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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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たかが一匹…されど一匹…。

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確かに受話器には聞こえない。
『お利口さんにお座りしてお母さんの方を見てるの。今あなたにも見えてる?!もしハクが見えるなら何か話しかけてよ。』
と無茶ぶりをして来た。
出来るか分からないのに…と思っていたら、お座りしているハクが見えた。
『ハク、お座りしてるね。』
『そうそう。』
私は心の声で、
“ことちゃんにこんにちはって言った?これからは吠えずにお利口さんにしますってことちゃんに言った?!”
とそう言ってみた。
お母さんからは何も言ってこない。
やっぱり同じ時間で進行形は無理だと思った。
私はお母さんに、
『何か変わった?!』
と聞いた。
お母さんから変な緊張感が伝わった。
『あなた…今…ハクに…何て言ったの?!』
とおかしな言い方をした。
私は首を傾げ、
『いや~別に、普通に、“ことちゃんにこんにちはって言った?これからは吠えずにお利口さんにしますってことちゃんに言った?!”って聞いただけ。』
と言った。
『ハクの態度が変わったの。少しだけど目を見開くっていうか…姿勢が良くなったっていうか…。兎に角空気が変わった気がしたの。あなたの声が聞こえたんだと思う。…ハク~、あいちゃんの声聞こえた~?!』
とお母さんはハクに声をかけたようだ。
私は反応を待った。
『…やっぱりあなたの声が聞こえたのよ!!“聞こえた。”っていう目をしたから。』
とお母さんは言った。
私は実際にそこにいたわけじゃないから全ての状況を見れたわけじゃない。
でもお母さんもハクも良い方向に進んだのなら良かったんだと思う。
誰がとか何がとかじゃなくて、ただただ良い方向に向かったのなら良かったと思う。

それから数日してハクは洗ってもらったらしい。
それもよかった。

それから二年ほどが経つけど、今のところお母さんはあれ以来ハクに吠えられてはいないようだった。
よかったよかった。