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私の読む「源氏物語」ー71-総角ー2

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 薫が、姉になる明石中宮の許に行くと、中宮は、
「匂宮は出掛けてしまいましたねえ。呆れる程に困る挙動である。みんなはあの子の挙動をどの様に思っているであろうか。主上には、私がよく言い聞かせぬからだと、お叱りを受けて、私は本当に困ってしまいます」
 と、愚痴を言う。明石中宮には多くの宮様が、こんなにまで、成人なされ、立派になれたけれども、明石中宮は益々お若くて、年ごとに立派になって行かれた。中宮の娘女一宮は、清楚とはこのような人を言うのだと思われるほどで、明石中宮と対談している程度だけでも、身近で容姿は、とも角としても、せめて声だけでも聞きたいものであると、薫には姪に当たるが、自然にそのような気持ちが湧いてくる。
 好色な人がとても思うことが出来ないような人に思いを寄せるようになることは、薫と女一宮のような関係の接近した間柄で、さすがにある程度まで近づくことが許されていて、しかもそこで二人の間に几帳や障子のような隔てる物が存在して最終的には二人はそれ以上に接近できない、という時に、苦しみもし、悶えもするのであろう、自分のように異性への関心の淡いものはないのであるが、それでさえも大君を思うと、動き始めた心はおさえがたいものなのであるから、などと薫は思っていた。
 明石中宮に仕える女房達は容姿、や性格がどの女房という事なく、すべて醜いような者はなく立派で、それぞれに優美な中に、少し抜きんでて容姿が上品で優秀で、目につく女房もあるけれども、決して女房などには、懸想しかける意志はないという決心で薫は、全く生真面目に、身を持てなしていた。しかし、女房の中には強いて薫に見られ、知られるように動く女房もいる。明石中宮の周囲の雰囲気は、お互い気を遣わなくても良い、しとやかに落ちついている所であるから、女房達も表面は気持だけでも平穏であるが、十人十色と色々の気持を持っている人の世の中なのであるから、浮気そうで積極的に自分から手を出しそうな裏面の気持が、ちらちらと漏れて見られる者もあるのを、薫は、色々とあるのは楽しいが辛いことでもあると、薫は立っても座っても平常でない世間を、考えて行動をする。
 宇治では薫が、「夜にはそちらへ参ろうと思いますが、今夜は何かと雑用が多くて…」という消息が少し大袈裟に言ったのであるが、匂宮が夜遅になっても三日夜というのにお出でにならず匂宮の文が着いたので、ひょっとするとと、浮気な宮と聞いていたので、中君はただ遊ばれたのかと、大君は胸が苦しくなるように心配で、夜中過ぎてから荒れ模様の風の勢いにのって来たように、匂宮が優雅で綺麗で、衣に焚きしめた香の匂を漂わして来訪したので大君は馬鹿なことを心配したと思った。中君も三日となれば匂宮に少し靡いて匂宮の情愛を感じてもいたようである。中君は風情ありげで、女の若盛りと見られ、そうして、今宵、容姿を匂宮との三日夜祝いのために調えた様子は、常よりも更に綺麗であると匂宮は見た。結構多くの女性を見たり関係したりしている女好きの匂宮のめにも、中君の今宵の姿は、良いものだと、顔を第一として、色々の点が、接近して見ると勝れていることを認めていた。姉妹の外に美人を知らない宇治の老女房達は、美人を見馴れている匂宮が感心する程であるから、その匂宮以上に歯の脱けた口もとを醜そうにして微笑しながら、

「こんなに、中君の勿体ない御容姿であるのにねえ」
「平凡な身分の男が、夫となったならば、何と悔しいことであろう」
「お二人の将来はきっと素敵でしょう」
 と言いながら、大君が薫の求愛を、薫に対して妙に靡きもせずに相手をするのを、にがにがしく口をゆがめて非難するのである。
 女盛りを過ぎた見映えのしない姿なのに、花の派手な色の、老女房どもには似つかわしくないものを、刺繍したり縫ったりして着ながら、それぞれの身に似あわしくなく、これならば無難と、我慢のできる器量の者もいないのも見ていて大君は、自分もようやく女の盛りを過ぎる歳になったのだと、鏡を見れば自分の顔が少し痩せた感じがする、そうして、この老女房達も、各人は、「自分の姿は醜い」とは思っていないであろう。醜い、髪が脱けて細々としている後姿の醜態は分からないから知らぬ振りで、額髪を垂れさせて、面、即ち頬に引き掛けて顔を見られぬようにしながら、口紅や白粉で色どつた仮粧(顔づくり)を見良くして、起居するようである。しかし、自分はまだ全く老女房達の程度ではなく、目も鼻も尋常であると、自然に思うのは、気が、そうさせるせいであろうかと、老女房を見て考えながらも気がかりなので外を眺めて横になっていた。気の置ける薫に、もし見られるとしても、その事は、こんな醜い姿では一段ときまりが悪く、もう一年か二年すれば
私の容姿はもっと衰えるであろう。頼りなさそうな、我が身の有様であるのに薫は懸想して来ると、手が細くなり、弱くなっていたいたしく思うのを、袖からさし出してまあ、夫婦の仲を考え続けていた。
 匂宮は宮中から出る許可を取りにくかった、今夜の明石中宮の前から抜け出したことを、熟考してみると、宇治訪問は、今後は簡単には出来ないだろうと思うと自然に思うと胸が詰まってきた。
 中君と匂宮の情交は三日目になると更に細やかになって、匂宮は中君が割合豊満な体つきであることが益々はっきりとしてくると、男の情愛が益々厚くなり、女が叫び声を堪えきれなくなるまで燃え上がらせ、中君も何の見えもなく夫のなすがままに身を弄ばれて燃え上がり、灼熱のように熱く、鋼のように固くなった男の象徴を恥もなく手の内に必死に握りしめ、二人の熱気が最高になったときに中君は自分から男を中に導き、溢れ来る愛の液を残らず戴いて、一つの波が納まる、女の情は男と違ってすぐには消えない暫く持続する女はその間男を離さない、人間の性か、中君は男を再度奮い立たそうと習いもしないが自然と手が体が動いて、匂宮を愛の坩堝に導き入れようとする、若い体の男はすぐそれに反応する、二回目の波が次第に大きくなって二人を包む。
 二人の愛の営みが暫く続いて、疲れから暫く休むときに、匂宮は中君に、母の明石中宮が昨夜、自分に注意をされた様子などを話して、
「私は、心には恋しく思いながら、此方へ通うことが途切れることがあるやもしれないが、そのことを私が姫を捨てたと思って、辛い情け無いと思わないでください。少しでも、姫によそよそしい気持ちで、今夜は、話したように、無理をして来たのです。私の愛情がどれだけのものかをと、疑って貴女が気持ちを乱すのが気の毒で、無理をして此方に来ました。今後はふらふらと忍び歩きはできないと思います。そこで私の屋敷の近くに、貴女のための屋敷を造り貴女がそこに移られるようにしましょう。
 と、真剣に中君に匂宮は話をした。中君は聞いていて、宇治通いに当然途切れがることを、新婚三日目の今から、私に話すのは、都で評判になっているという、匂宮の浮気のことを今から言い含めているのではないかと、心細い生活を何年も経験してきた中君は、その過去から色々と匂宮のことで悩むのであった。