグギャランは、また虚仮威しを言った、とスカイは見ていた。
 大丈夫かよオイ。
 マグギャランは、意を決し突き主体に攻撃を切り替えてラメゲに連続して突きを打ち込んでいく。だが、ラメゲはハンマーソードの先端の金槌で巧みにマグギャランの突きの軌道を殺していく。
 マグギャランのロングソードの突きの軌道がハンマーソードの先端に付いたトンカチの丸まった形状に滑って逸らされていくのだ。
十数合も撃ち合ったか。だが未だ、双方決定打となる攻撃は出ていなかった。
「まあ、コモンの剣士にしてはやる方かな。お前弱くは無いよ。それでは皆伝技を出してやるか」
 ラメゲは欠伸をしながら言った。
どうやらクスリが効いているようだ。
 睡眠薬を飲んでから決闘をする奴をスカイは初めて見た。
「欠伸などする余裕があるか!」
 マグギャランは突きの角度を変化させて連続して撃ち込みながら叫んだ。
だがラメゲは、欠伸をしながら無造作にハンマーソードの金槌の先端で突きを跳ね上げた。そして前へ出ながら金槌の首でマグギャランの剣を引っかけながらハンマーソードを振り上げた。マグギャランの腕が上がった。
「何?」
右手の剣を手放して、左手で逆手に剣の柄を持って引き抜いて飛び離れるマグギャラン。
ハンマーソードを回転させてマグギャランの居た場所に振り下ろしているラメゲ。
「一の剣ハンマーソードの「抜け落ちの肩」を使った皆伝技「つるんと回転スイカ割り」をかわしたか。まあ誉めてやるよ。だが、今のは、お前の剣術の技じゃ無いだろう。咄嗟の判断だ。訂正する、お前は一の剣止まりの腕だ。俺は型どおりの動きしかしていない」
ラメゲが背中の鞘にハンマーソードをしまいながら言った。
「剣を跳ね飛ばされる所だったな」
 マグギャランは剣を左手から右手に持ち直した。そして左手で胸を撫で下ろした。
「二の剣はバタン暗殺流剣術と、そこで使われる四枚刃剣だ」
ラメゲは四枚刃剣を抜いた。それは変な剣であった。柄は普通だが、刀身の半分ぐらいまでが機械の様な四つの筒で盛り上がっていた。名前通り刀身には四つの刃がプラスドライバーの先端のように外を向いて付いている。どちらかと言えば金棒に似ていた。そしてラメゲは、四枚刃剣の柄に付いているリングとピンを抜いた。だがリングとピンは細いチェーンで刀身に繋がっていた。
 スカイはバタンの名前を聞いたときビビッた。悪名高いコモンの暗殺者ギルドに登録している有名な暗殺者集団であった。そして、その凶器は……
 「オイ!マグギャラン!その剣には絶対細工がして在るぞ!バタンは全身に武器を仕込む暗殺者達だ!そして奴等はカラクリ武器や毒殺を、こよなく好む!」
スカイはマグギャランに叫んだ。
バタンと言えば変則的な卑怯な戦い方で人殺しを請け負うことで有名な連中だ。バタンの剣術が、まともなはずはなかった。
「あまりバラすなよ」
 ラメゲが四枚刃剣を振りかざしてマグギャランに突進しながら言った。
マグギャランは横に跳んで横殴りの一撃をかわした。
 スカイは嫌な予感がしていた。
そしてバタンの凶器を思い出した。
たしか、その中に凶悪な奴があった。
アレは……
 「それはバネナイフだ!バネナイフのバカデカイ奴だ!」
スカイはマグギャランに叫んだ。
 「何?バネナイフだと?何だそれは!」
 マグギャランはラメゲの振りかぶった横殴りの斬撃をかわしながら叫び返した。
横にかわして体勢を崩していたマグギャラン。
 「こういう武器だ」
体勢を立て直そうとするマグギャランに向かってラメゲの四枚刃剣が向けられた。
 案の上、指が引き金に掛かろうとしている。
さっきまでは引き金を、伸ばした二本指で隠していたのだ。スカイはラメゲに向かってナイフを抜いて飛びかかった。
ラメゲは引き金を引いた。
四枚刃剣から一枚の刃がマグギャランに向かって撃ち出された。
 マグギャランが立ち上がった所に、飛んできた刃が腹に突き刺さった。
 そしてマグギャランは刃が腹に突き刺さったまま倒れた。
「おい、これは決闘だろ」