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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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メンソール女が、電光系の網のような魔術を使おうとしている途中でワニが飛びかかって行った。メンソール女は避けた。電光系の魔術は完成する途中で失敗し、部屋中に電光の破片のような物が飛び散った。
スカイは避けたつもりだったが、ビリッとする電光の破片が飛んできて右腕に当たった。
 「イテェな」
 スカイは腕をさすった。
「あれはファンブルだな。ワイズメンにも、ワニにも相当なダメージが行っている筈だ」
マグギャランは足を押さえて言った。
「よし、マグギャラン。一気に駆けて行くぞ」
 「うむ、判ったぞスカイ。でも迂回するぞ。正面突破は無謀だ」
 「もちろんだ。右から行く」
 スカイ達は駆けだした。
 ワイズメン達と戦っている4匹のワニとコロンが口から火を吹いて追い立てている一匹のワニ以外に障害は無かった。ワニが、こっちの方に向かってくるかとも思ったが、そういう事は無かった。
 スカイ達は迂回して、バニーガールが居る、柱時計の配布場所に辿り着いた。
 「第7パーティ。柱時計を受け取りに来た」
スカイはカウンターの前で言った。
 「7番の柱時計を持っていって下さい」
 頭にアンテナが生えたバニーガールが言った。
「持って行くぞスカイ、俺が前を持つ」
 「おうよ。よっこらせっと」
 スカイと、マグギャランは7と書かれた柱時計を肩の上に持ち上げた。
「よし、戻るぞ」
 スカイ達は、2人で柱時計を抱えて再び、氷の上に出た。
 今度は同じルートを左から迂回していった。 そのとき、信じられない光景が目の前で起きた。ワイズメン達の真ん中の部分の氷が割れた。そして氷が跳ね上がった。氷が張った水面の下から首輪の付いたワニが飛び出してきたのだ。 
そのワニの目の前にはゴトル・メドラが居た。ゴトル・メドラは近くに居たロイド眼鏡を掛けた魔術師を引っ張ってワニの方へ押しやった。
 ロイド眼鏡を掛けた魔術師はワニに噛みつかれた。そしてワニは血しぶきを撒き散らしてグルグルと回転を開始した。
 「何やって居るんだよアイツ等!」
 スカイは横を見ながら言った。
 「見てはいかん、前を向いて進むのだスカイ。後ろを見てはいかんのだ」
 マグギャランは言った。
スカイ達は柱時計を担いで氷の上からダンジョンの床に辿り着いた。
 「ひぃっく。上出来だぞ。このヤロウ共」
口から火を吐くのを止めたコロンは言った。



「ああ、哀れ。魔術都市エターナルの教授とも在ろう御方、シバン・ゴンレー氏が、死亡してしまいました。彼の人生とは何だったのでしょう。彼は、勉強して、勉強して、勉強しまくって、魔術都市エターナルの教授になったのです。それが、その膨大な努力によって得た最後が、彼のゴールとは、なんと同僚の女教授ゴトル・メドラに突き飛ばされてワニに食べられる事だったのです!皮肉です。アイロニーです。ワニに、がぶりと食べられる何という笑える死に方でしょう。インテリでも、そうでない人にも等しく万人に死は訪れるのです。何と無慈悲な現実なのでは無いのでしょうか。だから、皆さん、しんみりと凹まないでドンドン、ジャラジャラと賭けてしまいましょう。賭こそは残酷な現実から目を背けて幸福な時間を過ごせる唯一無二の時間を与えてくれるのです。どうせ死ぬなら遊びたい放題遊んじゃいましょう!」
シキールは言った。
シー老師は、余りの、酷い言葉に耳を塞ぎたい衝動に駆られた。だがスタジアムの中は歓声や口笛やホーンなどがならされ、エターナルの魔術師の死を喜んでいた。
 隣の、ギャンブラーYはポテト・チップスを食べて拍手していた。



「ウロンちゃん、トイレは、どこに在るの」
ルルが言った。
「あのねルル、今、重い本、持って居るんだから。余計な事は言わないの」
 ウロンが言った。
メルプルも百科事典を5冊持っていた。とても重たかった。
楚宇那は10冊抱えて、ウロンも9冊抱えて、ニャコは15冊抱えていた。サファお姉さんは11冊抱えていた。
 「取りあえず、私達は、早く、この重い本を持ってルーレットの前に戻らなくては駄目よ」
楚宇那が言った。



「ああっ!そこの美女!あなたの、お名前は!」
 マグギャランは落とし穴の向こうの道を歩いている第五パーティー「悪人同盟」を見て叫んだ。
スカイは五人いるパーティーの真ん中にいる女だと一発で判った。他に女はいなかったが。その女は長い黒髪に白い足下まであるゆったりとした、変わった服を着ていた。
 確かに小顔で、すごい美人だ。
腰まである黒いストレートヘアーをしている。顔は白く目は大きい。
 だが、どことなく獣のような感じがする。
「ひっく、すごい美人だな、ひっく」
 コロンは、しゃっくりを、しながら言った。
 スカイは新聞で見た顔を思い出した。そしてシキールの言った名前を思いだした。
「バカ、あの女は、殺人宗教「殺しの秘文字教」の邪神官だ。新聞に載っていただろう。
殺しまくれとか、殺す事が愛だとか言って、赤ん坊を殺したり、人間が、みんな死ぬと争いが無くなり永遠の平和が訪れるとか、信者同士で殺し合いをさせたりする、アブネー、カルト宗教のサイコ女だぞ。確か名前はサシシ・ラーキだ」
スカイはマグギャランの腕をひっぱたいた。
「何?あのサシシ・ラーキか?生の方が美人だ。新聞の似顔絵と全然違うじゃないか。新聞ではもっと不細工だったぞ。美しい。サシシさーん。俺も信者にして!」
マグギャランは投げキッスをして手を振って叫んだ。
黒髪の美女、サシシ・ラーキは笑みを浮かべて立ち去った。回りにはゴッツイ顔のヒゲ親父に、禿頭にヒゲの生えた大男が菓子パンの入ったパンの籠を持って、顔に傷のある男などゴッツイ奴ばかりだ。線の細い男もいる。皆、マグギャランにガンを飛ばしていた。
 「サシシさん大丈夫かな。あんな犯罪者丸出しの悪党面の連中と一緒にいて。あんなに清楚なのに。あー、きっと、あの悪党面の男達に襲われて、あんな事や、あんなイケナイ事をダンジョンの暗がりで、されてしまうに違いない!いやだ!いや、もうされているかもしれない!それが、あの憂いを秘めたミステリアスな微笑みの理由なのかも!ああっ!胸が痛い!俺がエスコートしなければ!だって俺って騎士だし!」
マグギャランは頭の髪の毛をクシャクシャとかき乱していた。
 だが、スカイが見る限り、サシシ・ラーキは男達を従えている様に見えた。何故なら、サシシ・ラーキを囲むように男達が居るからだ。そして顔は幸せそうだった。何故なんだろうか?
 「取りあえず、本マグロを捜すぞ」
スカイはサシシ・ラーキに手を振っている
マグギャランに言った。



「うううっ。あちゃしの頭が。ひいっく。頭が痛い。ひぃぃっく!」
 コロンが頭を押さえて、うずくまった。
本マグロを担いでいたスカイとマグギャランは立ち止まった。
 「二日酔いだな。小人の肝臓殺しは二日酔いが、すごいのだ。オレも掛かった事がある。この世の物とは思えぬ頭痛が頭に走るのだ」
 マグギャランが言った。