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ダンジョニアン男爵の迷宮競技

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 ドアは音を立てて開いた。
 そして扉の向こうには薄暗いダンジョンが広がっていた。
 「ふむ、どうやら真っ直ぐ続いているようだな」
マグギャランが言った。
 「当然だろうな。各パーティごとに、ゲームの進め方が違う方が、賭は盛り上がるだろう」
 スカイが言った。
「だが、賭として面白くするためには何処かでボコり合いもあるのだろうな。第一パーティの妙齢の金髪美女にならボコられても嬉しいかもしれん。モロ、インコース中間の、ど真ん中のストライク・ゾーンだ。第四パーティのインテリ女二人も、それぞれ良い持ち味がある。第八パーティの赤毛の女治療術士も良い感じだ」
 マグギャランが真面目な顔で腕を組んで言った。
 「何だよ。一応、明かりは付いているな、まあ進んでいくか」
スカイが先頭に出て歩き始めた。
 コロンが立ち止まっていた。
 「そんな大したモノじゃねぇよ。こんな迷宮ゲームなんて遊びだよ遊び。心配するなよコロン」
 だが、コロンは壁の下の方を指さしていた。
 「何だよ」
 スカイは壁を見た。
 手の後が付いている。
 まさか血の跡か?
 スカイの経験上では血糊が乾いた跡に、よく似ていた。
何で死ぬんだ。
 これは、ただの遊びだろう。
 スカイ達三人は、真っ直ぐ進んでいった。
だが、真っ直ぐの一本道を右に曲がると通路の幅一杯にある巨大なギロチンが道を塞いでいた。
前に進んでいくためには、このギロチンの下を通って進んでいかなければならない。
 「これが遊びなのか。殺人級の罠ではないのかスカイ」
 マグギャランが腕を組んで、スカイが薄々感じている疑念を口に出した。
確かに殺人級の即死するような罠に見えた。
 「俺が子供の頃来たときは、人が入った着ぐるみのモンスターに、粉や金タライの罠ぐらいだったが。まさか、このギロチンが本物ということはないだろう」
 スカイは笑いながら言った。
それにダンジョンは木の板で青空の下に作られていたが、これは、どう見ても天井まで石で覆われている本格的なダンジョンだ。
まさかな、そう言えば、ダンジョニアン男爵の迷宮競技に、ついての悪い噂を聞いていた。ダンジョニアン男爵の迷宮競技では死人が出るという悪い噂だ。もしかしたら、本当かもしれない。不味い。
 スカイはジワジワと不安感に浸されていった。
 「だが、このギロチンの刃の質感といい重そうな刃といい。どう見ても本物の刃物にしか見えんな」
 マグギャランが言った。
 「まあ、元スカウトの俺に任せろよ。こんな、チャチな罠なんか全然問題ねぇ」
 スカイは笑いながらギロチンに近づいた。
「オマエ等、どいていろよ。駆け足と根性で飛んでやる。鳥人になった俺を見ろよ」
 スカイは助走を付けて走っていった。
 「おりゃっ!そりゃ!ジャンプ!」
 スカイを三段飛びをギロチンに対して行った。脚と腕を前に伸ばして飛んでいった。
 滞空している僅かな時間の間、スカイの頭上から音がした。ギロチンの刃が落ちてきた。
何!
 スカイは急に腰を引っ張られた。ダンジョンの床で着地に失敗して尻餅を付いた。そして頭から後ろに倒れた。頭と背中を固い物体に打ちつけた。
 「イテェな。チクショウめ」
 スカイは毒づいた。
 何だ?何がどうしたんだ。
 背中を見たらギロチンの刃に寄りかかっていることに気が付いた。
ギロチンが落ちたのだ。
 「おいスカイ生きているか」
 マグギャランの声が聞こえた。
 鋼鉄製のギロチンの刃が、ゆっくりと上がっていく。向こうで心配そうな顔をしている
マグギャランとコロンが居た。
「お、おう。生きている。何じゃこりゃ。仕掛けのスイッチが何処にも無かったぞ。普通この手の罠には作動させるためのスイッチが床に付いて居るんだよ。俺が飛んでジャンプした途端にギロチンの刃が落ちてきた…あっ!」
 スカイは自分の腰のロング・ソードを見た。剣が鞘ごとギロチンで真っ二つになっている。大体剣の中程で真っ二つになっていた。
スカイの剣は刃の分厚い丈夫な剣で、両手でも片手でも使える剣だった。これはモンスターを倒す為に使ってきた愛用の剣だった。
 「俺の剣が!」
スカイが叫んだ。
 「まあ、身体の方が真っ二つにならずに済んで良かったではないか」
 マグギャランがギロチンの向こうから言った。
 「それは、そうだが…まさかモンスターも本物じゃ無いだろうな。俺は剣がねぇ。ナイフ一丁でモンスターと戦うのか?」
スカイは折れた剣を見ながら言った。
そしてスカイは腰の刃渡り四十センチあるナイフを見た。
 大分前から使っている愛用のナイフだ。
 「それより、罠の仕掛けを調べろよ。元、盗賊なんだろ」
 コロンは、きょとんとしているが。昔から何を考えているか判らない姉貴だ。だとしたら過去がバレる事は不味い。コロンには黙っていたが、七歳の時、生き別れた後、冒険屋でモンスター退治を生業として生活していたなんて気が付かれたら不味いだろう。
 「いや、盗賊じゃなくてスカウトだ。とりあえず。罠を調べるぞ」
 スカイは罠を見ながら言った。
 「どっちも同じだろう」
 マグギャランは腕を組んで言った。
「盗賊は犯罪者だが、スカウトは犯罪者じゃないんだよ」
スカイは言った。
これは重要な事だった。
 コロン姉ちゃんが勘違いしたらどうするんだよ。スカイはマグギャランの言葉に怒りを覚えた。
 ギロチンの罠を調べると、どうやら、よく見ると赤い線が一本腰の高さぐらいの所を通っている。
 これは何だ?
 スカイは赤い線に折れた剣を鞘から抜いて当ててみた。
 轟音共にギロチンの刃が落ちた。
 スカイの前髪をギロチンの風圧が押した。
 「大丈夫かスカイ」
 マグギャランが閉じたギロチンの向こうから言った。
ギロチンが、ゆっくりと上がっていった。
 スカイは更に短くなった剣を開きかかったギロチンの赤い線が出ていた穴に当てた。だが、ギロチンは作動しなかった。
 そして元の位置までギロチンの刃が上がりきるとギロチンから赤い線が再び出始めた。
「仕組みは判った。ギロチンを作動させて、降りた刃が上に巻き上げられる時が通過できるタイミングだ」
 スカイは言った。
 赤い線が何だか判らなかったが、取りあえず仕組みは判っていた。
 「成る程な。それじゃ俺は次に行くぞ。スカイ、ギロチンを作動させろよ」
 マグギャランは言った。
 スカイはギロチンの刃を作動させた。
マグギャランは刃が巻き上げられている間に頭を、かがめて通過した。



フラクター製の巨大ディスプレイにはギロチンの罠に近づく青いコートの魔術師が映し出されていた。まだ娘と呼ぶべき年齢だ。
 司会のシキールがスイッチを取り出した。