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天国からの脱出

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現金が無い



何と間抜けなことだったろう。ネットでゲームをしているのだから、ネット通販で電動ノコギリを注文すれば良いのではないか。オレは自分自身にに拍手をした。さっそく通販サイトにつなげ、カートに入れたが、支払い方法で挫折してしまった。二人ともアルバイト生活でクレジットカードを持っていなかった。支払うべき現金も、二人分を合わせても足りなかった。また、それ以前にここの住所がわからない。

住所、住所とつぶやきながら考えた。宅配の梱包にあっただろうか。オレは部屋の隅にある段ボールを見たが、品名しか書いてない。ということは宅配業者でない誰かに送って貰うようになっているのかも知れない。この建物の主のやっていることはどこかおかしい。

空腹を感じたオレはテレビの前で、どら焼きを食べている明菜に近づいていった。
「ふーん どら焼きなんてあったんだ」
「ん、ああ冷凍をチンしただけどね、食べる?」
明菜はテレビの画面から目をはなさずに、どら焼きの入った大きな皿をさしだした。
「いくつチンしたんだ」
「4個だっけかな、5個かもしれない」
「そりゃあ太るわけだ」
「だって、他にすることないじゃない」
「やる気になればあるだろうが」と、言ってはみたが時間の無駄だと思い、オレはどら焼きを1個持ってPCの置いてある部屋に戻ることにした。

何をすればいいのだろう。PCを立ち上げてからオレは考え込んでしまった。せっかく色々な人と知り合う環境にあったのに、ゲームばかりしてSNSでの活動はしていなかった。友好的な友人がいれば、ノコギリを持ってここに来て貰うことも出来た筈なのに。ただし、この場所を大雑把にしか説明できないという難点もあるのだが。

でもやってみないことには分からない。これからでも遅くないのではないかという思いから、ネットでSNSを検索してみた。驚くほどの数があったが、いざ自分が加入して友達ができるようなSNSは無い。思えばこれはという趣味が無かった。唯一のゲームにしても、他人と一緒のゲームは避けて、一人で出来るものだけしかやってない。ま、やろうとしてもここでは会員登録のための情報が無い。結果、無料のゲームしかやっていなかった。

そうだPCのメールは使っていない。それを使えばどこかに連絡できるかもしれない。オレは雲間から太陽が出てきたような気持ちでメールソフトを立ち上げてみたが登録されていないし、使った形跡も無い。新しく登録しようにも入力すべき情報のデータが無かった。

オレはいつしかゲームを始めていた事に気づく。ああ、何とかしなくちゃと思いながらも行動が伴わない。

作品名:天国からの脱出 作家名:伊達梁川