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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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ルル・ガーテンが言った。
「判らねぇよコロンが店広げて何かやっているが、俺は、さっぱり判らねぇ。コロンは薬や魔術の薬の専門家じゃないんだ。本業は魔術師見習いなんだ」
 スカイは言った。
「猛毒バタリの解毒剤と腹痛止めが欲しいんですけどありますか」
ルル・ガーテンが言った。
コロンは首を傾げていた。
 「バタリ?なんで、あんな猛毒の解毒剤が居るんだ」
 スカイは言った。
 バタリなんか使うのか?
「第五パーティ「悪人同盟」のゴフ・ハベにウチのパーティのニャコちゃんが猛毒バタリを盛られたのです。気化したバタリを吸い込んでしまって、こんなに風になったんです」
ルル・ガーテンが後ろを見ながら言った。
 そう言えば第五パーティ「悪人同盟」のゴフ・ハベは毒を口に盛りつける毒殺魔だった。
そしてゴフ・ハベがバタリを使う事を思いだした。だが、なんで、奴等が得意の武器を持って居るんだ。押収されているだろう。
眼鏡を掛けた女が猫耳人を背負っていた。
 そしてコロンは猛然と巾着袋を開けて捜し始めた。
コロン5センチぐらいの大きさの小瓶を幾つも取りだした。そしてスポイトを取りだして。空の瓶に移していた。
「何でコロンが下痢止めなんか持って居るんだよ」
スカイはコロンを見ながら言った。
 「腹痛止めです」
 黒いマントを肩から羽織ったヤマト人の娘が恐い顔でスカイを睨んでいた。赤いスカートが破れて縫った跡がある。
 「何だよ、そんな目で睨むことはねぇだろう」
スカイは目をそらした。
コロンが二十センチぐらいあるデカイ傷バンを取りだした。
「くれるの?」
 眼鏡の娘にコロンは頷いて渡した。



メルプルは、コロンと呼ばれた魔術師が
何をやっているのかが判った。メルプルは魔法の薬の調合が得意なのだ。だが、コロンという魔術師はダンジョンの中で薬の調合を手早く行っているようであった。どうやら薬の原材料となる薬品を何種類も用意して調合しているようだった。ダンジョンの中で薬品の製造をするとは考えつかなかった。普通の薬だけでなく魔術の薬や植物は作るのに時間が掛かるのだ。一生懸命作って貯めていたストックが今日は、どばーっと使って無くなってしまった。
 調合する様子を見ていたけれど、コロンという魔術師は手慣れているようだった。メルプルの三倍以上の速さで手早く調合を行っていた。
そのときスカイがメルプルに向かっていった。
 「何で、メルプルは、こんなダンジョン競技に参加して居るんだよ」
 スカイは言った。
 メルプルは困った。
 何て言えば良いんだろう。
回りにはルル達もいる。 
 困った。
 スカイも気を利かせてくれればいいのに。
 「あんた達知り合いなの」
ウロンが言った。
 なんで余計な突っ込みを入れるの。
みんなスカイとメルプルを見た。
 「そうだ、子供の頃に一緒に遊んだことがある」
スカイが言った。
「それなのに知らないの?メルプルは、ダンジョニアン男爵の娘よ」
 ウロンが言った。
スカイの顔が硬直した。
当然と言えば当然の反応かな。
「メルプルはブルーリーフ町の町娘だ。平民の娘だ。貴族のはずなんかない」
 スカイは硬直した顔で言った。
 なんだ、スカイは今まで何も知らなかったんだ。
少しは有名なのに。森人族の血が入っている男爵の娘なんて、変わり者の貴族が多いヒマージ王国でも珍しいから。
そう言えばスカイは隣のミドルン王国出身だし知らなくても、おかしくはないか。
メルプルは思った。
「町娘と言えば、このトラップシティの出身なのだから、そうだろうけれど、メルプルは貴族の娘よ。ダンジョニアン男爵の実の娘なの。でも父親のダンジョニアン男爵が、どうしても会ってくれないから。このダンジョン競技に参加して会おうとしているの。表彰式には顔を出すからね」
ウロンが言った。
 そう、どうせ判る事だからね。
スカイ達と私達が、このダンジョン競技に最後まで生きていられたらだけど。
 でも口は勝手に動き出した。
 「きっと、側近達が悪いのよ。パパがあんな風になったのは、シキールみたいな奴等がパパの回りでパパを操って、おかしくしているのよ。こんなダンジョンゲームをするパパじゃない!」
メルプルは叫びながら言った。
そうだ。
 こんな事をする筈はない。
 メルプルは涙を流した。
 メルプルのパパの迷宮競技は、こんな物ではなかったのだ…



「あ、メルプル泣いちゃった」
 ハンカチを取り出してメルプルに眼鏡を掛けた娘が渡して肩を抱いた。そのハンカチを見てスカイはビビッた。フラクター選帝国のマークが付いているハンカチだ。
 前にロザ姉ちゃんが冒険屋を雇ってスカイを捜させて捕まって締め上げられた時に同じハンカチを使っていたからだ。
大体事情は判ったが。
 見てらんねぇな。
 スカイはマグギャランの方を見た。
 だが、マグギャランは髪型を鏡でチェックしていた。そういや、なんか、アイツが好きなブランドの香水「ゴロジ」の匂いが、しやがる。これはアイツが本命狙いの時に使う香水だ。
「あの、そこの悩ましい仕草の美人。私が何か、お役に立つことが在るでしょうか」
マグギャランは、ナンパを、この状況下で開始した。
どう見ても、他の女達を連れている引率者か何かだろうが。
 ナンパなんか、できっこないだろう。
 バカなのか?
それとも自爆癖があるのか。
 そういや少しマゾっぽいところが在るんだよなコイツ。
スカイは金髪の女に近づいていくマグギャランを見ながら思った。
「話しかけないでくれ」
 金髪の女は言った。
「私は無所属騎士のマグギャランという者に、ござります。もしダンジョンで、お困りなら、わたくしめが何なりと働きましょう」
東方人の娘から剣の鍔が鳴る音がした。
「話しかけないでくれと言っている。私に構うな!」
 金髪の女は頭を押さえたまま叫ぶように言った。
「いや、これは失礼をレディ。それではわたくしめは自分の居場所へ戻りましょう」
 マグギャランは、すごすごと戻ってきた。
「彼女に何か在ったようだ。今は落とせるチャンスではないな」
 マグギャランはスカイの、そばで腕を組んで考え込んでいる顔で言った。
 その時、殺気が膨れ上がった。
 確かに殺気と呼べるような圧力がコロンを挟んで押し寄せてきたのだ。
無言の圧力であった。
マグギャランも気が付いて青くなっている。
数分間の間、無茶苦茶気まずい無言の時間が過ぎていった。スカイはダンジョンの壁を見ていた。
 ああ、しんどいな。
 コロンは突然顔を上げてルル・ガーテンに調合した薬を渡した。
 「え、これ私の?」
 ルル・ガーテンは青ざめた顔のまま言った。
 コロンが顔を赤くして無言で頷いていた。
 「それじゃ飲んでみる…」
ルル・ガーテンがコロンの調合した薬を飲んだ。
暫く、みんな見ていた。
コロンは、せっせと調合を行っていた。
 「あれ?もう直った」