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靴ベラジカ
靴ベラジカ
novelistID. 55040
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Ungebetenen Gast 招かれざる客

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掘り出した原鉱は両手ではもう数え切れない。
一段落つき、顔も服も土埃塗れにしたまま、ティカは手際良く
掘り当てた原鉱を仕分けるレミーを興味深く観察している。
何やら入口の方が騒がしいのだが、二人は気付きそうもない。

 「これは鉄鉱石、こいつは鳴き錫、これは…砂鉄だわ」
丸く黒い石を近づけたり、ぐねぐねと曲げたり。
ランタンの光を間近に受ける青年の顔はいつも通り気だるげであるが、
真剣に作業している事はなんとなくわかる。
灰緑の長髪が零れ落ちても気にも留めずに仕分けを有る程度進め、

 「ティカもやってみ」
仕分けが済んでいない一割程の原鉱と、先ほど使っていた丸く黒い石を
纏めて彼女に差し出した。
鏡の様に輝いているもの、白く心持透明感があるもの、
砂と粘土が混ざっているもの、角ばった結晶が幾つもあるもの。
よくよく見ると微妙な違いがある。 一纏めにして蝋石です、とは言えそうも無い。
一緒に渡された丸く黒い石が重要そうだ。
黒と灰が混ざった様な粘土に近付ける。

 「な、なにこれ、こわい」
粘土の黒い部分がうねり針状に尖り、丸く黒い石にどんどん張り付いていく。
レミーは小刻みに震えるティカを余所に唐突に説明を始めた。

 「粘土にくっついてたのは砂鉄。
で、ティカが持ってる丸いのは磁石。
磁石は鉄に近付けるとくっつくんよ」
 「ううううう。 魔物じゃないんだよね?」
 「砂になった鉄だからね」
後輩のティカはびくびくと怯えながら、恐る恐る磁石に付いた砂鉄を取り分け袋に詰めていく。
先輩であるレミーいわくただの黒い砂の様で、純度の高い物は
いい値で売れる所もあるらしい。
要領が解れば段々と楽しくなって来る。 やがて手元の粘土は綺麗な灰一色になった。

鉄は磁石にくっつく。 銀色の石が鉄と言う事は田舎者のティカも何と無く知っている。
彼女は磁石を、手元の石に手当たり次第近付けていく。
白く透明感のあるものは反応が無い。
特に鏡の様に光る銀色のものが良くくっついている気がするが、
角ばった結晶で銀色のものもそれなりに磁石には張り付いていた。
どちらも鉄なのか。 それともどちらかが鉄なのか。
形や艶の感じが違うと言う事しかわからない。

 「形が違うのは解ったろ」
 「うん」
 「くっつき易さも違う」
 「うん」
 「なるほろ」
レミーは手際良く少女の前で整列させられた石を
拾い上げ、背負った鞄を開け小さなハンマーを引っ張り出す。
軽妙な取り回しでくるくると振り回すが、すぐに飽きたのか
そそくさと本題に入ってしまった。
結晶の部分を狙ってハンマーを押し付ける。 鏡の様にきらきらとした方は
何の変化も無いが、角ばってボコボコとした方は
小さく、ほんの些細な物だが確かに、カリッとした音を発した。

 「ボコボコが鳴き錫?」
 「ご名答」
錬金術師のタマゴはハンマーを借りて銀色の石にぐっと力を入れ、カリカリと
鳴く物を袋に詰めて仕分けていく。 取っ掛かりが有れば何でも簡単だ。
銀色の石は仕分け終わった。 残るは白っぽい石だけだ。

唐突に、金属がぶつかる音があたりに響く。
入口の方から足音がのっそりと近付き、
若い筋肉質の不良じみた男がざっくばらんに声を荒げた。

 「ちょっとアンチャンよ、閉山の頃合い過ぎてっから出てって…」
鶴嘴を肩に乗せた男は二人を見るや否や、質の悪いバサバサな栗毛を掬い、
声色を急に柔らかくした。

 「ア… なんでティカがいんの?」

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