33粒のやまぶどう (短編物語集)
「一生をかけて、杏奈(あんな)を守ります!」
壇上から健太(けんた)が声を張り上げた。このいきなりの宣言に、ホームルームの全員は黙り込んだ。そしてしばらくして、どよめきがワアーと起こった。
杏奈はショートカットに涼やかな瞳を持つ美少女。その上、学年トップを争う優等生ときてる。男子生徒たちからはアジアンビューティと呼ばれ、憧れの的だ。
一方健太の方はテニスコートでボールを追い掛けるだけの普通の生徒。この格の違いにより、当然杏奈のお相手ではないというのがみんなの認識だ。
健太、俺らのマドンナを守るって?
赤点なくしてから叫べよな!
こんな散々なヤジが飛ぶ。だが健太は再び言い放つ。
「杏奈が大好きだ。だから絶対に、僕が一生守ります!」
この必死な決意表明に、今度は大きな拍手がわき上がった。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊