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天国からの脱出

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次はアパートだった。どの扉も開かない。おかしい今までプレイしたゲームはすっとドアが開いて中へ入れたのにと思いながら、次々とドアを開けようとした。
「開いた」やっと中へ入れる場所があった。オレはためらわずに中へ入った。まず台所へ入って、冷蔵庫の前に立ち【ひからびた野菜・腐った肉・ヨーグルト】からヨーグルトを手に入れた。

次に寝室に入ると、ぐっすり寝ている男が居る。まだ若い。夜勤のアルバイトから帰ったばかりなのであろうか。モンスター遭遇場面にはならず、オレはタンスを開けた。めぼしいものは無かった。押入を開けると【汚れたパンツ・臭い靴下・ヘルメット】からヘルメットを選び、すぐ《装備》した。ピロロンと頭に音が響いて防御力がだいぶ上がった。

また台所に戻り、テーブルの上に小銭入れを見つけた。【お金をとる・何もしない・お金を入れる】から【お金をとる】を選んだ。残金が1980円から3150に増えている。

部屋を出て残りのドアを調べたが開かなかった。また大通りの出たオレは市が活動を開始しショップが開く時間になっているのを知った。

冒険のための武器を買うために、金物屋に入ったオレはショーケースの刃物を穴のあくほど見ていたが、なかなか決断が出来なかった。長い間そうしていたので不審に思ったのだろう店員が、じっとこちらを見ている視線に気づいた。オレはジーパンにTシャツ、工事現場ヘルメット姿だった。恥ずかしがりやのオレはポッと顔を赤らめ、下を向いたままその場所を離れる。なおも店員の視線はオレを捉えて離さない。オレはその視線に押されるように店を出た。

文房具屋に入ったオレはカッターナイフを買った。すぐ装備し、攻撃力が少し上がった。

運動具店に入って、剣道の胴を防具に欲しいと思ったが、高価なので諦めることにする。
なかなか思うような防具が無い。オレは肩を落として店を出た。

また当面の目的である――拾ったアイテムを売る――もしなくてはならない。オレは手当たりしだい他人の家に入り、いや入れなかったので、家の外に置いてあったビールの空き瓶を酒屋に持っていった。70円しか残金が増えなかった。

今度のゲームはセコイ。そう思いながらもオレは諦めず市を徘徊し続けた。

行き詰まったオレは、誰か重要な人物に接触していないのでは無いかと思いつき、自分の前に現れた人に次々に挨拶をした。
「こんにちは」 一瞬立ち止まり、首をかしげて通り過ぎた人。
「こんにちは」 無視して通り過ぎた人。
「こんにちは」 曖昧な笑顔を浮かべながら通り過ぎた人。
「こんにちは」 嫌悪感を表して通り過ぎた人。
「こんにちは」 「こんにちは」と言いながら頭が混乱したまま通り過ぎた人。
「こんにちは」 「どなたでしたでしょうか?」と聞き返され、「さあ、どなたでしょう」と言ったら睨まれた。

なかなか思うようには進まない。このゲームにはバグがあるのではないだろうか。オレは歩きながら打開策を模索した。

作品名:天国からの脱出 作家名:伊達梁川