33粒のやまぶどう (短編物語集)
しかし、こんな戦場にあっても、同僚たちは上司に気に入られ、昇進の階段を上って行く。それに比べ吉男は、いつも同期の勇姿を下から眺めているだけ。情けないことだ!
今日ここに集まった勤め人たち、全員似たり寄ったりの口惜しさで藻掻いてきた。もちろん司会者は承知済み。そのためかちょっと眉間に皺を寄せ、憐れんだ目で……。
あなた方のサラリーマン人生、その命運はボスに握られてます。とにかく気に入られないと、未来はありませんよね。
そこで本日は500年の時を超え、細川幽斎(ほそかわゆうさい)先生にお出まし頂きました。
先生は日本史上最も文武両道に秀でた戦国武将であらせられまして、剣術は塚原卜伝に学ばれ、突進してきた牛を投げ倒されたこともあります。また古代からの秘伝、古今伝授の伝承者でもあります。
さらに現代人の我々が最も驚愕することは、日本史上三傑の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が上司であり、この飛び切り個性あるビッグスリーに順繰り部下として勤められ、見事争乱の戦国の世を生き抜かれました。
それでは幽斎先生の登壇です、盛大なる拍手でお迎えしましょう!
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊