33粒のやまぶどう (短編物語集)
こんな悶々とした夜から1ヶ月が経った。今日は高校卒業後初めての学年同窓会だ。もちろん、この機会に夕子にぜひ会いたい。こんな熱い気持ちで大介は出掛けて行った。
まず、かっての悪友たちと再会した。それはとてつもなく懐かしいものだった。
それから大介は場内を見回した。
だが夕子は、どこに?
そしてやっと見付けた、楚々と佇む夕子を。かっての雰囲気を残したまま大人の女性になっていた。大介の胸が一気に高鳴る。
そんな時に、幹事からアナウンスが……、
「我々の高校時代は純情な男女交際でした。それでもあの時、告げておけば良かったと後悔してる人は多いことでしょう。さあ、今なら出来る――恋の告白を――さあ、どうぞ」と。
なるほど、これは千載一遇のチャンスだ。悪友どもは我先にと舞台へと上がる。もちろん大介も、同窓会会場で、ドラマ内の健太のごとく叫んでしまったのだ。
「今も夕子さんが大好きです。だから、僕の一生をかけて、夕子さんを……、守ります!」
お前の年収、いくらなんだ。それが問題だ!
ヨッ、もう手遅れだよ!
おいおい大介、人妻を、どうするつもりなんだよ!
会場に怒号の嵐が。
されども夕子が――人妻?
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊