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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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マグギャランは言った。



「何だ、この水だらけの部屋は」
 スカイは迷宮に不自然に出来た水たまりを見ていた。スカイ達の行く手を遮って二十メートル四方ぐらいの水浸しの空間が在った。
 「何かが居るぞ。スカイ」
 マグギャランが言った。
確かにピンク色の水の中に5、6メートルぐらいの何かが動いていた。
 「ああっ」
 スカイは言った。
 「あれはワニだ」
 マグギャランは言った。
確かに向こうの方で、首輪に鎖の付いたワニが浮かび上がってきた。
突然、スカイ達の足下からワニが飛び出してきた。
 「うわっ、あぶねぇ!」
 スカイは足を引っ込めた。
スカイの足があった場所をワニの巨大な牙の生えた口が薙ぎ払っていた。
 だが、首に繋がれている鎖のせいで、スカイを追う事は出来なかった。
 マグギャランが剣の抜き打ちで切りつけた。ワニが逃げていった。
 「浅かったか」
 マグギャランが言った。
 「ひぃく。ワニか。いきなりファイアー!」
コロンが口から火を吐いた。
 5メートルぐらい炎が伸びていき浮かんでいる首輪と鎖の付いたワニに直撃した。ワニはピンク色の水の中に消えていった。
「どうするかスカイ。柱時計は、この水たまりの向こうに在るぞ」
 マグギャランが言った。
確かにマグギャランの言うとおり、柱時計は、このプールの様な部屋の向こうに鉄格子で囲まれたブースに管理するバニーガールが居て沢山置いてあった。
 「ふざけやがって、どうやって、取りに行けって言うんだよ」
 スカイは言った。
「ひぃっく。ちょっと待てよ杖で深さを測ってみるぞ」
 コロンが前に出てきて杖をピンク色の水の中に入れた。百八十?近くある杖の三分の一ぐらいが沈んだ。あまり深くはないようだった。
「確かに深くは無い。だが、このピンク色の水でワニの居場所が全く分からない」
 マグギャランは言った。
 「迂闊に水の中に入っていく訳には行かないぜ」
スカイは言った。
 「ああ、そうだぞ、スカイ」
マグギャランは言った。
  「あら、また、会ったわね」
 後から声がした。
 メンソール女だった。それとワイズメンのメンバー達が言った。
「早くどきなさい」
 二十代中頃の女が手でスカイ達を押しのけた。
「ひぃっく。何するか。あちゃし達が先に居るんだぞ」
 コロンは前に出てきて二十代中頃の女に体当たりしながら言った。
 「ぷわっ!酒臭い。この子酒飲んでいる」
二十代中頃の女が、ぶつかってきたコロンを押しのけた。
コロンが更にジャンプして、ぶつかっていった。
 「おい、オマエ等、ここにはワニが居るんだよ」
 スカイは言った。
 「ワニだろうと何だろうと、魔術の力で私達は先へ進んでいくの。問題なんか無いわけ、判る、頭よ、頭。頭の善し悪しが全てなのよ」
メンソール女が。メンソールの灰をダンジョンの床に落としながら言った。
 「何、言っているんだよ。グド・ボーバーって奴は死んだだろ」
 スカイは言った。
 「あれは計算ミスよ」
メンソール女が言った。
 「それでは、我々は、この部屋の水を凍らせて渡ります」
 ゴトル・メドラが言った。
 ゴトル・メドラ達、五人が手の平を上に向けた。挙げられた手の平に氷の塊が姿を現し始めた。
「ひぃっく。猪口才な氷の魔法なんぞ作りおってからに。魔法と言えば炎の魔法に決まっているだろう。ひぃっく」
 コロンは言った。
 「あなた。いい加減に邪魔しないで」
コロンが、まだ体当たりしている、二十代中頃の女も氷の塊を手の平に作りだしていた。
 「フリーズ・ドライ・ボールか」
 マグギャランが言った。
 スカイも前にエターナルの考古学者達に雇われたときに、同じ氷の魔術を見たことが在った。
ゴトル・メドラ達はフリーズ・ドライ・ボールをピンク色のプール目がけて投げつけた。
 氷の塊は、ピンク色の水に触れると広がり、プールが凍り始めた。
 そしてプールは氷で覆われた。
 「おお、何か、今度は、上手く行っているじゃねぇか」
 スカイは言った。
 「当然よ。これがエターナルの魔術師の実力なのよ」
 メンソール女が髪を、かき上げて言った。
「それでは、柱時計を取りに行きましょう」
ゴトル・メドラが言った。
 ワイズメンの五人は氷で覆われたプールの上を歩いていった。
 「どうするかスカイ。この状況的には、俺達が、この氷の上を歩いて柱時計を取りに行くと、ダンジョン競技のルールに、依るところの他のパーティの罠解除に該当するのではないか」
マグギャランは言った。
 「気にするな偶然の事故だ。俺達は、この氷の上を歩いて柱時計を取りに行く」
 スカイは言った。
 「そうか。そうだよな。それじゃ取りに行くぞスカイ」
 マグギャランは言った。
 「おうよ」
 スカイは氷の上に足を踏み出した。
「ひぃっく。お前等しっかり働けよ。あちゃしは、ここで。ひぃっく。監督しておいてやる。ひぃっく」
コロンは入り口の所で、しゃっくりしながら突っ立っていた。
「あんな、コロン見たの初めてだ」
 スカイは言った。
 「スカイ。酔っ払いの、たわごとだ。真に受けるな」
 マグギャランは首を振りながら言った。
 歩いていくと氷は厚いようでスカイの体重を十分支えていた。
 「やあ、「ワイズメン」の、みんな。僕だよシキールだ。君達は、上手いこと氷を張ってワニ達の攻撃をかわしたつもりだろうけれど。そうそう、「ザ・ワイドハート」の、みんなも棚ぼた作戦でセコイ事しているみたいだね。でも、こんな簡単に話が運んだら面白く無いじゃないかな。それで、君達にプレゼントをあげるね。ワニの詰め合わせセット5匹だよ」
 シキールが言い終わる前に、天井が開いてワニが降ってきた。
マグギャランの真上に一匹が落ちてきた。
「上だ!」
 スカイがマグギャランの腕を引っ張った。
 マグギャランも気が付いて左に飛んで避けた。
 「すまんぞスカイ!」
 マグギャランは体勢を立て直しながら腰の剣を抜いた。
 スカイもナイフを抜いた。
 六、七メートルもある巨大なワニが、スカイ達に向かって、口を大きく開いて威嚇をした。
「よく見ろスカイ。ワニが落ちた場所の氷が割れて居るぞ」
 マグギャランの言うとおりだった。
 氷にヒビが入っていた。
「あちゃしに任せろ!ひぃっく!がおおおおおおおお!」
 コロンが、おかしな叫び声と共に口からワニ目がけて炎を吐いた。
 スカイ達の近くに落ちたワニが逃げ出した。
 「おい、マグギャラン。速攻で柱時計を回収して帰るぞ」
 スカイは駆けだした。
「確かに、それが一番良いのだが…」
 マグギャランも付いてきた。
 だが、スカイ達の前方で4匹のワニがエターナルの魔術師達と戦っていた。
 それは、なかなか凄まじい激闘だった。
 ワイズメンの魔術師達は、雷光や火炎などの魔術を駆使してワニ達と戦っていた。