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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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「何、オカマバーのオカマみたいな化粧して居るんだよ。はみだしてんぞ」
 マグギャランは一心不乱にハンカチで口紅の文字を拭っては口に当てている。
「何がオカマだ。これは男のロマンなんだ」
マグギャランが荒い鼻息で言った。
 「ふぃやあっふ」
 コロンが変な声を上げた。
「何だ」
 スカイは後ろを向いた。
コロンは顔を真っ赤にしていた。
 「うぃっ、ひっく。もっと無いのコレ」
 コロンが突然饒舌になった。
そしてスカイの非常用の気付け薬である酒の入ったジェラルミン製のフラスコを持って振っていた。
 「酒だぞそれは。小人の肝臓殺しと呼ばれるアルコール度数が九十八パーセントもある酷い酒だ。滋養強壮サプリメントはもっと小さい鉄缶の奴だ。飲み物がサプリメントの筈無いだろう」
 スカイはコロンの飲んだ酒を見ながら言った。アレは酒の強い小人族でも度胸試しに飲む酷い酒だ。薬草のエキスとアルコールだけが入った蒸留酒だ。安くてアルコール度数が高いから薄めて気付け薬や消毒薬に使っていたのだ。
 マグギャランもコロンを見て言った。
「まさか小人の肝臓殺しを小瓶とはいえフラスコ一杯も飲んだのか?俺は小人族に飲み負けた事がある。アレはワンショット・グラスより小さい奴で飲み比べる奴だ。しかも後で凄い二日酔いが襲ってくる」
 「いきなりファイアー!」
 コロンが口を開けて火を噴き出した。
 マグギャランの顔が火に包まれた。
 「うおっ焦げた」
 マグギャランが顔の回りの火を払った。
火を吐いた?
 何で火を吐くんだ?
 「あちゃしは言っているのだ。もっとコレは無いのか?判っているのかスカイ!弟のくせに呼び捨てにしやがって!そうだ、あちゃしは怒っている!こんな殺人ゲームに、あちゃしを放り込みやがって!お前にも、いきなりファイアー!」
 コロンは口を開いて火炎を吐いた。
 スカイは横にジャンプして火炎を避けた。
 「あ、アブねぇ」
 スカイは床を転がって身構えた。
 「おい、あちゃしがリーダーだ。オマエ等ついて来いよ。ねぇ。コレないの?もっと無いの?」
 コロンはフラスコを振っていた。
「か、絡み酒か?いかん、髪型が」
マグギャランは手鏡をポケットから出して髪型をチェックしながら言った。
「ひっく。冷蔵庫には何が入っているのだ」
 コロンは、しゃっくりを始めて冷蔵庫に近づいていった。
「それ絶対毒だよ。食うなよコロン」
 スカイは言った。
「あちゃしが、そんな間抜けに見えるか」
コロンは言った。
「確かに、こんな見え透いた罠に掛かる奴は居ないよな」
 スカイは言った。
 「間抜けが居たから、口紅で警告を描いているに決まっているだろう。オマエ等もっと頭を使え。ひぃっく」
 コロンは言った。
 「なるほどな。だが、なぜ冷蔵庫の中を調べるんだ」
 マグギャランは皿を冷蔵庫に戻しながら言った。
「お前達は困っている人間を助けようとは思わないのか。ひぃっく」
 コロンは、しゃっくりをしながら冷蔵庫の中からケーキを取りだした。
「いやあ、こんな、見え透いた罠に掛かる奴は相当の間抜けだ。助けようも無いと思う」
 スカイは言った。
だがコロンはスカイを見た。
「スカイ。ロザ姉ちゃんの教えを忘れたのか。困った人は助けろと言っていただろう。ひっく。お前はロザ姉ちゃんの教えを無視して冒険屋になったのだな。ひっく。今まで、どれだけ悪さをしてきたんだ。この野郎は。ひっく」
コロンは、しゃっくりをしながら言った。
 「そ、そんな事ねぇよ。ロザ姉ちゃんは冒険屋に、なっちゃいけねぇなんて言っていねぇよ」
スカイは狼狽えた。
「スカイ。やっぱり家族で冒険屋をする物ではないな」
 マグギャランがスカイの肩に手を置いて首を振りながら言った。
 コロンは小さいリュックサックからカードをリングで束ねた物と革製の赤い筆箱と赤い革表紙の手帳を取りだした。
 そしてケーキに手をかざして取りだした万年筆で手帳に何かよく判らない化学式の記号を書き始めた。
そしてカードをバーッと、めくって止めた。
 「このケーキには商品名、ゴロピーという超強力下剤が、ひっく、入って居るのだ。正式にはルレタピロリ酸という薬品だ、ひっく」
 コロンはカードを、めくって確認しながら言った。
「結構変わった魔術は使えるようだなコロン。下剤を発見する魔術を使えるとは。もっと実用的な攻撃魔術の一つでも覚えておけ」
 マグギャランは言った。
 「それにしても、あのシキールの奴はナメまくっているな。煮えたぎる油の上に通した一本橋を渡らせたり、下剤入りのケーキを用意したり、参加者を何だと思って居るんだ。そう言えば、次の迷宮エリアは、どうなっているんだ」
 スカイは。ルール・ブックを取り外した。
「ひっく、次の迷宮エリアは、お使いゲームだ」
コロンがスカイから、ルール・ブックを、ひったくって読んで言った。
「十五分間のインターバルが終了です。第7パーティは扉を開けて第二迷宮ゾーンへ進んでいって下さい」
アナウンスがラッパ型のスピーカーから聞こえてきた。
「いくぞ、お前等。このヤロウ共」
 コロンはスカイとマグギャランを顎で促した。
 「どうするんだスカイ。コロンが、おかしくなったままだぞ」
 マグギャランが言った。
 「まあ酒だからな。じきにアルコールが抜けるだろう」
スカイは言った。
 「だが、少なく見積もっても迷宮競技の間中は、このままだぞ」
マグギャランは言った。
 「ひっく、おい、お前等。このヤロウ共。扉を開けろ」
 コロンが胸を張って言った。
 スカイ達は扉を開けた。
 扉を開けると目の前には頭にアンテナの生えたバニーガールが居た。そして、その脇には二メートルぐらいの大きさのルーレットが在った。ルーレットには、熱帯魚、タンス、一トンのバーベル……などがトレーダー語で書いてあった。
そして、辺りには2メートルぐらい在る巨大な本マグロや菓子パンが大量に入った一抱えあるバスケット、金魚鉢に入った熱帯魚などが置いてあった。
 そして、バニーガールの背後には鋼鉄の扉があった。
 「第7パーティですね」
 バニーガールが無感情な声で言った。
「おう、そうだよ」
 スカイは言った。
 「では、このルーレットを今から回します。ダンジョンの中に点在する貸し出し所から。ルーレットに書かれたアイテムを、持ってきて下さい。合計三回の貸し出しを行います。三回の借り物競技を全部クリアーすると、この扉が開いて第二チェックポイントに行けます。各パーティのスコアは後の電子掲示板に表示されています」
バニーガールが背後の鉄の扉を示した。
 「おい、スカイ見るのだ」
 マグギャランがスカイの肩を押して後を向いて指を差した。スカイ達が出てきた第一チェック・ポイントの扉の上にスコアが電子掲示板に記されていた。
 1から8までのパーティの番号の下に1、2と表示されていた。
 第一パーティ「ルルと仲間達」のスコアは1。
 第二パーティ「モンスターレイジ」のスコアは2。
 第三パーティ「戦斧隊」のスコアは1。