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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 それにしても不思議だ、なぜ、ここに……、洋介と舞子の二人が?
 そう訝(いぶか)しがる心の奥底を洋介は読み取ったのか、「まあ貴史、そこへ座れよ」と奨め、まずはお冷やを出してくれた。貴史はそれをとりあえず口に含むと、洋介が「俺たち京都を飛び出した後、創作スイーツで身を起こそうと一所懸命やってきたんだよ。お陰でやっと店を持つことができてなあ」とポツリポツリと経緯を語り始めた。

 されども貴史は、――ということは、洋介と舞子は結婚してしまっているのか? と、妻を持つ身でありながら、どことなくムカつく。しかし、その感情を見透かされないように、コップの水を一気に飲み干した。
 そして、この素直になれない心情から解放されたくて、「なあ、洋介、お前憶えてるだろ。卒業前に抹茶アイス食べたろ。あの時、俺確かめたんだよな、舞ちゃんのことどう思うって。そしたら、お前、何とも思ってないよ、こうはっきり言ったんだぜ。それがなんで、今?」と直球で訊いてしまった。

「済まなかった、貴史。あの時、舞子には告白済みで……。親友のお前が恋心を抱いていたことは知ってたものだから、その遠慮もあり、ついてしまったんだよ、真っ赤な嘘を」
 貴史はそんなことを今さら攻めるつもりはない。あれは真っ赤な嘘だったのか、と大人として妥協し、あとは「仕方ないか、で、創作スイーツを食べさせてくれよ」と照れ笑った。

 こんな二人の様子を見ていた舞子は少しホッとしたのか、話題を変えて、「いつもこの人、お巫山戯(ふざけ)さんなんやから、そやさかい、こんな〈 What's new ? 〉なんえ」と京言葉で語り掛け、濃い緑色で覆われた、抹茶スイーツを目の前に置いてくれた。