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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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「今更、何を言っているの。野暮だよ野暮。やっぱりオヤジだねキミ。こいつぅーって感じかな?指で、いきなり突っつくとキレるでしょ?」
 シキールが言った。
 「早くポイズン・ガンを捕まえた方が良い。キュピンの顔が灰色になっている」
戦士のトトン・マーレが喋っている声が入ってきた。



「まあ、取りあえず飯でも食うか」
 スカイはダンジョンの中の十字路で腰を下ろした。
 「どういうつもりだスカイ。一番ゲットで借金の全額返済を、するのではなかったのか。オレ達は夜逃げをしなければならん。何処の国へ逃げるか最近、密かに調べているんだ。出来るだけ美女の多い国がいい」
マグギャランが回りをキョロキョロ見回しながら小声で言った。そして腰を下ろした。
 スカイはダンジョンの床に腰を下ろし腰裏のバッグからドライフルーツの入ったパウンド・ケーキを取り出した。
 そしてナイフで切った。
「考えても見ろ。罠は他のパーティーに解除させた方が安全だろう。それにモンスターも他のパーティーに倒させた後の方が戦闘をしなくて済む」
 スカイはケーキを頬張りながら言った。
 そしてマグギャランにもケーキを切って渡した。
 「成る程な。それは、なかなかセコいが、我々の乏しい戦力と、剣を失った、お前では、その作戦が丁度良いのかもしれんな。それじゃ茶でも飲むか」
 マグギャランは喋りながら噛んでいたケーキを飲み込むとコートの内側に、ぶら下げた魔法瓶を取り出した。
「そうそう。オレ達がメシ食って、茶を飲んでいる間に他のパーティーの連中が掃除をしてくれるって寸法だよ。時間を有効に使うって訳だろう。オレ達は後でスパートを掛ける余力を残しておく。そして他の連中が罠とモンスターで、へばっている、ところを余裕扱いて走って追い抜いていく。大逆転一位という寸法だ。コロンも、しっかり休んでおけよ。ケーキを食べるか?」
 コロンは正座をしたまま、両手と首を横に振って断った。
その時、天井を四つん這いで走っていく。怪人が現れた。
 全身を黒いラバーのような服を着て。両手に真鍮色の変な凶器を持っている。顔はフルフェイスのヘルメットで覆われていた。
 「おい、なにやってんだよ、お前。逆さまに歩いて」
スカイはナイフに手を掛けて目を細めながら言った。
「一緒にケーキでも食べるか」
マグギャランは腰の剣の柄を握りながら言った。
怪人は首を振って天井を逆さまに張り付いて四つん這いで走っていった。
「何だアイツは」
 スカイは言った。
 「モンスターと言うよりは人間ではないかね」
 マグギャランが言った。
 「天井を逆さまに歩く奴が人間か?」
 スカイは言った。
ドタドタと音がしてきた。
 角から、フルフェイスの兜を被った騎士を先頭にイケメンの森人に戦士、スカウトがいた。あとトンガリ頭のジーウーだ。
「いま、こっちに全身にゴム製の、おかしな服を着て両手に空気銃を持った男が通らなかったか」
フルフェイスの兜を被った黒鷹が言った。
 「それがどうしたんだ…」
 マグギャランが答えようとした。だがスカイは腕で制止した。
 「これはゲームなんだぜ。素直に情報を渡すだけがゲームの進め方じゃねぇ」
 スカイは黒鷹を見ながら言った。
 「どこまで根性が腐って居るんだ、このバカ者が!」
 ジーウーがスカイに怒鳴った。
 スカイは、とぼけた顔をした。
 「まて、ジーウー。私が話す」
 黒鷹が言った。
ジーウーが歯がゆそうな顔をした。
 「人の命が掛かって居るんだ。私が背負っている姪のキュピンが猛毒のポイズン・カクテルを受けて死にかかっている。この毒は一日の間、苦しんでから死ぬ、特殊な毒だ。そして、この毒の解毒剤は、あのゴム服の怪人ポイズン・ガンしか持っていない」
黒鷹が言った。
 スカイは黒鷹が背負っている治療士キュピンを見た。確かに灰色の肌の色をしていて荒い息をしていた。
「命が掛かっているなら仕方がないな。だが、条件を付けるぞ。オレ達に入賞の順番を譲れ」
 スカイは言った。
 思いつきにしては良いアイデアだった。
 黒鷹達は、イベント・アイテムらしい鍵を2つ持っていた。奴等は、このダンジョン・ゲームを上手くクリアーしているようだった。ならば、上位に入賞出来そうな黒鷹達と取引をするのならば入賞の順番を取引の対象とした方が良いことは間違いなかった。
 「我々は三位までに入賞出来ればいい。お前達が三位までに入賞することが条件だ。そうすれば順位を譲ろう。我々は賞金目当てではない」
 黒鷹が言った。
「よし、それで手を打とう。交渉成立だ」
 スカイは言った。
 「おい、スカイ。女性が怪我をしているのだ。ここは一つ素直に教えないかね。騎士道的にはアリだ」
 マグギャランがキュピン・パーキスを見ながら言った。
「仕方ないな。お前の騎士道精神の発露に付き合ってやるよ。条件は呑まなくて良い。あっちに行ったよ」
 スカイはポイズン・ガンが行った方向を指さした。
 「助かる。妻の姪なんだ。命に何かあると私が妻と妻の一族に殺される」
 黒鷹が頭を下げた。
その頭の下げ方に人生の重みを感じた。
 そして黒鷹達の第八パーティーがドタドタと音を立てて走り去った。



 「ねーウロンちゃん。緑の鍵は見つかったけれど。他の鍵は見つからないよ」
 ルルが言った。
「そう簡単に見つかるハズ無いでしょ」
 ウロンが言った。
 「大体、このダンジョンの形は判ってきた」
 メルプルは方眼紙にマッピングをしながら言った。
結局、ダンジョンは複雑な作りであることには間違いはなかったが。長方形の形をしているようだった。それさえ、判れば、比較的簡単に進むことが出来た。
 


「おい、マグギャラン、賭のカネの金額が六桁違うぞ。ここ見ると小さくゼロが六個書いてある」
スカイはルール・ブックを見て気が付いて言った。
 「何?お前、勘違いしていたのか。そう言えば、何か所々で変な気はしたのだが。このダンジョン・ゲームで一位になれば、優勝賞金と自分達の優勝に掛けた賭の配当の合計で、俺達の借金は全額、耳を揃えて返せるんだ。カネに汚い、お前が計算ミスしたのか不思議に思っていたんだ。お前がカネに欲をかいたせいでこんな酷いダンジョン・ゲームに参加しているのかと、オレは密かに怒りを貯めていたのだぞ」
マグギャランは紅茶を飲みながら言った。
コロンが頭を抱えて首を振っていた。
「それじゃ、俺達は一位通過しなくちゃいけないな」
スカイは言った。
 「そういう事になるな」
 マグギャランは言った。
「一丁やるか」
 スカイは真面目な声で言った。
 「当然だスカイ」
 マグギャランも真面目な声で言った。
スカイとマグギャランは拳と拳を打ちあわせた。
よし一丁やるか。



宝箱の横には赤い水着のバニーガールが居た。
「はい、第7パーティですね。「これが3本の鍵の迷宮」の青の鍵です」
頭のアンテナを揺らしてバニーガールが言った。
 「おう、これか。それにしても馬鹿でかい鍵だな」