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近代日本愉快伝~駅長吸血鬼

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赤月 私は、赤月詩音です。今は、浦戸さんの専属看護師です。半ば執事みたいになっていますが。
浦戸 彼女、なかなか有能でな。ドラキュラになって力が出てきた代わりに、頭が少し悪くなって、そのサポートをしてくれているのだ。
赤月 サポートなんてそんな。私はただ、貴方のことが心配なだけで…
浦戸 いつもありがとう。君だけが唯一の頼りだよ。
赤月 浦戸さん。
浦戸 さてと。俺は行ってくるよ。後は、二人きりでね。 
赤月 浦戸さん、どこ行くんですか?
浦戸 ちょっと電車の調節にな。
浦戸、はける
勝倉 浦戸さんのことどう思ってる?
赤月 えっ。別になんとも思ってないですけど。
勝倉 好きなんだろ?あいつの事。
赤月 そ、そんなこと有りませんよ。ただ、私は専属の看護師としてあそこまで元気になられたことを嬉しく思っているだけですよ。
勝倉 心配しなくても良い。正直に話してや。
赤月 実は、そのよくわからないんです。
勝倉 恋と言うのがかい?
赤月 いえ、自分が経験したことのないようなことが勝手に口から出るんです。
勝倉 それは妙だな。何かものがついているのではないか?
赤月 ものって?
勝倉 物の怪だよ。勝手に人の体を乗っ取って話したり、金縛りを生んだり。 
赤月 怖いですから。止めてくださいよ。
勝倉 なんなら、我が町に伝わる怪談話してあげても良いですよ。
赤月 きゃあ、止めてくださいよ。私、真っ昼間に怪談聞いても家に帰れなくなるんですから。
勝倉 冗談だ。君みたいな美人をいじめるつもりはない。
赤月 でも、実際に経験したことが無くても鮮明に覚えているんです。
勝倉 もしかしたら浦島太郎みたいな物なのかも知れないな。
赤月 浦島太郎ですか?私、赤ずきんなのに。
勝倉 詳しいことは分からないが、ドラキュラのような吸血鬼には、時間を一瞬にして経過させる能力が備わっているのかもしれない。
赤月 でも、いくらなんでもまだ見た目は変わっていませんよね。
勝倉 鏡見るかい?持っているけど。
赤月 はい。借りますね。…うん。確かに歳はとっていません。 
勝倉 なら、玉手箱はまだ開けてないようだな。
赤月 あの、玉手箱って何ですか?
勝倉 玉手箱か。言い表せないな。端的にいえば、歳をとらせる魔法かな。
赤月 魔法ですか。ドラキュラって魔法使いなんですか?
勝倉 私には分からないよ。ドラキュラのような吸血鬼ではないからな。でも魔法的能力は備わっていると思う。
赤月 そうですか。
勝倉 一つ聞いていいかい?何か、今日多くの時間を費やしたことはあるかな。
赤月 今日ですか?うーんと。鉄道探しですかね。もうだいぶ前に失われたはずの旧路線を探していたんですから。
勝倉 そうか。ありがとう。ただ聞いただけだ。気にするなよ。
赤月 分かっています。でも、好きなことは確かなのかも知れません。彼といると心が弾みます。
勝倉 まぁな。危険な恋というのも有りだな。平凡な男はつまらないからな。これからの男はな人とちょっと抜きん出て変な奴がモテる時代なんだ。
赤月 そうなんですか?勝倉さん。
勝倉 うん。そうだよ。だから、彼氏がドラキュラっていうのもなかなか悪くないじゃん。ちょっと野蛮なところがあってね。
赤月 確かに良いかもしれませんね。
勝倉 ちょっとSっ気があって、それでいて優しいんだ。良い彼氏だろ?
赤月 でも、彼は多分、逆だと思います。いつも私のことを考えてくれていて、心配かけまいと必死に頑張っているんです。
勝倉 まぁ、浦戸は中学時代から努力家だったからな。
赤月 彼のことを知っているんですか? 
勝倉 あぁ、いばロックで対バンした仲だからな。その前にも中学時代に先輩後輩として共に活動してきたから。
赤月 彼は、一体どういう中学時代だったんですか?
勝倉 彼は、中学時代は軽音楽部に入部して、ギターとかドラム。ベース等も練習したけど向いてなくてな。ボーカルを務めたのだ。それで中学の文化祭で一大旋風を巻き起こしたんだ。
赤月 中学の文化祭ですか。合唱祭くらいしか思い浮かびませんが。
勝倉 彼の学校は、三年に一回、商業系の文化祭があってな。なかなか凄かったよ。チョコバナナ作ったりタコ焼き作ったりしていたね。
赤月 今もやっているんですか?
勝倉 残念ながら、市の経理部に摘発され、市の事業仕分けで仕分けの対象になってしまったんだ。
赤月 そうなんですか。行きたかったなぁ。
勝倉 僕も何でそんな楽しい文化祭を廃止するのか驚いたわ。
赤月 それで高校時代はどういう生活をしていたんですか?
勝倉 そこから、彼はドラークルを結成したと聞いたな。彼は、天才であった。結成してから一ヶ月でファンが百人を越えたんだよ。
赤月 百人って凄いですね。彼が高校生のとき、私はシンデレラの代わりに働いていました。
勝倉 えっ!そうだったんですか?
赤月 結局、闇雲に頑張って働いていたけどシンデレラに役を取られ、嫉妬してシンデレラ城を追い出されました。
勝倉 それは。つまり、働き損だったって言うことですか?
赤月 そうですね。私が履いていたのは赤くて丈夫なブーツ。彼女が履いていたのは、透明なガラスの靴。所詮、人間は儚い物に共感するものだと改めて感じたんです。
勝倉 そうそう。日本人には昔から、判官贔屓というものが存在しているからなぁ。弱者に同情するが故、強いものは、時として嫌われてしまう事もある。
赤月 全くその通りですね。
勝倉 おおっと。浦戸に思いを伝えなくて良いのか?赤ずきんちゃん。
赤月 その呼び名は、ドラキュラ様だけにしてくださいよ。…ハッ!
勝倉 やっぱり、浦戸のことが好きなんだな。彼以外には呼ばれたくないとは。
赤月 ち、違いますよ。
勝倉 顔が赤くなってるよ。赤ずきん。ほら、ドラキュラ浦戸が戻ってきたぞ。   
浦戸 赤ずきんちゃん。遅くなってごめんね。
赤月 いえ。大丈夫ですよ。
浦戸 実はさ、今までの感謝の気持ちを込めてつまらないものだとは思うけど、プレゼントを用意したんだよ。
赤月 浦戸さん。ありがとうございます。
浦戸 気にしないで。ほら、イワタケだよ。赤月さん、腹痛で困ってるって聞いたから。
赤月 イワタケってあの採るのに大変なキノコですよね?
浦戸 うん。確かに大変なキノコだな。でも、吸血鬼の能力があれば、野生動物は恐くないからな。流石に、岩壁を登るのには苦労したけどね。、
赤月 私が貰って良いんですか?
浦戸 良いんだよ。さぁ受け取って。
赤月 分かりました。
浦戸 大丈夫だよ。僕の分もちゃんとあるから。
赤月 う、浦戸さん?
浦戸 どうかしたの?赤月ちゃん。
赤月 いや、やっぱり何でも有りませんよ。
浦戸 そうか。何か様子が変だぞ。もしかして、勝倉に何かされたか?
赤月 いや、そうじゃなくて。
浦戸 おい、勝倉。赤ずきんに何かやったか?正直に言え。言わないとテメェの家のブロック塀かケツの穴くり抜くぞ。
勝倉 滅相もないっす。尊敬している偉大なる先輩の未来の嫁さんを泣かせるようなことは何一つしていませんよ。
浦戸 おう。泣かせることしてないならそれでええわ。…えっ?
赤月 浦戸さん。
浦戸 赤ずきん。お前。まさか。
赤月 浦戸さん。