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“リップ～もお利口さんで、あいちゃんのことが怖いから、ちゃんと言うことを聞くよ。だからハクも言うことを聞くの。分かった？”
と言うとハクから、“分かった！！”という気持ちを感じた。
なので私はもっと誉めた。
褒めたらリップがアップになった…嬉しいけど迷惑だ…。
そんなことをされてもハクは怒らなかった。
私はその経験で、ハクは譲る精神があると分かった。
しっかりした柴犬だ！！
なのでリップを無視してハクをまた褒めた。
嬉しそうだった。
“今度、またことちゃんがハクのお家に行くからもう吠えたらダメ！！分かった？！約束は…出来る？！”
とハクの目をしっかり見て私はそう言った。
ハクが座り直して姿勢がよくなったように感じた。
これは行けるかも…と私は思った。
“今度。ことちゃんが来たら、ウ゛ーじゃなくて、ことちゃんのお目目を見るの！！お目目を見てこんにちは～よ。分かった？！”
と言うと、ハクはしっかりと私を見ている。
“そうそう。ことちゃんが来たら、あいちゃんとお話ししたよ～ってお目目を見て言うよ。ちゃんと出来てるかあいちゃんずっと見てるからねっ！！”
と最後は少し脅すように言った。
ハクは理解してくれたようだった。

そしてお母さんに、今あった一部始終を伝えたら、
『へーーーっ！！本当に出来たんだ～！！ほらみなさい、お母さんの言った通りでしょ！！』
と驚いてるくせに、偉そうに言いやがった。
うまく行くかは分からないし、こんなことが出来るなんていう話も聞いたことはないということをお母さんに言ったら、
『誰もやっていないからって、この先も出来ない保証はない。あなたが出来たのなら、今までたまたま誰もしなかっただけのことかもしれないし、ハクがもし変わったのなら、あなたがそういうことが出来ますって証明すればいいだけのことよ。ただそれだけのこと。そんなに深く考えることなんてないの。分かった？！』
と私がハクに何回も言っていた言葉がお母さんから私に届いた。
『じゃあ、分かった。そしたら今度お母さんがひよちゃんちに行ったら、先ずハクに話しかけてよ！！』
と私は言った。
『え～っ！！』
と変な声が聞こえた。
絶対お母さんの心からの拒否の声だ。
『イヤじゃない！！』
『イヤなんて言ってません。え～！！って言っただけです。』
と言い返してきた。
『まぁ～っ、面倒くせ～っ！！同じです～っ！！』
『いいえ違います～！！え～の何処にイヤがありますか～？！』
と言う始末だ。
バカじゃなかろうか…。
『じゃあ、ハクに話しかけるのね！！』
と言ってやったら、お母さんが黙った。
『お母さんがハクに話しかけてみたらって言ったんだから…。』
と私が言っている時に、お母さんが割り込んできて、
『分かった、分かった。話しかけます。家に入る前に、誰よりも一番に話しかけます。…何て言えばいいの？！』
と素直になった。
『“こんにちは～。あいちゃんと話したの～？あいちゃんと約束したの聞いてるよ。吠えたらダメって言われたんでしょ？！”って言って。もし吠えなかったら、褒めてあげて。“ハクお利口さ～ん。”って。』
と言うと、お母さんからため息が聞こえて、
『そんな言い方しなきゃダメ？！そんな言い方出来ない…。したことないからイヤだな～。』
と言い出した。
『それなら、お母さんの言い方で今のを言えばいいよ。兎に角、吠えなかったら褒めて。そして、“あいちゃんって怖いよね。ことちゃんも怖いの。”って共感してあげて。それは喜ぶと思う。』
と言うと、
『それだけは出来る。あなたって本当に怖いから。それは出来る！！』
と自信満々に言われた。
何とも言い返しようがなかった。

そしてひよちゃんの家に次の週、また行くことになった。
行きながらまたお母さんと話していた。
『今からハクの所に行くよ～。』
とお母さんは調子が良さそうだ。
一応、ハクに、“今日、ことちゃんが行くから、吠えたらダメよ～。ちゃんと見てるからね。”とは伝えていた。
お母さんにもそのことを伝えた。
『今までこんなにハクに会うのを楽しみにしたことがない。…でも吠えられたらすぐにお母さんは逃げるよ～。一応、見ててよ。』
と無茶を言いながらもハクに会うのを楽しみにしているのが伝わった。

そしてひよちゃんの家に着くからと電話を切った。

それからすぐにお母さんから電話がかかった。
『どうなったと思う？！』
とお母さんはテンション高めに聞いてきた。
何かいいことがあったようだ。
『お母さんが駐車場に車入れてるのに、ハクが吠えなかったの！！それで約束通り、一番にハクに会いに行ったの。そしたら吠えなくて、お母さんの目をしっかり見つめてたの～！！信じられなくてね～。全く目を逸らさないでいるの。不気味だった目じゃなくて、しっかり目を開いてね、お母さんの方を見てたの。ハクに、“あいちゃんと話したの？”って聞いたら、お座りしてね～、お母さんのことずっと見てるの～！！本当に信じられなくて…、もうビックリよ～。それで、“あいちゃん怖いよね～。ことちゃんも怖いの～。”って言ったら、何か同意してる感じがした。』
と感動しながらお母さんは言った。
最後の部分はお母さんの思い込みな気がしたけど…。
『良かったね。でも、こんなこと出来ていいのかなぁ～。現実に反してる気がする。もっと現実を見なきゃ！！』
と私は言った。
『何言ってるの！！今こうなったことが現実でしょ！！世の中の人たちの方が今の時代、現実を見なくなってるのよ！！』
と急にお母さんは正論？！なのかそう言ってきた。
私は肯いて、
『それで、ハクは他に何て言ってる？！』
と聞いた。
『えっ？！だからあいちゃんは怖いって。言うことを聞かないとあなたが怖いんじゃない？！だから吠えなかったのかも。』
と言う。
『触った？！』
『…触ってない。汚いから…触りたくない…。でもちゃんとひよちゃんに、ハクが洗って欲しいって言ってるって伝えたよ。ひよちゃんも洗ってあげないと…とは思ってるみたい。』
と言った。
他に話はないのかと思った私は、
『それだけ？！もっと他にないの？！上のこととか…。』
と聞いた。
『あっ、ハクに神様知ってるの？って聞いたら目が少し変わった。目が大きくなったっていうか…それを見て知ってるんだって思った。兎に角、目を逸らさないから、今までの犬と違う犬なんじゃないかって思うくらい別人になってる。ハクにちゃんとあいちゃんと神様にお礼を言いなさいよ～とは言ったよ。』
『あっ、上が肯きながら、“良かったですね。一匹犬を救いましたね。”って言ってるよ。』
『へ～、ちゃんと届いてるんだね。』
『ひよちゃんは何も言わないの？！』
『あっ、何がなんだか分からなくて、ハクが全く吠えないことに驚いてる。困ってお母さんの方を見てる。ちゃんと後で説明するから大丈夫。』
とお母さんが言ったので私はホッとした。
でもひよちゃんの姿を想像するとウケる…。
『他にハクは何か言ってなかった？！』
『ちょっと待って、今もう家の中だから。窓開けてハクに声をかけてみる。…わぁ～、ハクって声をかける前に、お母さんの方しっかり見てる。ねっ、全く吠えてないでしょ？！聞こえないでしょ？！』
とお母さんは言う。