小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

私の読む「源氏物語」ー51-若菜 下ー2

INDEX|3ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 と言うので三宮は几帳の下からそっと笛を差し出した。源氏は大笑いして笛を受け取った。それは立派な高麗笛で、源氏が少しばかり吹くと帰ろうとしていた夕霧達はその笛の音に気づいて立ち止まり、子供の持つ笛を取り上げて源氏の笛に合わせて吹く、それが誠に上手く唱和して美しい調べとなって聞こえるので、それに和して再び紫上・女三宮・,明石女御が演奏に参加するのを源氏が聞きながら、並ぷものが無い立派な合奏であるので、源氏は演奏しながら、このようにまで上手に育て上げた、自分の教授法の才能が並々でないと、自然に自負するのであった。
 夕霧は子供達とともに車に乗って帰途についた、月が澄んで見える夜であった。夕霧は帰途車の中で今夜の紫の演奏した箏の琴を思い出していた、普段と違った素晴らしい音色が耳から離れず紫に恋をしていた。自分の妻である雲井雁は祖母の故大宮が、かつて教えてくれていたのであるが雲井雁がまだ本当に興味を持って習おうとする前に亡くなられたので充分に修練する前に夕霧と結婚してしまった。それで夫夕霧と共に演奏することが恥ずかしいのか、全然楽器に触ろうとしない。専らおだやかに、おっとりした様子をして子供の世話を次々として風流な所がないのである。しかし、穏やかで、おっとりしているとは言うもののさすがに、時々は腹を立て、嫉妬をすることもあり、そこに愛敬があって可愛らしい人柄である。
 源氏は紫を三宮の前に置いて先に紫の対へ帰っていった。紫は残って三宮と夜明かしで話をして明け方に自分の部屋に帰った。源氏の横に入って二人は昼方まで寝ていた。源氏は四十才も半ば過ぎ紫もすでに三十才もそろそろ終わりに近づいている、添え寝するとしてももう体の交わりは殆ど出来ないと言っても良い年齢になっていた、が、源氏の男としての力はまだ不思議に残っていた、紫が横にはいると源氏は目を覚ましてゆっくりと紫の体を愛撫し始めた。紫もまだ女としての欲が残っているのでその源氏に上手く合わせていく、最近の源氏の床での行動は紫と愛撫を交わしながら言葉を交わすことである、
「三宮の七弦琴は上手なったが、お前はどのように聴いたかな」
 紫は源氏の愛撫を心地よく受けながら、
「そうですねえ、あちらで初めて聞きましたときは、少しこれではどうかと思っておりましたけれども。今は申し分のない音色にを出していますね。考えて見れば、それは貴方があのように熱心に教えて差し上げれば当然のことでしょう」
 と少し嫉妬心があるのか紫は源氏の男少し強く握った。gんじは体を少しびくっとしたが無言である。
「こんなに三宮に没頭して教え申しなさるような場合には」
 紫はぐっと迫っていった。
「そうだよ、手を取りながら教えたのだよ」
 まあ、よくもそんなことを私に言うと、紫はますます源氏の体を責め立てた。
「私は、頼りになるしっかりした音楽の師匠であるなあ」 
 源氏は紫を抱いたまま、
「教える事は色々あって世話がやけ時間のかかる事であるから、七絃琴は誰彼にも教えようとは思わないのであるが、朱雀院も帝も、三宮には教えてくれと言われるので、そういわれれば私としては七弦琴を教えないわけにはいかないのだよ」
 と言い紫の欲を少しでも抑えようとした、
「そうだ。昔のことになるがお前がまだ一人前になる頃に私は暇だったのであるが、それが嬉しくて私が楽しんでおなたには何も教えることをしなかった、その後私は忙しくなったので本当に貴方に教える時間が無くなってしまった」 それで、と言うようにして紫は源氏の手を取って自分の潤ったところに導いた。そのままで源氏は、
「しっかりと教えることもしなかったお前の箏の琴の音が、昨夜の合奏に見事に弾いたのには」 うっと、源氏が小さく声を上げた、紫が源氏の男のものを誘い込んだのである。
「おわかりですか私の気持ちを」
 紫は源氏に囁いた。若い頃と違って二人はそのまま力が漲ってくるのを待った。源氏はぐっと力を入れて、
「本当に嬉しかったよ、夕霧不思議そうにして驚いていた様子が見ていて嬉しかったよ」
 やがて二人は最高に達した。紫は若い頃源氏との交わりに歓喜の声を出すのが恥ずかしく必死に耐えていたのであるが、最近はかえって女房達に聞こえるように大きな声で交わりの喜びを遠慮することなく出していた、二人のますます親密な関係を他の源氏の婦人達に知らそうというのが彼女の考えであったのである。

 紫は最近はこのような音曲の方面も成熟し、孫達の扱いも至れり尽くせりで、他人から非難されるような不都合なことは認められず、何不足ない紫の行動であるから、その紫の様子を見て源氏は、
「紫のように何事も備わった者は長生きしない例もあるという事であるから」
 と、幸と命と、位と命と、美しさと命と、学と命とは、すべて両立しないと言う今時の世間の風評を思い縁起でもないと思うのであった。源氏は今まで色々な女と関係してきてそれぞれ特有の性質を持っていることを知っていたのであるが、紫のように何から何まで備わっていて性格も穏やかな女は、本当のところ例はあるまいと、思いこんでいた。 紫は早いもので今年は三十七才になる、この歳は女の一番の厄年である、源氏は彼の北山で見た童の頃からの紫を世話をしてきた年月の事などしみじみと思い出し、紫に、
「お前は厄年であるから当然、厄よけ、息災延命御祈祷などを例年よりも特別にして、今年は慎みなされよ。私は、公私の俗用の忙しさばかりあって、気のつかぬ事もあろうからね。お前もよく考えて、大きな仏事供養を催したいと思うならば、私の方から人に命じてきっと実現するようにしますよ。それにしても貴女の叔父亡き僧都(〔若紫巻〕の北山の僧都)が、この世におありなさらなくなってしまったのは、いかにも残念である。世間の一通りの御祈祷を営むとしても全く偉い人であったのに」
 さらに、
「私は幼い頃皇子として人とは違った、父桐壷帝の寵愛をうけ、内裏でそれは大切に育てられ、現在の世間からの声望や、我身の栄華の様子は、過去には例のないものであろう。そうであるにもかかわらず一方では悲しいことを多く経験したことも他人より遙かに多いと思っている。まず第一に、私を大事にと思ってくれる人、父桐壺帝・母桐壺更衣・母方の祖母・妻葵上・私を育ててくれた藤壷中宮・私が愛したタ顔などに、次々に先立たれ、一人この世に残り止って晩年になっても、藤壷中宮やタ顔の死など、いくら考えても悲しみがこみ上げてくることが多く、考えてもつまらないあってはならない恋をしたことを今思い返してみても、悔恨の気持ちが消えてしまわない、そのような方々に与えた不幸に変えて私はなんと長生きをしていることよ。