小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ダンジョニアン男爵の迷宮競技

INDEX|18ページ/69ページ|

次のページ前のページ
 

 「やっぱりムカツキますよね?高学歴のインテリは。彼等「ワイズメン」にはスプラッター系のリアクションで笑いをとって貰いましょう。インテリにも、そうでない人間にも等しく死は訪れるという悲しい現実があるのです。いくら猛勉強して学歴で身を飾っても永遠の命は買えません。それでは何のために勉強なんかするんだ!どうせ死ぬなら遊びたい放題、遊ぼうじゃありませんか?ね?だから賭けて下さい!思いっきって全財産を賭けてしまいましょう!賭こそ人生を豊かにする豊穣なる生命の泉です!」
 シキールは腰を振りながら言った。股間のカエルの顔から舌が飛び出している。
観客達の笑いが更に高まった。
「彼等は研究していないよ。やはり過去のデータ取りが賭には肝心だよ。前に、あの罠で同じ様な死に方をしたパーティーが、いるんだ。あの時は荒れたな」
 シー老師の隣に座っているギャンブラーYが笑いながら言った。
 このゴロツキは何を考えているのだ。いや、このスタジアムに集まっているギャンブラー達は皆同じ様な事を考えているのか?
このスタジアムには狂気と底なしの邪念が渦巻いていた。



「私達が第一チェックポイントに到着した順番はイ・チ・バ・ン。るん、るん、るん」
 ルルは身体を振って。モニターを見ていた。通過ポイントでの順番は一番であった。
メルプルも驚いていた。
 「すごい。私達が一番なのね」
 楚宇那がルルの横で見て言った。
 でもメルプルは気が重くなっていた。
 こんな、殺人ゲームなんか間違っているに決まっている。
 連続して戦闘をして人身売買で買われたモンスターと戦わずに逃げて、罠に引っかかり掛かって何度も死にそうになった。
間違いなく、これは人が死ぬ殺人ゲームだ。そして、そんな残酷な殺人競技をテレビで観客に見せて賭けをやっている。こんな事は人間が考えつくような事じゃなかった。
メガネを掛けた巻き毛のウロンが腕を組んで言った。
 「ふん。暫定一位取ったぐらいで気を抜いたら甘いわよルル。ゴールまであと三つもチェックポイントがあるんだからね。私のレーザー・ブラスターは撃てる数が限られて居るんだから。十五発撃てる内の3発を既に使っているのよ。私は余り戦闘は出来ないの。そして奥へ進めば進むほど陰険な罠が増えているし、モンスターも強くなっている」
 黒く短いマントの内側には銀色に輝く大型のレーザー・ブラスターが、ぶら下がっている。フラクター魔術師領の特製品だ。
「お金を賭ければ良かったムニィ」
 猫耳人のニャコが言った。両手に着けたナックル・ガードから鉤爪が飛び出す。鉤爪の先端を合わせてカチカチと音を出す。ニャコは猫耳人で耳の代わりに猫耳と尻尾が生えている以外は人間と同じだった。メルプルがニャコから聞いた猫耳人の伝承では踊る女神キャスが人間から猫になりたい者達を集めて猫耳人にしたらしい。だが筋肉の質が違うのか人間離れした反射神経を持っていた。今もヒマに任せてムーン・サルトをやっている。メルプルはイガ玉植物や栄養ドリンクを前線で戦うルルや楚宇那やニャコ、サファお姉さんに使っていただけだ。
それにしても酷くバランスの悪いパーティだ、学校の友達とOGのサファお姉さんだけで参加したから、こうなったのだ。一人か二人本格的な魔術師が必要なことは間違いなかった。メルプルの森人魔術では魔術師の代わりは務まらなかった。メルプルは精霊魔術と組み合わされた森人魔術は精霊使いの資質が無いため完全に使うことが最初から出来ないのだ。
「あなた達は未成年者でしょ。校則からも法律からも賭は禁止なのよ」
 サファお姉さんが言った。
 「あっ、こんな所に飲み物と食べ物の入った冷蔵庫がある」
 ルルが部屋の片隅にある冷蔵庫を開けた。
「ルル。罠があったらどうするの。勝手に開けちゃダメよ」
サファお姉さんが言った。
だがルルは聞いていなかった。
「ショ、ショコラケーキだ。美味しそう。マロン・グラッセもあるよ。ストロベリーケーキに、骨に肉が付いているアノ肉にサイダーにコーラもある。食べて良いんでしょコレ。楚宇那ちゃんも食べる?」
 ルルは、そそくさとショコラケーキを取り出した。一個一個お皿に載っておりフォークがついている。
「こんな凶悪ダンジョンの付属品が、まともな訳在るかムニィ!食うな馬鹿ルル!」
 ニャコが床に手を突いてしゃがんだ姿勢からルルに飛びかかった。
さっと素早くルルは避けた。
 みんながルルの回りを囲んだ。
メルプルもルルの回りに行って咳払いをした。これで、抜けているルルも判るはずだった。
 「な、何よ私のケーキよ。まだ他に在るから、そっちを食べてよニャコちゃん、みんなもね」
 ルルは言った。
「ルル。この悪意に満ちたダンジョンに在るケーキがどれだけ不自然な物か冷静になって考えてみて」
 サファお姉さんが説得するように言った。
「わたしも変だと思う。食べない方が…」
 楚宇那が言った。
 「がぶり」
 いきなりフォークで真上からケーキを突き刺して口に頬張るルルだった。
 余りにも素早い動きで誰も反応できなかった。ルルは残像を残して超高速で動いたのだ。
 「美味しい!とっても美味しいよコレ。中にはパリパリしたチョコレートにイチゴにミカンに…色々入っている!美味しい!きっと疲れた参加者を労う為に主催者が用意してくれたんだよ!マラソンの水分補給みたいな物だよ!みんなも食べなよ!」
満面の笑みを浮かべて次のストロベリーケーキを頬ばってルルは食べた。
みんな黙って見ていた。
 もう何も言えなかった。
ニコニコしているルルに反して、みんな沈んでいた。
あーあ食べちゃった。
 絶対毒だよあれ。
 メルプルは思った。 
 「しーらない」
 ウロンが腕を組んで四角い眼鏡の位置を直しながら言った。



スタジアムのステージの上ではシキールが腰を振って股間のカエルの顔から舌を出していた。
 「あー、哀れ。若い身空で食い気に任せて。超強力下剤入りのケーキを食べています。1つでも十分なのに、もう二つ目です。第一パーティー「ルルと仲間達」のリーダー、ルル・ガーテン。顔は可愛いのにコレから酷い腹痛に苦しむことになります。どんな顔でリアクションをするか皆さん期待しましょう。さあ、皆さんコレより第一チェックポイントから第二チェックポイントの間の順位を予想する賭券を販売いたします。そして、もう一つ、賭券の販売をします。ルル・ガーテンが何分後に粗相をするか。皆さんには予想して貰い、賭けを開始します。名付けて「ルル・ガーテンの失禁クジ」を販売いたします」
シキールが足を交差させて腰を曲げて挨拶をしながら言った。巨大なテレビには口の回りに付いたクリームを手袋を外した指で舐めて食べているルル・ガーテンの幸せそうな顔が大きく映し出されていた。観客達が券売場へと殺到していった。
 浅ましい顔をしているようにシー老師には思えた。
 ギャンブラーYも券売場へ走っていっていた。



「次はアノ肉を食べようかな。大きいからみんなで食べようよ」