お題に挑戦
毒入りスープすら飲ませられなかった【即】
お題「部屋とYシャツと不動産」
制限時間:15分
**********
同棲解消。
二人で部屋を借りた時は、書面上では夫婦になって、なんだかむず痒い思いがした。
いつかは本当の夫婦になれるのかな、なんて、少しだけわくわくした。
結局、孤蝶の夢にしか過ぎなかったけど。
少しだけ夢見たあの瞬間。もう私達はそれぞれの道を行く。
私はいつの間にか彼のお母さんになっていた。彼と同じくらい仕事で疲れていたけど、ご飯を作って、掃除をして、洗濯物を取り込んで。大好きな彼のためならば、と思って頑張って来たけど、彼は、私よりも若くて可愛い女の子を選んだ。家政婦みたいな私なんかよりも、若くて可愛い女の子の方が良いものね。うん。分かる。普通に分かる。
段ボール箱に私の物を詰め込みながら、室内物干しに一枚だけかかっている彼のワイシャツが目に入った。あなたのために、一生懸命アイロンをかけてあげていたけど、一体なんだったんだろうな。私は彼の、何のためにアイロンをかけていたんだろう。
彼の荷物を段ボールにまとめるのは私。
なんたって、彼の家政婦ですもの。
私は、ガムテープで封された彼の荷物が入った段ボールを開けて、しわになるであろうことも気にせずに彼の真っ白なワイシャツをぐじゃぐじゃにして投げつけるかのようにして詰め込んだ。