お題に挑戦
土砂崩れが起きたり、疫病が流行ったり、作物が育たなくなったり、飢饉が発生し、人々は厳しい暮らしを強いられた。これはきこりののろいなのではないか、と恐れた村人たちは、きこりの小屋があったところに塚を建て祀り、供養を行った。きこりだけでなく、その時に死んだ動物たちの供養も行った。
すると村に降りかかっていた災厄はぴったり収まり、平和が訪れた。
どうやら鬼のように醜い姿をしていたきこりは本当の鬼となって、村に祟りをもたらしていたということが分かった村人たちは、きこりの命日になると、塚まで供物を持って行って、木彫りの動物の像を備えたという。
そうして、その村では、木材による工芸品を作ることが盛んになり、その技術は先祖代々受け継がれるようになったとか、ならないとか。
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あれから十数年が経った。
僕は、地元の博物館の学芸員となり、地元の文化や歴史について調べている。
そんな時に、小さなころ、祖父と遊びに行った公園にひっそりと佇んでいたあの石碑についての伝承を知ることが出来た。随分とハードで重い伝承だった。昔話には子供に聞かせるには可哀相すぎる話が時折あるが、あの石碑もその類の伝承を持っていた。
ほとんどの人が知ることのない可哀相なきこりの伝承。
いつかこの地元の伝承をまとめ上げて、町おこしできるくらいになったら、かわいそうなきこりのために、あそこに解説の看板でも作ってあげたいな、と思った。
木材と歴史の町、なんてキャッチフレーズで町おこし、良いと思うんだけどな。
ちょっとした野望を心に、今日も仕事を頑張ろう。