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タイタニック気付 ジャック

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4 じゃあ今教える



「あなたは自由で
羨ましい」

「あの水平線まで
今すぐにとは
言わないけど

行きたいときに
行きたいところに
思いどおりに
行ってみたい」

君が指さす
水平線に
夕日が
沈みそうだった

デッキの散歩は
まだ続いてた

遊園地で
安いビールを
ラッパ飲み

カウボーイみたいに
馬に乗る

タバコを噛んで
下品にペッと
唾を吐く

何のはずみか
披露した
脈絡もない
僕の日常

武勇談とでも
聞こえたか
君はどうにも
気に入って

もたれたフェンスで
身を乗り出して
目を見開いて

「いつか必ず
やってみるから
そのときは
教えてくれる?」

じゃあ今
教える

いつかだなんて
悠長すぎる

なんたって
目の前全部が
大西洋

“下品にペッと
唾を吐く”

これなんか
まさに
うってつけ

さすがに育ちの
良い君は
人目を気にして
頑として
嫌がったけど

たかがこれしき
ビビッてちゃ
水平線が
聞いて呆れる

唾を口に
溜め込む音やら
頬っぺたの
すぼめ方やら

下品にペッと
唾を吐くにも
コツらしきものが
いろいろあって

それでなくても
君の初回は

羞恥心と
罪悪感の
塊みたいな
ショボイ出来で
即 落第

だけどこの
おてんば娘は
教えを素直に
よく飲み込んだ

それに
いったん
のめり込んだら
負けず嫌いの
面目躍如で

僕に言わせりゃ
こっちが君の
ほんとの姿

ついさっき
このデッキで

がんじがらめの
檻を嘆いた
傷心の
令嬢よりも
はるかに君に
似合ってる

女だてらに
唾吐く姿が
サマになるのも
そう遠くない

実地指導に
熱が入った

君がどこまで
上達するか

日が沈むのが
惜しかった