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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 高校二年生、それは青春時代の佳境に入る時なのかも知れない。その証拠に、恋心を胸に秘めておくことができなくなる。
 6時限目、急な休講で自主活動となり、クラス委員から、告白タイムにしようと提案があった。もちろん異論はない。そして健太はそれに応え、杏奈への純な想いを爆発させたのだ。だが、この瞬間、淡いはずの初恋が重い恋へと進化したとも言える。
 果たして杏奈のリアクションは?

 放課後のことだった、杏奈がツカツカとやって来た。
「今日の告白、迷惑だわ。だけど嬉しかった」
 声は小さかったが、杏奈ははっきりと告げ、踵を返し去って行った。健太はそのうしろ姿を見送りながら、もう一度心に誓うのだった。絶対に杏奈を守り抜こう、と。

 大介は出張先のホテルでシャワーを済まし、何気なくTVを点けた。するといきなりの、「守ります!」、こんなシーンが目に飛び込んできた。ああ、なるほど、これが今話題の青春ドラマかと缶ビールを呷(あお)りながら見入ってしまった。

ピッ!
 明日も早い。杏奈のセリフ、「だけど嬉しかった」の後を観ることを諦め、スイッチを切り、ベッドへと潜り込んだ。
「俺の高校時代と違うよな。もしあの頃に、あんな告白チャンスがあったなら、俺も夕子に宣言してみたかったなあ」

 随分と昔のことだが、大介には夕子との思い出がある。
 夕子はドラマの杏奈とは少し違うタイプの女学生。白いブラウスがよく似合い、長い髪をそよ風になびかせていた。
 そんな夕子と一度だけデートしたことがある。別に手を繋いで歩いたわけでもなく、ただ公園の大きな木の下でたわいもない会話をしただけだった。しかし、大介は熱い想いを募らせた。
 その夕子が卒業と同時に大介の目の前から忽然と消えた。初恋は片想いで終わってしまったのか? それでもずっと夕子が好きだった。

 それにしても、なぜ卒業後、夕子を探し出し、恋のアタックしなかったのだろうか?
 現実は貧乏学生であり、甲斐性もなく、自信がなかったから。
 しかし、サラリーマンになってもう5年、今ならば夕子に対し自信をもって向かい合えるし、また彼女を受け止められる。されども時は経ち過ぎた、一体俺は……、と後悔の念ばかりが胸を締め付ける。