「夕美」 第二話
「ただいま!お母さん治ったの?・・・あれ、違うね。キミがお手伝いさんか?」
「はい、お帰りなさいませ。夕美と言います・・・あっ!」
そうスーパーのレジで声を掛けられたその高校生が息子隆一郎だった。
「キミはあの時の・・・そうかお手伝いさんに来てくれた子か」
「はい・・・お返事しなくて、済みませんでした」
「いいよ、ナンパされたって思うのは当たり前だからね。それより夕飯うまく作れるの?同じぐらいの歳だろうまだ?」
「高校一年です。料理はずっと母の手伝いをやってきたので大丈夫です。お気に召されるか解りませんが」
「俺は二年だ。一つ上だな。宜しくな。出来たら呼んでくれ。部屋でゲームしているから」
「はい、解りました」
夕美にそう話しかけて隆一郎は階段を上がって二階の自分の部屋に入っていった。
前に来ていた家政婦がやめてひと月ぐらい経っていたので、その間は簡単な配達業者がもってくる夕飯セットで隆一郎と由美子は食事をしていた。
父親の俊之は必ずと言っていいほど夕飯は外食で済ませていた。仕事が忙しいと二人とも考えていたのだ。
この日、久しぶりに出来たてのおかずとご飯を囲んだ隆一郎は声も出さずに黙々と食べ、お代わりをするほど食欲を見せた。
母親の由美子はそれを見ていて笑ったので、気にしたのか話しかけた。
「母さん、何がおかしいんだよ?」
「ごめんなさいね。あなたが一生懸命に食べる姿を見て微笑ましかったのよ」
「ふ~ん、まあ、久しぶりだったからな。それに夕美の料理の腕は相当だよ。みんなすごくおいしいから」
褒められて夕美は頭を下げた。