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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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 ルルはニコニコしながら冷蔵庫の中を覗いて巨大な骨の付いた肉の塊を皿ごと取りだした。
 「ルル。本当に大丈夫なの」
 楚宇那が聞いた。
 「え、全然平気だよ楚宇那ちゃん。楚宇那ちゃんも食べなよ」
 ルルは言った。
 「私は要らない。毒かもしれないから」
 楚宇那が青い顔で両手を振って言った。
 「あのケーキは絶対細工がしてあるわよ」
 ウロンが言った。
 「え、そんなの全然無いよ」
 ルルは言った。
「ルル、今すぐ吐き出しなさい」
 サファお姉さんが言った。
 「何で?」
 ルルは嫌そうな顔をして言った。
 「毒が入っている可能性が高いからよ」
 サファお姉さんが言った。
「え、全然平気だよ。う、ううううううう…」
 突然ルルが奇妙な声を上げて、お腹を押さえて倒れた。
 「ルル!」
 楚宇那が叫んだ。
 「ああっ、やっぱり毒だったんだ」
 メルプルは慌てた。
そしてカバンの中を探った。
「…ゃあ携帯電話で連絡を取ります。いやあ、第一チェックポイントの一位通過おめでとう「ルルと仲間達」の君達。君達は頑張っているようだね、でもアクシデントが起きたようじゃないか」
司会のシキールの声が聞こえてきた。
 第一チェックポイントの部屋にラッパ型のスピーカーが付いていた。そこからシキールの声が聞こえてきたようだった。
「毒を盛ったのねシキール」
 サファお姉さんが言った。
 「嫌だなぁ、毒なんか盛らないよ。ルル・ガーテンが食べたケーキには毒ではなくて超強力下剤が入っているんだ」
シキールが笑いを押し殺した声で言った。
 「トイレは何処なの…」
 ルルが弱々しい声で言った。
 「そんな物、在るわけ無いじゃないかルル・ガーテン君。スポーツの試合中にトイレに行けるはずが無いだろう。ダンジョン・ゲームは健全なプロ・スポーツなんだよ」
 シキールは言った。
「そ、そんな…」
 ルルは青い顔で言った。



スカイ達は鋼鉄の扉の前で立ち往生していた。
「あーあ。残念だね。君達は、三時間の制限時間以内に第一迷宮ゾーンをクリアー出来なかったようだね。毒ガスで死亡することになるよ。やっぱり、アンラッキー・セブンからスタートしたから、トラップの解除で時間が掛かりすぎたんだろうね。やはりペース配分が肝心なんだよ。まあ、やっぱりアンラッキー・セブンは、アンラッキー・セブンだったと言うことで、スタジアムの、みんなも納得してくれるかな」
 シキールの声が聞こえてきた。
「面倒だな。時間の遅れを取り戻すには、この鋼鉄の扉を開ける三つの鍵を捜す、お使いイベントには、もう付き合っていられないな。少しゆっくり、し過ぎたか。これではスパートが出来ん!」
 スカイは扉の鍵を調べながら言った。
鍵をスカイ達は二つ持っていた。
だが三時間のタイム・オーバーの時間が近づいてきていた。
「コロンが何かやっているぞ」
 マグギャランが後ろを向いて言った。
スカイも後ろを見た。
 コロンが脂汗を額に浮かべて杖を頭上に掲げていた。杖の先端を越えた頭上には炎の玉が浮かんでいる。ライターの魔術の小さい炎が次々と上に上がっていって炎の玉に集まっている。
 マグギャランがコロンを見ながら言った。
 「ファイアーボールの呪文のつもりなのか。だが、モンスター相手に使えるような直ぐに出る代物じゃないな」
 コロンが、出来上がった青白い色の火球を頭の上に作ったまま鋼鉄の扉に向かって近づいていき。
 火の玉を鋼鉄の扉に押し当てた。
 鋼鉄の扉が真っ赤になって青白い火花を出してドンドンと溶けていって人が通れるほどの穴が空いた。
 「おー、コロンもやれば出来るではないか」 マグギャランが言った。
コロンは杖に、しがみついて肩で荒い息をしていた。そして急に倒れた。
「おい、大丈夫か」
 スカイは言った。
「あんな、変な方法で火の玉を作ったんだ。倒れるのは当然だな。それにしても凄い威力だな十センチぐらい在る厚さの鋼鉄の扉が溶けて居るぞ」
 マグギャランは溶けた鉄の扉の縁に手を近づけながら言った。縁は赤く光っている。
「アチっ!」
 マグギャランは手を離した。
「それじゃ、俺が、おんぶしていくか。実の姉貴だし。仕方がねぇな」
 スカイは言った。
 「コロンは、お前の姉だったのか」
マグギャランが言った。
 「そうだ。悪いかよ」
 スカイはコロンを起こしながら言った。
「なんだ。お前の変な行動の訳が漸く判ったよ。お前のストライク・ゾーンにしては全然違うし。何で、こんな妙チキリンな小娘を構っているのか不思議に思っていたんだ。おまえも大変だな。どう見ても変わり者の姉を持って。それにしても凄い威力の炎の呪文だ。時間を掛けて作っただけの事は在る。これは攻撃魔術を跳ね返す為の分厚さを持った扉だ。どうなっているんだ?コロンは低レベル魔術師だろう?」
マグギャランが言った。
 「コロンの杖と呪文書を持ってくれ」
スカイは倒れたコロンをマグギャランに手伝って貰って背負いながら言った。
 「判った」
 コロンの杖と呪文書をマグギャランは持った。
スカイとマグギャランは扉に出来た大穴を潜った。
「どうやら。さっき落とし穴で渡ることが出来なかった場所に出たな。底を見たら魔術都市エターナルの魔術師が串刺しになって死んでいるだろう」
 マグギャランは串刺しになった第四パーティー「ワイズメン」の魔術師グド・ボーバーが死んでいる方を見て肩をすくめた。
スカイ達はチェックポイントに到達した。
扉を開けて中に入ると誰も居なかった。
「なんだコレは。「劇薬注意。食べたら死ぬ怒」だと?口紅で書いて在るな。口紅、まさか、あの第一パーティーの美女か?何と風流な。これはラブ・サインか?俺を誘っているのか?」
 周囲をキョロキョロと見て、壁に張り付いて爪先立ちになって、口紅の文字に唇を付けようとするマグギャランだった。だがギリギリの所で口紅の文字に唇が届かなかった。
スカイはコロンを椅子に座らせた。
そしてモニターを見た。タッチ・パネルをパチパチやって情報の収集を行った。
 「どうやらオレ達は最下位だな。現在8位だ。だがメンバーは欠落していないし上々かな。各パーティーはチェックポイントで十五分間の賭け券購入インターバルを行うらしいな」
 スカイはモニターを見ながらマグギャランに言った。
「冷蔵庫の中には何かが入っているぞスカイ。ケーキにマンモ肉にサイダーにコーラか。この矢印の意味は、これを食ったら死ぬと言うことなのか。俺へのラブ・サインでは無いのか。いや、そんなことはないよな、だが何か愛のドラマが始まらなければ嘘だろこれ。ん、ちゅっぱ」
 マグギャランは冷蔵庫を探った後、口紅の文字から口紅をハンカチで拭って唇に当てながら言った。
スカイが振り返るとコロンが目を覚ましていた。
「この中に滋養強壮サプリメントの瓶が在るから、飲んでおけ。冷蔵庫の中身は食うな。どう考えても罠だ」
スカイは腰の小物入れを外してコロンに放った。コロンの座っている椅子の前のテーブルに落ちた。