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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第八話

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夫誠一郎の胸に顔をうずめながら雅子はある提案をした。

「ねえ、晴樹のことだけど、私仕事で毎日夕方まで帰れないからあの子に不自由かけていると思うの。だからね、大森さんにお願いして夕美と一緒に暮らせるようにしてあげたいんだけどどうかな?」

「それは夕美も喜ぶよ。お前はそれでいいのか?」

誠一郎は以前に夕美が話していたように雅子のプライドが許さないだろうことを懸念していたからそう感じたのだ。

「うん、だって夕美はそうしたほうが嬉しいのじゃない?」

「もちろんだよ。お前が本心で言っているのなら、おれは反対なんかしないよ。むしろ歓迎だよ」

「そう、本心よ。兄弟は仲良くしないとね。私は養女に出されて寂しい思いをしたから・・・」

「雅子、本当に変わったな。お前にそう思わせる変化は何だったんだ?」

「あなた・・・」

雅子は何かを思い出したのか、嬉しかったのか、その言葉の後は涙になって言えなくなってしまった。
大好きだった俊之が急死して心に大きな穴が開いていた時から数か月が過ぎ、四九日の法要も涙なくして居れなかった自分が、こうして夫と仲良くしていることすら信じられなかった。

一番大切な思いは何かということを知らされて、雅子は大きな過ちを反省していた。
申し訳けなさと、自分を大切にしてくれていた夫への恩返しに夕美の幸せを考えられるようになっていたのだ。
よく考えたら夕美の気持ちを本当に理解できるのは自分なんだと思うようになっていた。亡き俊之への感謝はそのまま夕美のことを幸せになれるように願う気持ちに変えてゆこうとしていたのかも知れない。
作品名:「夕美」 第八話 作家名:てっしゅう