慟哭の箱 2
悲鳴
今朝も憂鬱な雨は続いている。職場に行くと、沢木が半泣きになりながら寄ってきた。
「清瀬さ~ん!」
聞けばこわもてな先輩と、バイク窃盗団の捜査中らしいが、ストレスがたまっているとのこと。
「俺の愚痴を聞いてくださいよ!」
「そうだなあ。うちくるか?飲もう」
「いいんですか?あ、そうか。あの子、いまは葬儀で実家に」
「うん」
旭は今朝から捜査員とともに、通夜と葬儀のため実家に戻っていった。清瀬は不安そうな彼を見送り、通常勤務に戻っている。旭が戻るまでは、ここで沢木を助けることにする。
「あの子、大丈夫ですか」
「どうかな・・・まだ自分の状況に心が追いついていないように思う」
「そうですか・・・」
旭はまだなにも思い出せないという。しかしそれもいつまでも通用しない。目撃者かもしれない以上、当局が締め上げようとするのも時間の問題だ。センセーショナルに報じられる事件に世間は注目し、街の者は戦々恐々とした日々を送っている。犯人逮捕を急がなくては。
「ん、」
いがらっぽい喉。数度咳き込むと、沢木が心配そうにこちらを向いた。
「変な咳してますよ。風邪ですか?」
「いや、なんともない」
机で資料をめくりながら、清瀬は喉を押さえる。まだ少し違和感が残っている。
昨夜、何者かに襲撃されたのだ。自宅で。