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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 もう過去は過去と舞子への淡い恋心を吹っ切った貴史、現実に戻り、テーブルに目を落とすと……、美味しそうだ! 貴史は辛抱できず、スプーンで大きく取って口に運んだ。
 うーん、確かに香り良い抹茶テースト。洋介、結構やるじゃないかと舌の上で転がすと、その瞬間ビックリ仰天、芯はハニー味なのだ!
「何なんだよ、これ、裏切られた味だよ」

 この大きなリアクションに、舞子がうふふと笑いながらメニューの一つを指さした。それを目にした貴史、うっと上体を後方に引く。
 なぜなら、そのスイーツ名は事もあろうか──〈 抹茶な嘘 〉。

 高校卒業前に洋介が吐いた真っ赤な嘘は、今、〈 抹茶な嘘 〉に進化していたのだ!
 こんな奇異さに妙に感心する貴史だったが、ここは一言批評せねばならない。
「洋介、お前のダジャレ、いやウィットもわかるが、もっと人に幸福が巡ってくるようなテーマでスイーツ作りをして欲しいなあ」
 青春を共に過ごした友人として、忌憚なく言ってしまった。すると横から舞子が「そやろ、貴史君、これ、この人のスイーツなんえ、見てくれはる」とメニューを開いた。

 そこには……、

 スイーツ・カフェ[What's new ?]のメニュー

  アッパレパイ
  おかしなお菓子
  お猪口レート
  ケーキは気から
  ココ夏秋冬(ココナツアキフユ)

  爺(ジジ)ロア
  朱(しゅ)クリーム
  滑る斜ベット
  地図ケーキ
  抹茶な嘘