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天国からの脱出

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それでもここを出てやる!と思った



やはり痩せるしかないのだろうか。オレは自分のぽっこり出た腹を見ながらため息をついた。いつかテレビで見た、脱走が得意な犬のことを思い出した。金網をよじ登るのと、柵の下の地面を掘って外に出るというものだった。

丸太の周りはコンクリートで覆われている。これをコツコツと叩いて割るという方法を一応候補にしておこう。そのあとはスコップで穴を掘る。ここに園芸用の道具は無かったような気がする。利用するとすれば台所にあるものだ。そうだ、フライパンを使えば土は掘れるかもしれない。少しだけ光明が見えてきた気がする。

ああ、でもコンクリートを割るのは工事現場で使うドリルがないと無理だろう。あっさりと光明は消えてしまった。

とりあえず、途中でセーブしてあるゲームをクリアした段階で、ゲームを止めることにした。YouTubeで音楽を聴きながら意識して脱出の手段を考える時間を持った。豊富な食糧から、自分で調理した料理でビールを飲みながらだが。ゲームをやめただけでこんなにも時間が使えるものだと、今更ながら思った。

ここに閉じ込められる前の低賃金の労働に戻ることを思えば、この今の生活は天国だという思いはいつも頭にあった。発想を転換しなければずるずるとここに居着いてしまう。そうだ、病気になったらどうするんだ。電話も通じない、外部と連絡できないこの異常な環境。ここの住人はそれほど健康に自信があったのだろうか。

この状況はオレの知らない事情がある。想像するしかないが、時間は充分にある筈だ。もし電気がストップしたら、ガスもボンベだろうからいずれ使えなくなる。これから秋が過ぎ、冬が来たら低いながらも山だ、かなり温度も下がるはずだ。そう自分を追い詰めて、何としても出てやろうと誓いをあらたにした。

檻のような外の丸太を壊して脱出するのは無理ということが分かった。よじ登っても屋根があるので行き止まり。穴を掘るという件については、部屋の床を剥がしてそこから掘るという途方もない労力の要る方法は試してないが無理といっていいだろう。

残る望みはは上だけだ。天井裏から屋根の上に出る。方法は未定だが、天井裏を探索しようと思った。思ってはみたが、お酒を飲んでお腹もいっぱいになっている。PCには立派な外部スピーカーつながっていて、近隣の迷惑を考えないで大きな音量に出来るのがいい。最近はよく聴いている。その音楽のせいもあって思考力が次第に鈍り、睡眠に向かって落ちて行く感じがした。

作品名:天国からの脱出 作家名:伊達梁川